可愛いが好きで何が悪い23

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 相手は隠し事も秘密も苦手で、というよりは自身のことはあれこれ開けっ広げで、恋人としてお付き合いを開始したことはあっという間に学科内に広がってしまった。
 まぁ想定の範囲内ではある。無駄だと思っていたのも大きいが、自分だって、交際するに当たって特に口止めをしなかった。
 一応、こちらが隠しておきたい情報、特に可愛いもの好きで夢の国に高頻度で通っていることなどまでペラペラと話してはいないらしいが、どうしたってそれらを隠して交際に至る過程を説明するのは難しい。
 なので、相手が話を濁せば濁すほど、こちらに探りを入れにくる。正直鬱陶しい部分もあるが、そんな野次馬たちから齎される相手の情報などもないわけではなく、適当にあしらいつつもそれなりにこの状況を楽しんでも居た。
 自分の何がそんなに良いのか、彼本人の口からではなく、人伝いに聞くのはなんともこそばゆいのに、でも、直接面と向かって言われるよりもなんだかスルッと飲み込める気がする。彼がこちらに王子なんてものを全く求めていないことを改めて知って安心したし、彼にとって自分は、しんどい時に何度も助けの手を差し出してくれたヒーローで、幸せの象徴で、だからもう二度と側から離れたくないと思っていることも知った。
 比較的、彼との交際に好意的な反応が多かった、というのものんきに楽しんでいられる理由の一つかもしれない。
 彼と親しい友人たちは本命が誰かを知っていたし、そんな彼らのお伺いには変な期待を持たせまいと振る舞っていたのもあって、彼の想いが叶う確率がかなり低いこともわかっていた。だからか、彼の周りはお祝いムードっぽさがあるのだ。
 そのお祝いムードに助けられている部分はきっと大きい。
 彼が女の子たちの誘いをはっきり断るようになってから結構な時間が経っているので、彼狙いの女子は相当減っているようだけれど、それでも本気で狙っている子が全く居ないわけじゃない。彼に自ら誘いを掛けられる女子なんて、それなりに自分に自信がある可愛い子たちばかりだから、そんな子達になんであんな奴がと思われるのは当然だろう。でも面と向かってはっきりと文句を言われたことはない。
 探りを入れついでに軽く嫌味を貰うくらいのことはあったが、さしてダメージは受けなかった。
 きっと、彼が無邪気に喜びを振りまいているのと、彼と親しい友人たちのお祝いムードとで、こちらを明確に攻撃するのは不利だと悟ったんだろう。彼狙いの女子たちに囲まれて罵声を浴びせかけられるかも、くらいのことまで考えていたので拍子抜けとも言う。
 想定よりもあっさり受け入れられた結果、こちら側の幼少期の女装や、夢の国通いにバイト代の大半を注ぎ込んでいること以外は、なんだかんだで周知された気がする。
 彼が継母に裂かれた母親の形見のドレスを再利用した自分用のドレスを作り、見事に化けたことも、その化けっぷりにこちらが落ちたこともだ。ついでにいうと、学友の大半が彼の例のドレス写真を目にしても居る。
 あの日、自分自身は写真どころではなかったけれど、自分が到着する前に姉たちの手により撮影会が開かれていたからだ。彼のスマホには姉から送られたキス写真だって入っているのだから、もしかしたらドレス写真どころか、その写真を見られている可能性もある。
 それらの写真から受けた衝撃がデカかっただろうことは想像に難しくない。ただ、彼が見事な女装を披露したお陰で、一部認知がずれているようだとも思う。
 女装で迫ればイケる気がする! などという理由で、今現在の彼が女装方面を頑張っているのも多分よろしくない。今のところ、メイクをしたりスカートを履いたりで講義に出てくることはさすがにないが、髪を伸ばし始めて、形見のドレスの端切れで作られたアクセサリーのうち、普段遣いも出来そうなシンプルなものを大学にも着けてくるようになった。
 つまり周りからは、ほぼほぼ彼が女役と思われている。彼狙いの女子が思いの外大人しく引いたのも、彼が女役を嬉々として受け入れているように見えたせいもあるかも知れない。
 そんな事実はないんだけども。
 プリンセスに化けた彼に迫られキスを奪われたのはこちらで、彼自身も自分が女役だなんて一切言ってないどころか、場合によってはペロッと抱きたい側だと漏らしたこともあるらしいのに。
 だからといって、ケツを狙われてるのは自分の方だ、などと言って回る気はない。逆だと訂正して、周りに自分がそっち側と思われるのも嫌だし、そもそも、そんなことをしたらそれを自身も認めているみたいじゃないか。

続きました→

 
 
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