「正直に言えば、今なら、そこそこ出来そうな気がしてる」
「え、今!?」
「言ったろ。お前を相当好きなんだって、思い知ったって」
「それは、……素直に喜んでいい、の?」
躊躇いがちな発言と疑惑の眼差しに苦笑を返す。素直に喜んで欲しいところかと言うと、かなり微妙だった。
出来そうな気がすると言うのは、何かしら応えてやりたい気持ちが湧いている、という意味合いが強くて、実際に何が出来るのかと聞かれると正直困る。リアルなアレコレを想像したら、怖気づく気持ちだって当然ある。なんせ、積極的にどうこうなりたい側の彼ですら、泣きながらこなしていたような行為を自分がするって事なのだから。
「まぁ好きだからで出来ることと出来ないことがあるよな」
「ほらぁ」
やっぱりねという顔をされてしまったが、だって仕方がないだろう。
「だって、お前が泣きながら尻弄ってたってのを見せつけられた直後だぞ。怯むに決まってるわ」
「そ、れは……泣かさないように、頑張る、し」
「そりゃどうも。けど結果的に俺が泣いたら、お前、どうすんの?」
「え? どうするって、慰める……?」
落ち着くまでヨシヨシするし、どうしても続けるのが無理そうなら一度止めるのも有りらしい。無理強いは絶対しないから安心してと力説されたが、聞きたいのはそれじゃない。
「無理強いはしないって、つまり、俺が泣いても俺を抱きたい気持ちは特に変わらないってこと?」
「え、泣かれたくらいで変わるようなもの?」
「俺は変わる」
「え、マジ、で……」
またしても嘘でしょと言わんばかりの驚きの顔をしている。
「さっきも言ったけど、俺は相手に無理させてまで抱きたいとは欠片も思えないんだって。お前が泣きながら尻の穴広げてるの知っても、じゃあ俺が突っ込むわとはならないどころか、俺に抱かれるためにそんなことしないでくれとしか思えない。そこまでしてやるような事じゃないだろって気持ちのが断然強いし、お前を抱く側に乗り気じゃないのはそれもデカいよ」
「嘘でしょ。無理させてまで抱きたくないって、そういう話なの!?」
顔だけじゃなくて実際に言われてしまった。
「相手が自分に抱かれるために頑張ってくれたら、嬉しくないの? 俺は絶対嬉しいし、俺も頑張ろって張り切るくらいだけど」
「そりゃそこまでして求めてくれる気持ちは嬉しいと思うけど。でもそれとそのまま抱くかは別問題っていうか、無理しなくっていいからって止めると思う。もっと正直に言うと、相手に泣かれたら勃たない気がする。って言っても、だろうなって思うだけで、実際に泣かれて中断した経験なんてないけどな」
「に、認識が……セックスの認識が、違いすぎる……」
「ああ、うん。知ってた」
ガクッと項垂れてしまった相手の頭に手を伸ばして、少々乱雑ではあるがヨシヨシと慰めるように撫でてやる。
「俺は自分が異常とは思ってないけど、多数派でないことはわかってるよ。でもまぁ、俺が抱かれる側で、俺が泣いてもお前が萎えないなら、問題なくやれるしいいだろ?」
問題なくやれる、という部分に反応してか、相手が項垂れていた顔を上げた。
「それ、本当に問題ないって言える? そこまでしてやることじゃないだろって、思わないの?」
「思わないよ。そこまでしてもやりたいってお前が思ってるなら、恋人として、ちゃんと応じてやりたいって話だからな」
泣いて尻穴弄られるより全然いいよと言えば、困ったように笑って、もしかして俺が泣いてたのそんなにショックだったのと聞かれてしまう。
「そりゃそうだろ。恋人が知らないとこで泣かされてるってだけでもそれなりにショックなのに、理由が自分とか情けないにもほどがあるわ」
「泣いて尻穴弄って、って、何度も言うからよっぽど衝撃的だったんだろうとは思ってたけど、気にしてたのそこかぁ」
「そこ、って?」
「男同士で体繋げようと思ったらどっちかのお尻に入れるしかないんだよね、ってのをリアルに突きつけられてショック受けてるのかと思ってたけど、俺が泣いてたのがショックだったのか、って」
「さすがにそこまで無知でも初心でもないんだが。というか、男同士で付き合って、いつかは自分が抱かれる側になりそうってのもわかってたら、アナルセックスのやり方くらいは調べるしな」
「ええ、凄い」
「何がだ」
「その気がないわけじゃないとか、俺とエロいことするのも想定してくれてる、ってのはさっき知ったけど、そこまでしてくれてたんだなぁって」
嬉しそうにニコニコ笑われてしまうと、言葉に詰まってしまう。まぁ、喜んで貰えたなら良かったと思うしかない。
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