イケメン相手にこんな関係になる予定はなかった2

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 相手よりも2ヶ月半ほど遅れて20歳の誕生日を迎えたその日、相手はウキウキな顔で様々なアルコール飲料が並んだテーブルを見せた。
「誕生日祝ってやるって、もしかして、これ?」
「ケーキもあるよ。ちっちゃいけど丸いやつ。あとハッピーバースデーのプレート」
 小さなプレートだから名前は書いてないと言われたけれど、充分すぎるというか、想定外すぎる。
「家で、とか言うから、金欠か溜まってるかだと思ってたわ」
「まぁせっかく揃って飲めるようになったんだから、色々試しておきたいし。あとやっぱ誕生日に丸いケーキないのは寂しいからさ」
 2ヶ月半ほど前のこいつの誕生日は、夕飯をデザート付きで奢ってやってまぁまぁの出費になったから、その金が惜しいのかと思っていた。昨年までは互いの誕生日を祝うようなことはしてなかったから、まさかこういう祝い方をしたいタイプとは思わなかった。
「お前、去年とか今年の誕生日、自分で丸いケーキ買って食ったの? 一人で?」
「してないよ。してないけど、去年それでちょっと寂しかったから、今年はお祝いしてって事前にお願いしたんでしょ」
 それはもしかして、夕飯を奢るのでは不満だったという話だろうか。丸いケーキが欲しかったなら、ちゃんと言っておいて欲しかった。というか、つまりこれは今言われてるってことなのか?
「えーと、来年は丸いケーキも用意しろって言ってる?」
「んー……それはどっちでもいいかな」
「なんでだよ!」
「自分の誕生日に丸いケーキがあったら嬉しいとは思うけど、なくてもまた、お前の誕生日に丸いケーキ買ってくればいいかなって」
「じゃあ、お前の誕生日に丸いケーキ買ったら、俺の誕生日はケーキなし?」
「いやちゃんと買うけど」
「なんっじゃそりゃ」
「それよりどれから飲む?」
 ケーキの話は終わりとばかりに、相手が俺はこれと缶を1つ手に取った。
 なんとなくのイメージで、飲み会とはまずはビールからスタートなのかと思っていたが、相手があっさりと低アルコールを売りにしたフルーツ酒の缶を選んだので、取り敢えずは自分も似たようなのを選んでおく。
 色々試しておきたい、という色々は酒の種類を指しているのかと思ったが、アルコール度数が低いものから手を出すというなら、酔った時の状態を段階的に知っておきたい的な話なのかも知れないと思ったからだ。
 たった2ヶ月半の差なので、この間に相手だけが酒を飲むという機会はなく、相手が酒に強いのか弱いのかはわからない。もちろん自分だって、これまで一切飲んだことがないとは言わないが、はっきりと酔っ払うほどアルコールを摂取したことはない。なので、自分だけがさっさと酔った姿を晒すことになるのを避けたかったのも、当然ある。
「じゃあ、他は冷蔵庫しまっとこう。あと、つまみも適当に用意してあるから持ってくるね」
「いや俺も手伝うって」
 いそいそと選ばれなかった酒の瓶や缶の一部を抱えて立ち上がる相手を追うように、自分も残りを抱えて立ち上がる。
「主役は座ってていいのに」
「俺もう結構腹減ってんの」
「ふふっ、素直じゃないなぁ〜」
「なんだって?」
「相変わらず面倒見が良いよねって」
「前から言ってるけど、そんなん言ってんの、お前だけだぞ」
「大学はクラス委員とかないからね」
「じゃなくて。昔っから。高校の時から」
「えー俺、高2の時の委員長がお前じゃなかったら、高校中退してた可能性もあるのに?」
「は? なんで?」
「学校つまんなかったから」
「まぁ確かに楽しそうではなかったけど」
 高校が同じでクラスが一緒だったこともあるが、その頃からの友人ではない。あの頃のこいつは、孤高を気取るいけ好かないイケメン扱いだった。

続きました→

 
 
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