「少なくとも、丸投げして俺にお任せしたら上手く出来る、と思ってくれてるのは、素直に喜んでおきたいよね」
うへへと照れ混じりに笑った相手が、頑張るねと意気込んでみせるが、どう反応すれば良いのかわからない。だって、頑張れと同意するべき場面とは思い難いと言うか、あんまり張り切って頑張られるのもなんだか不安を感じると言うか。
かと言って、頑張らなくていいとか言える状況にないのもわかっている。男同士でナニをどうこうする知識は朧げにしかわからないし、基本的には相手に丸投げでどうにかなると思っているわけだし、結局、ことが上手く進むかは相手の頑張りに掛かっている気がする。
「あー……ほどほどで、頼む」
「なにそれ?」
「張り切りすぎて別方向に無茶強いられるのは勘弁」
「別方向って?」
「めちゃくちゃ感じてんのにそっから延々焦らされまくったり、とか」
こんなセリフを口に出せたのは、すでにホテルのフロントを通り過ぎていて、誰も居ないエレベーターの中だったからだ。でもまぁ、何を言ってるんだと思う気持ちは当然あって、というよりも、かなり焦らされまくった卒業前の行為を思い出してしまって、恥ずかしさからエレベーターが開くと同時に早足で部屋へと向かってしまう。
こちらが照れて早足になったことには相手も気づいているのか、少し笑う気配とともに、相手は無言で後ろをついてきていた。
「でもそれはさぁ〜」
相手が次に口を開いたのは部屋のドアが閉まってからだったが、どうやら先程の会話をそのまま続けるらしい。
「イッたらそこで終わりにしたくなるのわかってたら、そう簡単にはイカせられないでしょ」
ずっとそういう態度を取ってきたし、恋人となった相手にならイッた後の体を触られるのが平気になる、なんて都合がいい変化が起きるわけもないので、相手の言い分もわからなくはないんだけど。
「お前がイキたくなるまで、そこまで俺を感じさせる必要がない気がする」
こっちがイッたら終わり、に出来ないなら、イカせず焦らす前に、イキたくてたまらないほど感じさせなければいいんじゃないのか。
「それってつまりさ、」
伸びてきた手に腕を掴まれて、ドキリと心臓が跳ねた。そう強い力で掴まれているわけではないのに、じわじわと焦燥が広がる気がするのは、これでもう逃げられないと思ってしまったからだろうか。逃げる気なんて、ないはずなのに。
「な、んだ、よ」
掴まれた腕を引かれて向かい合わせに立っても、相手はジッとこちらを見つめるばかりで続きの言葉がない。先を促すつもりで吐き出した言葉は、乾いて喉に引っかかってしまったから、こちらの緊張や焦りを晒すみたいで最悪だ。
「ねぇ、気持ちよさでごまかさなくても、俺のこと受け入れてくれるってことでいい?」
「は?」
何を言われているのか全くわからなかったが、相手はこちらのその反応を予測済みだったようで、やっぱわかってないよねと納得されてしまった。
事実全くわかっていないのに、わかってないってなんだよ、という反感で思わず相手を睨んでしまう。
「怒んないでよ。だってあまり感じさせるな、なんて言い出されたら、どこまで本気で言ってるのか気になるじゃん」
「本気で言ったけど」
「うん。イキたくてたまらないほど感じて焦らされるのは嫌だ、ってのが本気なのはわかってるけど、でもじゃあ、そうしなかったらどうなるか、ってのは正直まったく想像ついてないよね?」
「そうしなかったら、どうなるか……」
「俺、抱くつもりで触るよ?」
「ん、ああ」
それはわかっていると頷きはしたが、相手が何を伝えているのかはやはりちっともわからない。わかっていないことは、相手にももちろん伝わっている。
「感じまくって、イキたいイキたい早くなんとかしてくれ、って思いながら体慣らされるのと、たいして気持ちよくもない中で、俺に突っ込まれるためにお尻の穴広げられるのを耐えるの、どっちがいい?」
なるほど。そういう事か。という理解とともに、顔が一気に熱くなるのを自覚した。
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