代わりに、もう片手も下腹へ伸ばして、握るペニスの下にぶら下がる陰嚢をそっと持ち上げる。
「え、何!?」
「俺、一人でするときはこっちも結構いじるんだけど、お前はあんまここ感じない?」
「んっ、そんな、には」
まぁそうなんだろうとは思っていた。だって相手にとってもいい場所なら、とっくに弄り回されていたに決まってる。
「の割には、いきなり息上がってないか?」
「だ、だって、嬉しく、て」
「へ? あ、ああ、初めて触ったから?」
口でされるのをあんなに興奮すると思わなかった、と評していたから、手でされるのも興奮が増すのだと思っていたし、相手だってそう思ったから、手を貸してだの煽ってだの言ったんだと思っていたけど。実際触られてみたら、興奮より嬉しさが勝ったって事かもしれない。
そう思ったのに、相手はそれだけじゃないと匂わせる。
「それも、あるけど」
「ほかは?」
「どうすると気持ちぃとか、初めて教えてくれた、から」
「なるほど」
確かに。自分がより気持ちよくなれるやり方なんて、わざわざ教えようと思ったことがない。相手に全てお任せで充分に気持ちよくなれたし、焦らされたり先にイッてしまったりするのは辛いのだから、むしろ気持ちよくなりすぎるのは怖いと思っていた。
もう一度、嬉しいと言ってふにゃふにゃ笑った相手に、さっきの疑問の答えはこれかも、と思う。学生時代、何がそんなに楽しいんだかと思ったことは多々あるが、嬉しそうだとか幸せそうだとかを思ったことはあまりなかった気がする。ついでに言えば、相手が嬉しそうだと感じたときに、絆されてきた気もする。
そうか。相手がこちらへの恋情を認めたのはやっぱり大きいなと思う。相手の反応から、こちらへの好意が伝わってくるのはいい。気持ち良さげな顔の中に見えるのが、ただの興奮だったり好奇心だったりでは気持ちが動かないけれど、好意だったり喜びだったりを見てしまうと、こちらももっと何か与えてやりたい気持ちが湧くんだろう。
好きだと言われたら好きだと返す相手に、態度で好きだと示されたらこちらも態度で好きだと示したくなる、というだけなのかも知れない。
つらつらとそんなことを考えながらも、手の中の陰嚢を自分が気持ち良いと感じる動きで刺激してやる。
相手の手が止まって、ほぼ一方的にこちらが相手に刺激を与えているのも、なんだか不思議な感じだ。さきほど口でした時もほぼ一方的に相手を感じさせていたけれど、相手の様子を窺う余裕なんてなかったし、相手が感じている顔を余裕を持って見るというのが、たぶん初めてのせいだろう。
与える刺激に感じているのか、嬉しさからなのかまではわからないが、気持ちよさげに蕩ける顔に胸の内が満たされる気がした。
このまま、相手のイク顔もじっくり見てやろうか。なんてことを思いながら、竿を握る方の手を動かすスピードを上げれば、相手にもこちらの意図が伝わったらしい。
ただ、そのままおとなしくイカされてくれる気はさすがになかったようで、相手のもう片手も腹の間に伸びてきて、陰嚢がその手に包まれやわやわと指先が動きだす。
「こう?」
「ぅっ、……ふ、ぁ」
やり方は覚えた、とでも言いたげな手の動きに小さく呻いて熱い息を漏らした。
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