イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった51

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 言われてみれば、そんな気持ちで彼女と向き合ったことはない。これで童貞が捨てられるとか、未経験の穴への期待とか、そんな気持ちのがずっと強かった。
「ごめん……」
 思わず謝ってしまったのは、目の前の男相手にも、好きだから体を繋げたい、なんて気持ちは欠片も感じていないせいだ。
「それはなんに対する『ごめん』なの?」
「好きだから体繋げたい、とか思ってお前とやってるわけじゃないな、って」
「俺を好きって思ってくれてるから、俺に抱かれてくれる気になった、と思ってたんだけど?」
「いやまぁ、それは、そうだけど」
「充分だよ」
 柔らかに笑われて、ホッとすると同時になんだかドキドキしてくる。しかもなぜかそれを待っていたかのように、ずっとお腹の中で大人しく留まっていたペニスがゆっくりと引き抜かれて、ゾワゾワとした快感と呼べそうな感覚に肌が粟立つ。
 安堵で体が弛緩したんだろうことはわかるが、そこで押し込まず引かれていくのかがわからない。ああ、いや、全部を埋める気がないってのが本気だっただけかもだけど。
「ふぁあ」
 油断から随分と妙な声を発してしまって恥ずかしいのに、相手の顔から外せない視線の先で、嬉しそうに顔を蕩かせられたから、ますますドキドキが酷くなった。なんだこれ。
「な、んで……」
 色々とごちゃまぜな気持ちから、思わず口に出てしまったけれど、正直自分でも何に対する疑問なのかがわからない。
「そろそろ馴染んだみたいだったから」
 相手はどうやら、なんで動き出したのか、という意味での疑問と思ったらしい。馴染んだからかはわからないし、実感としては安堵からだけど、間違いなく体は弛緩したのだろうし、それはそこまで疑問ではないんだけど。
 今ならもっと奥まで入るんじゃないか、という方向の疑問は、気持ちよさそうで良かったと、安堵と喜びをだだ漏れにさせる笑いに霧散した。
 相手の緊張とやらもすっかり解れたらしく、さっきからずっと表情が柔らかい。さすがに気持ちがいいと蕩ける顔ではないが、相手は満足そうだし、気持ちがいいかどうかが最優先ではないというのは事実なんだろう。
 充分気持ちよくなれているとも言っていたし、奥まで入れなきゃ気持ちよくなれないってわけでもないなら、もういいかと思った。
 多分本当に、勢い任せに無理やり奥まで突っ込もうなんてことは思ってない。そう思ったらますます安心して、お腹の中に意識が向いた。
 ゆるっと抜けていたペニスは、抜けきることなく、またゆっくりと入り込んでいる。最初の挿入は擦られて熱いような感じがしたけれど、今はもう、そんな熱は感じない。ちゃんとローションのぬめりを借りて、滑るように入り込んでいた。
 何度かそうしてゆっくりと大きく前後していたペニスが、やがて、一箇所で短めの前後を繰り返す。さっき指で教えられた前立腺を狙って、亀頭部分がゴリゴリとそこを擦っている。
「ぁ、あっ、ぁあっ」
 擦られている前立腺からビリビリとした快感が全身を巡って、目の前がチカチカと明滅した。
 相手の満足気に笑う柔らかな顔をもっと見ていたかったが、さすがに耐えきれずに目を閉じる。苦しいくらいの快感から逃れたくて身を捩るが、どのみち腰から下はがっつりと相手に抱え込まれていて、前立腺を捏ねる相手のペニスから逃れられはしない。
「お尻、気持ちぃね」
 うっとりと響いた声音に誘われて、無理やり瞼を押し上げ見えた相手の顔は、声音に似合わず獰猛だ。でもこの顔を知っている。
「んっっ」
 思わずキュッと腹に力が入って、相手が少し苦しそうに呻く。でも興奮を隠せないオスの顔に、怯んでしまったわけじゃない。どちらかというと、相手の興奮をはっきりと見せつけられて、嬉しかったんだと思う。
 もしかしたら、気持ちがいいと蕩ける余裕もない、のかも知れない。相手はこの顔にこちらが怯んでしまうことにも気づいていて、余裕がある時はなるべく隠してくれている、というのは大いに有り得る話だった。

続きました→

 
 
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