可愛いが好きで何が悪い49

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 他者の手で絶頂に導かれるにしても、外からの刺激で吐き出すのと、内側からの刺激で押し出されるのとでは全然違う。体の中に溜まっていたキモチイイをやっと吐き出せたのに、体の中はまだじんわりとキモチイイが残っている気がする。いやでもこれは、一緒にイクことはしなかったらしい相手の硬いままのペニスが、未だそこに存在しているせいかも知れない。
 動きは止まっているし、お尻の中のイイトコロにはあまり当たらないようにしてくれているっぽいけど。でも、敏感になった腸内は、イイトコロにピンポイントで当たって無くても、動いて無くても、そこに有るだけでキモチイイを拾ってしまうようだ。
 それに、ペニスに触れられないまま出した、というのも原因の一つかもしれない。どうやら、射精欲が満たされてスッキリ、という賢者タイムは来ないらしい。
「少しは落ち着いた?」
 ぼんやりと見上げていた相手が、こちらの呼吸がある程度整うのを待ってそう声をかけてくる。ちなみに、可愛かったとか、怖かったのにありがとうとか、最高とか、大好きとか、手放しの称賛っぽい言葉は果てた直後に大量にもらっていたが、それらにまともに反応できないくらいには衝撃で呆けていたから、相手はすぐに口を閉じて落ち着くのをずっと待ってくれていた。
 こちらが果てて脱力した後、視界に映る相手はずっとニコニコと嬉しそうで、満足げだ。口を閉じる前も、閉じた後も。嬉しくてたまらない気持ちが、溢れまくってダダ漏れだった。
 ただ、お腹の中に抱える相手のペニスが萎えていないのははっきりと感じているし、相手がまとう気配も若干ギラついた雄臭さが残っているしで、実のところ、全く安心感はない。
 無事に相手が望む形で果てれてよかった、とか。嬉しそうで良かった、とか。そういう満足感の中で目を閉じて終えたい欲求は、間違いなく、叶えられることはないとわかっている。
 すでに相当待って貰っていることもわかってるし、こちらを刺激しないよう動かずにいるのは辛いだろうことも想像はできる。けど。
「ごめん、も、ちょっと、待って」
 前立腺を刺激されてペニスに触れないまま射精する、いわゆるトコロテンを経験したわけだけれど、病みつきになる気持ちよさだったかと言われるとやっぱり微妙だった。目の前がチカチカと爆ぜるような衝撃も、頭が真っ白になるような浮遊感も、間違いなく快感ではあったのだけど。無理やり押し出されていくような、何かが迫り上がってくるあの恐怖を忘れられない。
 あれをもう一度受け入れるには、覚悟を決めるための時間がもう少し欲しい。今度は怖いなんて口走ってなだめられるような、情けない事態をなるべく避けたい気持ちがある。
「もしかして、キモチイイより、怖いほうが勝っちゃった?」
 初めてのアナルセックスでそのままトコロテンしたことに、ただただ疲れているだけだと思っていただろう相手も、どうやらそうではないと気づいてしまったらしい。ニコニコと嬉しげだった顔が曇って、不安そうな顔になってしまった。
 そんな顔をさせたいわけじゃないし、気持ちよく果てたのだって事実なんだけど。
「いや……」
「本当に? むり、してない?」
 あんなに怖いって言ってたのに、止めずに続けて無理させたならごめん。
 そう言ってしょぼくれて肩を落としてしまうから、少しだけ腹が立ってしまった。
 受け入れたのはこちらで、止めろなんて言わなかったのに。謝られてしまったら、そんな姿を見せたことを余計に情けなく感じてしまう。相手は怖いと漏らすこちらを、さんざん宥めて大丈夫だの可愛いだのと繰り返して、最終的にはちゃんと絶頂にまで連れて行ったのだから、むしろその手腕を誇っていて欲しい。
「怖いなんて言うつもり、なかったんだよ。だからそれ、あんま蒸し返すなよ」
 情けないし恥ずかしいだろと言ったら、少し驚かれた後で苦笑されてしまう。
「そういや、途中で泣きごという想定がないとか、めちゃくちゃ男前なこと、言ってたね」
「そう。だからあれはできれば忘れてくれ」
「え、無理」
 即答された後、めちゃくちゃ可愛かったから絶対に忘れないとまで言われてしまった。
「お前の目、やっぱなんかオカシクないか?」
「えー、それ、ここで蒸し返す?」
「いやまぁ、抱いてる途中で怖い怖い言われても、それ見て可愛いって思えるのとか、萎えて中断しないのは、ある意味尊敬するけど」
「あー……もし立場逆だったら、そうなっちゃうのか。てことは、」
「お前が抱く側でやっぱ正解だよな」
 相手が何を言いたいか察してしまったので、割り込んで言われる前に言ってやる。
「だねぇ」
 同意されて、俺はかけらも萎えなかったよというから、それはわかってると返した。だって、今まさにそれをこの身で感じ続けている。
「てか結構平然と喋ってるけど、お前、イッてないのに辛くないの?」
「全く動いてないし、お前が変に煽ってこなきゃ、まぁ、余裕」
「そうなのか」
「むしろお前の方こそ、大丈夫なの? 抜けとか言わないし、俺がイッてないのわかってて、もうちょっと待ってって言うってことは、待ってたら続きさせてくれるって思っていいんだよね?」
「抜けって言ってよかったのか……」
「1回ずつイッて、ここで終わりにしたい?」
 手ぇ貸してくれる? と続いたから、終わりにしたいと言えば、彼の硬いままのペニスが本当にお腹の中から抜け出ていくんだろう。
 緩く首を振って否定して、覚悟決めるからもうちょっとだけ待ってとお願いする。
「覚悟、って?」
「次は、トコロテン怖い、とか、言わない覚悟」
 割と大真面目にそう考えているんだけど、相手は小さく吹き出している。まぁ、想定内の反応ではある。
「俺はまた、気持ちよくなるの怖いってなっても、全然構わないんだけど」
「俺が構う」
「だよね。じゃあ、次は怖くないエッチしようよ」
「なんだそれ」
「お尻気持ちよくなってたから、前立腺突いてイカせちゃったけど、初めてでトコロテンとかやっぱ難易度高かったよねって思って。お尻弄られながらでも、おちんちん扱いたら気持ちよくイケそうって、言ってたでしょ。イッちゃったら挿入つらくなるからって、ずっと我慢させちゃってたけどさ」
 そういや尻穴を解されている初期に、イッてしまうとその後が辛いからと言われて、勃起ペニスを放置されたんだったと思い出す。

続きました→

 
 
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