可愛いが好きで何が悪い56(終)

1話戻る→   目次へ→

 再度、心配掛けて悪かったと謝れば、相手も疲れさせちゃってゴメンねと返してくる。初めてだったのに加減も出来ずに無理させたよねと、しょんぼり顔で小さな溜め息まで吐かれてしまって、どうやら結構落ち込んでいるらしい。
「いやいやいや。それ、大半は俺の自業自得っていうか、お前だけ先イカせたのも、2回戦よろしくって言ったのも、バイブに興味示したのも俺で、最中にあれこれお前煽った自覚、かなりあるぞ」
「その自覚はありがたいけど、やっぱ甘えすぎたよな、って思って」
「そんなの俺も一緒っていうか、俺がお前相手に好き勝手振る舞えるのは、お前に甘えてるからだって教えたろ。お前が俺の無茶振りに応えてんだから、お前だって俺がいいよって許したことには素直に甘えとけばいいんだって」
「でも男の体で抱かれる負担とか、甘く見てたっていうか、むしろ男のが体力有るだろうって思ってたとことかあったし」
 抱き潰すような無茶なんてしたことがなくて、本当に肝が冷えた。らしい。
 そういやさっきも、抱き潰して救急車騒ぎを心配したようなことを呟いていたけど、こちらとしては抱き潰されたって認識は欠片もないんだけども。どちらかと言うと、ちょっと休憩のつもりが、思いの外深く寝入ってしまった。という認識だ。
「抱かれる側やる負担はそりゃあるし、初めてであんなに感じまくる想定はなかったけど、体力云々に関しては多分間違ってないだろ。てか抱き潰されたとか思ってないんだけど」
「でもほぼほぼ気絶って感じだったよ?」
「いやそれ、説明とか後始末とか諸々全部、後回し&お前に押し付けでいっか、みたいな甘えっていうか。そもそも、お前に手でイカサレたときだって、俺、イッた直後にお前に何も言わないまま目ぇ閉じたけど、お前、ただ寝落ちただけって思ってただろ。俺としてはあの時と同じ感覚で目ぇ閉じた。ら、本当にそのまま深く寝入っただけなんだって」
「逆に俺は、あのときはなんだかんだすぐ起きたみたいだったから、体中拭いても声かけても起きないの、ヤバいかもって思ったよ。お前と一緒に生活してた過去なかったら、慌てて救急車呼んでたかもレベルで焦った。呼吸正常だし、顔色悪くないし、苦しそうでもなかったどころかちょっと満足げで可愛かったから、大丈夫な方に賭けただけで」
「あー……あのときは目ぇ閉じたけど、寝落ちるまでは行ってなかったからな」
 今更、あのときは寝たフリで相手に後始末をさせた、なんてカミングアウトをする羽目になるとは。でも相手はその件に今更何かを言う気はないらしい。
「じゃあ本当に、今回はちょっと目を閉じたらそのまま寝ちゃっただけ、って感じなの?」
「いや、眠るつもりで目ぇ閉じたから、厳密にはあの時と同じ感覚、ではないか。でもあの時お前が、俺が寝落ちたって思って後始末してくれたの覚えてたから、このまま眠っても平気だろって思ったのは確か。で、お前がそんなに心配するとは考えなかったから、そこは、本当に、ごめん」
「本当に、抱き潰すほどの無理させたわけじゃないなら、いいよ。てかどっか痛いとことかはないの? 俺、本当に、無理させてない?」
「筋肉痛来てるっぽい痛みならある。けどたいした痛みじゃないな。あと痛くないけど、違和感はそれなりにある。主に尻の穴の入り口と、腹の奥」
「奥……」
「前立腺は意外となんともないというか、あんなに気持ちよくなったのに、そこまで影響残ってる感じしないな」
 というか、触れられていない今は、どこが気持ちよかったのかはっきりわかる感じじゃない。でも奥の方は確実に、突かれて気持ちが良かったのはここなんだなとわかってしまうレベルで、そこに違和感が残っている。
「え、奥の違和感て、奥で気持ちよくなった名残的なナニカなの?」
「そう。何もされてないのに、なんかジクジクした感じが残ってるっていうか、お前に突かれてそこが気持ちよくなった事実を思い出すというか」
 さっき一度、意識して赤面済みだからか、声に出して相手に説明しているのにそこまでの羞恥は込み上げてこなかった。なので平然と説明して見せれば、相手は呆気にとられた顔をしている。
「なにそれ、……エロすぎ」
「なっ」
 一瞬ためらった後、けれど言わずにはいられなかったらしく、溢れてきた言葉にも思わず同意を示してしまう。ついでに言えば、事後にそんな報告をされたらたまらないだろう気持ちもわかる。わかってたから正直に報告したとも言う。
「って、そのニヤケ顔なに? 俺、もしかしてからかわれてる??」
「からかってはいない。そういう報告されたら嬉しいかなって思って言ったら、お前がまんまと、俺をエロいって言ったから面白かっただけ」
「もしかして、エロいって褒め言葉の分類?」
「それは使い方によるだろ。少なくとも、今の『エロすぎ』に侮蔑とか嘲笑の意図は感じなかった。どころか、昨日俺がそこで気持ちよくなったの思い出して興奮した、的な意味とかもありそうだった」
「まぁそれを否定はしないけど。てか、昨日の最後、お前を抱く俺がエロいのがいい、みたいなこと言ってたあれは? 悪い意味ではなさそうだったけど、一人で納得して笑ってたから、けっこう気にはなってるんだよね。今も」
「あー、うん。それはちゃんと説明しないとなって、思ってた」
 言いながら、手を伸ばして相手の耳横からそっと髪を梳いていく。
「んっ」
 相手は特に抵抗することなく素直に髪を梳かれながら、気持ちよさそうに目を細めている。
「髪、結構伸びたよな」
「そうだね」
「俺が可愛いの好きってわかってるから、女装してた時、お前、この髪ゆるふわに纏めてたろ」
「うん。好みだし可愛いって言ってくれたから、似合ってた、ってことだよね?」
 髪の毛洗わないほうが良かったって話? と聞かれて首をふる。むしろ全く逆の話だ。
「可愛い服着てなくて、しっかり男の胸板見せられてて、雄の獰猛な気配が隠しきれてなくて、まったく可愛い要素がないお前のこと、すげぇ色っぽく見えたのが、新鮮だったんだよ。しっとりと濡れた髪が顔の横に雑に垂れてるのが、特にたまらなくエロかった。中身一緒なんだから、男のお前も女装のお前もどっちにしろ可愛い。みたいに思う気持ちもあるけど、男のお前の外見に興奮するってのも、可愛さじゃなくて色気に反応してるのも初めてで、安心したっていうか、嬉しかっただけ」
「んー、わかるような、わからないような……」
「お前はお前だから、お前の中の可愛いとことか、俺を求めるいじらしい努力に反応してるとこが大きくて、見た目って意味では女装のほうが性的に興奮する感じだったけど、でも、素のままのお前の見た目にだってちゃんと性的に興奮できるんだな、という新たな認知を得た」
「それが嬉しかったの? 笑っちゃうほど?」
「そう。素のままのお前に抱かれるのも、悪くなった。まぁ、女装して、抱いてるのにアンアン喘いでくれるお前もかなり良かったから、結局、どっちのお前だっていいって話でしかないけど」
「それを俺が喜ぶのはわかるんだけど、お前が笑うほど嬉しいのはやっぱイマイチわかんないかも」
「お前が俺のために女装頑張ってんの、似合うし可愛いしいじらしいしで、胸に来るものが有るし、実際それに絆されてるとこがないわけじゃないし、お前の狙い通りになってるんだから気にするとこじゃないかもしれないけど。でも、俺が可愛いのが好きなせいでって気持ちもないわけじゃないから。素のままのお前にだって、性的にもちゃんと興奮できるって判明したのは、俺的にも嬉しいことなんだよ」
 今後も女装を続けてくれるなら、それはそれで歓迎してしまいそうだけど。と続ければ、女装は多分続けると思うけど、可愛いのが好きで申し訳ないとか思わないで欲しいと返された。
「可愛いのが好きとか、それをあまり人に知られたくないって思ってるとことか、夢の国通い優先して彼女作らないとことか、そういうとこに思いっきり付け込んだ自覚あるから。それに、俺の女装に見とれてくれたり、好みだとか可愛いとか言われたら内心ガッツポーズ決めるくらい喜んでるから」
 申し訳ないなんて思うのらしくないっていうか、可愛いが好きで何が悪い、って開き直ってる方がきっとお前らしいよと言われて、これからももっともっと女装の腕上げて可愛くなる予定の俺を、もっともっと好きになってくれたらいいと思うよと自信満々に笑って見せる。
 よく理解されていると思うし、もっと好きになってと自信満々に言いきれるのはいい傾向だよなとも思う。それは、こちらの好意や愛情を、しっかり受け止めた結果の自信なのだろうから。
 だから、確かにそうだなと言って笑い返した。

<終>

後半のダラダラエッチでめちゃくちゃ文字数嵩みましたが、最後までお付き合い本当にどうもありがとうございました。
1ヶ月ほどお休みして、次のお話の更新は10月18日(水)からを予定しています。

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です