可愛いが好きで何が悪い29

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 やがて口を開いた相手は、聞きにくそうにしながらも確認したいんだけど、と言うので、何をと思いながらも先を促す。
「いいぞ」
「じゃあ、さっき、俺を避けてたのは俺にチャンスくれる気がないからじゃない、みたいなこと言ってたけど、本当に、俺とエロいことするのも有りって思ってる? 話し合いしたら、その気になるようなものなの?」
「そもそも、その気がないわけでもないっていうか、ちゃんとそういうのまで意識してるから、お前と二人きりになるの避けてたんだけど」
「それ、ホント、意味分かんないんだけど!?」
「あー……お前にエロいことされんの、別に嫌だとか思ってない。けど、俺が一方的にエロいことされんのは嫌だって思ってる。この違い、わかるか?」
 パッとは理解できないようで、頭の中の疑問符が見えるようだ。
「じゃあもっと具体的に言うと、お前と二人きりになるだろ。そしたらお前はそれなりに期待だってするだろ。恋人になったんだからこれくらいいよねって、俺にあれこれしようとする」
 そうだろ? と無言で問えば、相手も無言で頷いて見せる。
「俺はそれを拒もうとは思わないし、多分、当たり前に嬉しかったり気持ちよくなったり出来ると思う」
「え、じゃあ、なんで!?」
 黙ってられなかったのか、あまりに想定外だったのか、酷く驚かれてしまった。
「けど、そっから先までは考えられないっていうか、抵抗があった」
「そっから先、ってつまり、抱かれるのはまだ嫌だって話? なら、」
「じゃなくてその前」
「え、違うの!? てかその前って何!?」
 なら、と続こうとした言葉を遮って告げれば、またしても随分と驚かれてしまったが、これはまぁ想定内の反応だ。
「俺だけ気持ちよくなってハイ終わり、でいいわけないだろ。お前も、最初はそれで満足かもしれないけど、どうせすぐに不安になったり不満に思ったりするんだよ。で、これは俺が完全に勘違いしてただけだけど、ちょこっとだけ与えて期待煽って落胆させるより、こっちの覚悟決まるまで待ってて貰った方がいいだろって、思ってた」
 実際は、二人きりを避けただけで、思いっきり不安にさせてしまったけれど。
 そんなにしたいなら言えよ、とか。平気じゃなかったなら理由を聞けよ、とか。言いたい気持ちはあるものの、でも、言葉にして確かめるのが怖かった相手の気持ちも、今はもう、わかっていると思う。
 それに、言葉が足らないという意味では、多分、自分も同罪だ。
 これから先もずっとしたくないわけじゃないから、覚悟が決まるまで待ってとちゃんと言っておけば、こんなバカみたいな拗らせ方をさせなかったかも知れない。いずれはする気があるとわかってたら、待てないなら待てないなりに、こちらにちゃんと訴えて来たかも知れない。
 少なくとも、隠れてこっそり自身の尻穴開発、などという発想には至らなかったんじゃないかと思う。
「覚悟、って?」
「最低限、お前のちんこ、触ったり、舐めたり。それくらいは出来そう、って思ってからじゃなきゃ、お前に手ぇ出されたくなかった」
「ああ、一方的にエロいことされんのは嫌だって、そういう……」
「そう。ついでに言うなら、俺はお前が俺を欲しがって手を伸ばしてきたら、嬉しいって思うだろうくせに、お前のことを同じだけ欲しがってやれないの、嫌だってよりは申し訳ないなって思ってる」
「カッコ良すぎなんだけど。あとホント、優しい」
 俺の恋人、マジ、ヒーロー。などという呟きが相手の口から漏れて、唖然とする。
「は?」
「発想が男前すぎるというか、ああ、いやでも、知ってた。わかってた」
 いきなり何を言い出しているんだと混乱する中、相手はうんうんと頷きながら、勝手に一人で納得している。なんだこれ。
「一人でうじうじして、お前のこと疑って、ごめん。恋人になったからって、お前がお前じゃなくなるなんてこと、ないのにな。ね、俺のこと、ちゃんと恋人として、好き?」
 今それを聞くのか、とは思ったが、答えずに誤魔化してはいけない場面だというのはわかる。なので正直に答えはしたが、思ったこともそのまま声に出てしまう。
「ちゃんと、好きだよ。てか今それ聞くのかよ」
「うん。もっと早く、聞いておけば良かった。嘘なんかつかない、って、知ってるんだから。好きって言って貰ったら、それだけで、信じられたのに」
「ばぁか。気づくのが遅いんだよ。まぁ、俺も、言って無くて悪かった」
 我慢しきれずにバカと言ってしまったが、さすがにもう、バカって言わないでよと泣かれることはなく、それどころか、だよねぇと苦笑の同意まで貰ってしまった。

続きました→

 
 
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