「照れてる。かわいい」
「やめろっ」
「あのね、わかってると思うけど、いま俺、なるべくこの時間引き延ばそうとしてるよね。で、焦らすなってガチ切れて俺を諦めさせてイクか、ギリギリまで俺に付き合うか迷ってるの、俺だってわかっちゃうんだよね」
だからこれはもっとイチャイチャしようという誘いで、ギリギリまで付き合う方を選べという訴えなんだけど、と続けたあと、でも本当はもう一つ選択肢があってそれを選んで欲しいのが本音だと言う。
「もう一つ、って?」
聞けば、一緒に触って、と返ってくる。
「俺が早くもう一度イキたくなるように煽ってよ。手も、貸してくれる気があるんでしょ?」
なるほど、その発想はなかった。というより、尻穴を弄られる代わりにお前を気持ちよくさせるからと、手と舌を差し出してみせた事も、口を離して立ち上がった最初は、自分が二本のペニスを握って扱くつもりだったことも、失念していた。
わかったと頷き下腹へ手をのばす。話している間も二本纏めてペニスを握りつづけていた相手の手は、こちらの指先が触れると同時に一旦開いて、こちらのペニスだけを握り直す。つまり、相手のペニスを握れってことなんだろう。
手にしたそれは、先程口に入れる時に触れたのとは違って、互いの先走りと相手の精液とに濡れてヌルついている。口に入れた時に間近にみた形を思い出しながら、先端から付け根までを確かめるように手を滑らす。
ゆるゆるとした刺激によってか、相手のも既に充分硬く張り詰めている気がする。これは結局の所、相手だってイキたいのを我慢してただけじゃないのか。煽ってなんて言っていたけれど、強く握って扱いたら、結構あっさり吐精するんじゃないのか。
そう、思ったのに。
「はぁ……きもちぃ」
うっとりと熱い息を吐かれて思わず見つめてしまった相手の顔が、言葉通りに蕩けているのを見てしまったら、さっさとイカせて自分もイクのだ、と思っていた気持ちがどこかへ飛んだ。もう少しだけ、この顔を見ていたいと思う。出来るかはわからないが、可能なら、もっと蕩けさせてやりたい。
それは初めての感情だった。今までだって、気持ちよさそうな顔を見る機会はたくさんあって、イケメンは感じる姿も色っぽいと思うことはあったけれど、でもそれだけだったのに。
今までと何が違うのか。相手を恋人というカテゴリに置いたから、自分の中の気持ちが変化したのだろうか。でも先程ギラついた気配で色気を振りまかれたときは怯んでしまったし、それに気づいた相手がギラついた気配を消した後だって、うっとりと柔らかな色気を振りまく相手を前にしても、こちらから手を伸ばすことはしなかった。まぁ直前の雄の顔に引きずられて、手を出す気が萎えていたというのはあるかもしれないが。
「もしかして、仕返し、されてる?」
「え?」
「さっさとイキたいのかと思ってたら、随分焦らしてくるから。イチャイチャ楽しんでる顔じゃないし、何、考えてるのかな、って」
「あー……なんでも、ない」
そんなわけないでしょ、という不満そうな顔をされたので、仕返しのつもりはないと付け加えてみたが、やはり納得はいかないらしい。
本当に仕返しのつもりなんてなくて、焦らしてやろうと思ったわけでもないけれど。でも、もっと気持ちよくさせてやりたいと思っていた、とも言いにくい。だって正確には、なんでそんな事を思ったかについて考えていた、だからだ。
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