尻穴拡張に同席する気かと思ったら、同席どころか彼自身の手で慣らされるという話になってしまったが、それが決定してしまったならわざわざ日を改めるまでもないかと思う。覚悟さえ決めてしまえば、これ以上相手を焦らす必要もない。
「なぁ、お前、腹の中ってどうしてる?」
「はらのなか?」
突然なんだと言いたげに、ただただこちらの投げた言葉を繰り返されてしまったから、もっと具体的に、事前に浣腸はしたのかと問いかける。
「そりゃしてるけど」
「どうやって?」
「え、それ今、説明必要!?」
「必要だから聞いてる。てか、俺が自分で尻穴広げてくるの待つ気がないなら、とりあえず今からちょっと試してみようぜ」
「今から!?」
「日を改めてもいいけど、俺の、お前に応えてやりたい気持ちが高まってる今のがハードル低そうだし。今なら勢いで色々乗り切れそうな気がする」
ついでに言うなら、ローションもゴムも拡張用のディルドもバイブも既に揃っていて、準備万端と言ってもいい。もちろん、それらはこちらの尻穴拡張のために用意されたものではないけれど、自分のために新たに用意しろとも思わないし、彼に使われたものが自分に使われることへの抵抗感も特になかった。
「勢いで乗り切るとか言われると、微妙に喜びづらいんだけど」
でもこのチャンス逃せないよねぇと苦笑しながら、相手がスッと立ち上がる。来てと言われて連れて行かれた先は廊下の収納棚の前で、そこからイチジク浣腸を取り出し手渡された後、ユニットバスへと案内された。
「それの使い方の説明、いる?」
「いや、それはいい」
一応色々調べはしたから、イチジク浣腸の使い方は知っている。
「それでお腹すっきりさせた後、俺は何回かシャワー浣腸もしてる。そっちの知識は?」
「ある」
「じゃあ、何かわからないこととか、問題発生したら声かけて」
「わかった」
「え、っと、他になにか……あ、バスタオルは後でここに用意しておくね。それと……」
言いながら、扉横に設置されている棚を指した後、更になにか言い忘れはないかと思考を巡らせている。
「いやもういいって」
この部屋に泊まったことはないのでバスを借りるのは確かに初めてだが、彼がうちに暮らしていた期間はそこそこ長かったし、バスルームに着替えやバスタオルは持ち込まず、扉横に脱衣用の棚を用意したりそこに着替えやバスタオルを置くのは、彼がうちのやり方をそのままここでの暮らしに持ち込んだ形だ。つまり、今更バスルームの利用に細かい説明など必要がない。
「何か、俺が緊張してきちゃって」
「土下座までして押し切っておいて、土壇場でヘタれんのはなしにしろよ」
「しないよ!」
「ならいい。じゃあ初めてだしちょっと時間掛かるかもだけど、大人しく、あー」
大人しく待っとけと続けるつもりだった言葉を一旦区切って、相手の顔をまじまじと見つめた。
「な、何?」
「お前、その泣いた目、冷やすなりしてもーちょいどうにかなんない?」
「え、そんな酷いことになってる?」
「んー……ちょっと、気になる程度には」
「気になる、って、どんな風に? もしかして、萎えるとか、そういう?」
「まぁ、そういうやつ」
笑っててくれれば、多分そこまで気にならないけれど。でもこのあと何をするかわかっていたら、始終笑顔で居てくれというのも無理な注文だろうなと思う。
ローションが優秀だろうと、やっぱりそう簡単に受け入れられるとは思えないし、ましてや初めてで感じるとも思えないから、そんな自分に対して、相手がどんな反応をするのかわからない。自信満々に、惨めにも寂しくもさせないだとか、感謝して励まして褒めてあげるねなどと言っていたって、それらがどこまで実行可能なのかもわからない。
泣いたのがわかるその顔で、がっかりされたり難しい顔をされてしまったら、さすがにこちらの気持ちが挫けるかも知れない。泣かせた上に全く期待に応えられないとなると、落ち込みそうではある。逆に、張り切ったり頑張ってしまったりする可能性もなくはないけど、あまりに未知すぎてよくわからない。
だから少しでも、事前に潰せそうな不安は潰しておきたかった。
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