あの日の自分にもう一度8(終)

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「くっそ。その気持ちがわからなくないから、なんか悔しいんだけど!」
 龍則はだよなと肯定を返しながらも楽しげに笑っている。
「今のハルちゃんも充分可愛いし、紘汰がこれを理想の女の子っていうのもわかるし、自分相手じゃ付き合えないとか悔しがってんのには同情するけどさ。でも俺の場合は、自分の手で作り上げる理想の女の子と、デートできる可能性がある。というのはなかなか魅力的な誘惑だった」
「それはズルすぎだろ」
「だな。ただ、ハルちゃん落としたら手っ取り早いとか思ったのは謝るけど、やってみたい気持ちめっちゃあるのは本当だから、どうしたら協力する気になるか教えてくれ」
 理由を聞いたらなんだか気が抜けてしまった。龍則も考えることは同じと思って納得してしまったせいか、あんなにドキドキしていたのがなんだかバカらしい。
「なぁ、俺がもっと俺の理想に近い子作ってって言っても、協力してくれんの?」
「そりゃもちろん協力するけど」
 つまりは、互いに互いの理想の女の子を、紘汰の体を使って三次元で作り上げる遊びをしよう、というだけの話だ。それなら、出来上がる理想が別の体って所が、龍則のほうがお得な感じがするから、その分だけは多めに出資してもらえばいい気がする。
 それを言えば、龍則は少し考えたあとで、メイク道具は俺が揃えると言った。
「で、後は割り勘でもいいんだけど、好みの服の値段にも、差がありそうな気がしないこともないよな」
 確かに、あのウィッグの半額を要求されるのはキツイ。なんせ写真を見たところで、すげーいい、とはならなかったので。やはり自分の好みに合うものに金を出したい。
「ならそれも、着せたい服をそれぞれ自分で用意すりゃいいんじゃね?」
「だよなぁ。バイト、増やさないと」
「どんな服着せる気だよ。めっちゃ高い服持ってきたら、引かない自信がない」
「俺は趣味には金かけたいタイプ」
「龍則が彼女要らない理由って、そっちじゃないの?」
 デート金かかるから彼女要らないとか言われても、今なら素直に納得しそうだ。でもそれを理由に挙げない所が、龍則らしいとも思うのだけれど。
「それは言わない方がいいやつ」
「そういうとこ、なんかほんと、モテそうで憎らしい。俺らが知らないとこで、いっぱい告白とかされてそう」
「妄想で嫉妬すんの止めろって。男友達女装させるためにバイト増やそうとしてる男に、彼女なんかいなくていいんだって」
「それは確かに。龍則に彼女いたら、今、めっちゃ同情できる」
「架空の俺彼女に同情も要らないから。つか、次回は俺が揃えたもの着て、俺好みにメイクしていい、ってことでいいのかよ」
「ん、いいよ」
「じゃあ衣装選びはもういいか。飲もうぜ」
 随分と楽しそうなのは、このあと飲む酒が楽しみなのではなく、次回の女装へ思いを馳せているからなんだろう。次回は龍則の理想の女の子が見れるのだと思えば、紘汰自身、ちょっと楽しみでもある。
 なんだかオカシナ秘密を抱えてしまった。とも思うが、一人でこっそり女装を重ねる日々が始まる可能性があったことを思えば、この結果は多分そう悪くはない。龍則と一緒なら、女装を楽しむ罪悪感やら背徳感やらで押し潰されそうになることもなさそうだ。だって紘汰と違って、龍則は女装にめちゃくちゃ肯定的だから。
 コンビニで声を掛けてくれたのが龍則で本当に良かったなと思いながら、手伝うと言って先に立ち上がった龍則を追って、紘汰も酒盛りの準備をするためにと立ち上がった。

<終>

 
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