相手の手の中に握られた自身の性器は先走りをこぼして、擦られるたびに微かに湿った音を立てている。
ハッハッと漏らす荒い息を、塞いでくれるキスはとっくに忘れ去られて、熱を孕んだ目がジッと自分を見つめていた。
自分は今、彼が何度となく繰り返しただろう彼の中の自分と、どの程度の差違を持って痴態を晒しているんだろう。
観察するようなその目が少し怖い。しかし目を閉じて逃げる気にもなれない。結果黙って見つめ合うばかりだった。
達するには足りなくて、でも落ち着いたり萎えたりする隙の一切ない刺激に、じわじわと追いつめられていく。
「っ、…ぁ、も、イきたい、……かも」
なんだか情けないかもと思いながらも、より強い刺激をねだった。
小さく喉を鳴らしながら軽く頷いた相手が、手の動きを加速させる。強まる刺激に、あッアッとこぼれて行きそうな声を、聞かせるべきなのか飲み込むべきなのか。
「声、聞かせて下さい」
良くわからないまま噛み殺していたら、単調なくせに熱っぽい相手の声に促されて、それならと求められるまま口を開いた。
「あッ…ああっ……いい、キモチぃ」
イッちゃうよと訴えたらやっぱり無言で頷かれたので、そのまま相手の手の中に果てる。
吐き出してしまうと一旦冷静になるのは仕方がなくて、ああやっちまったという思いと、彼の手でイけて良かったと安堵する気持ちとが、胸の中で交錯した。
そんな中、相手は手の中に吐き出されたものをマジマジと観察していて、終いには鼻を近づけてクンと匂いを確かめた後、更に舌を伸ばそうとしている。
「待って待って待って」
慌ててその手を掴んで、顔の前から引き剥がす。
「うん、あの、興味わからなくないんだけど、精神的にクるから舐めるのはちょっとなしで」
「それ、割と今更じゃないですか?」
昨夜貴方の舐めてますけど、という声に出されない言葉が聞こえた気がした。
手を舐めるのがダメなら、下のを口で綺麗にしてもいいですかと言われて、喉の奥に言葉が詰まる。
「嘘です。無理言ってすみません」
「いや、良いんだけど。良いんだけど気持ちの準備がね。というか、先に聞かせてよ。ちゃんと君の手でイッたけど、君の気持ちはどうなった?」
「吐き出されたものを舐めたいとか、イッた後のしゃぶりたいとかって気持ち悪い欲求が、抑えきれずに漏れ出る程度には、貴方が好きなままですが」
「ちょっ、取り繕う気ゼロ!?」
「まぁ、それなりに満足は出来たんで、無理して受け止めてもらわなくても良いかなとも思いまして」
後々やっぱ無理って振られるより、これで終わりにしたほうが楽かなって気もするんですよねと、自嘲気味に笑うから思わず引き寄せて抱きしめた。
「あのね、俺の受け止めるって覚悟の程度を、勝手に決めつけて諦めないでくれる? 大丈夫。ビックリしたのと恥ずかしいのとでやめてって言ったけど、口での愛撫とか全然普通だから。どうしても手に吐き出されたものを舐めたいんだってわけじゃないなら、こっちの希望としては、今度する時は口でして。そしたら口の中でイくから、飲みたかったらそれ飲んでよ」
「けっこう凄い事言ってますけど、自覚あります?」
「ダイジョブ。わかってる」
まぁ顔は間違いなく赤くなってるから、もう暫くこの腕の中にいて貰うけれど。
「俺、貴方を抱きたいって、思ってますけど」
「え、それこそ今更だろ。知ってるよ」
「こんな年下の男相手に、処女散らされても良いんですか?」
「ちょっ、処女って!!」
「あいつに聞きました。男の恋人、いた事ないんですよね?」
「ちょっと色々筒抜け過ぎて怖いんだけど」
「責任感と罪悪感、ですよね。俺なんかに抱かれるの了承したのは」
「責任感や罪悪感で抱かれるんじゃ嫌だってなら、もう少し待ってよ。俺が、君に、恋をするまで」
腕の中の体が驚きのあまり硬直するのが分かった。だから宥めるようにその背を擦りながら、多分きっとすぐだよと、なるべく柔らかで優しい響きになるよう心がけながら告げる。
「君が持つ恋とはきっと違う。厳密には恋とは呼ばない想いかもしれない。でも俺はさっき君を確かに可愛いと思ったし、今も君を抱きしめながら可愛いなって思ってる。そして、俺を好きだと言ってくれるなら、やっぱりその想いには応えたいって思うんだ」
腕の中の彼は、考えるように黙ったままだ。
「貴方が、好き、です」
やがておずおずと告げられた告白に、頬が緩むのを自覚する。
「うん」
「俺と、付き合って貰えますか」
「もちろん。これからは、恋人としての俺を、宜しく」
言えば、こちらこそよろしくお願いしますと、やや緊張の滲む固い声が返ってきた。
<終>
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うわぁん、良かったです!
お兄ちゃんの懐が深すぎて!
親友が可愛すぎて切ないくらいです!
お兄ちゃんが覚悟しちゃう気持ち分かります!!
弟にも早く次の恋が訪れますように……
ステキなお話をありがとうございました!
また次のお話をお待ちしております!!
ぽこさん、ほぼ更新直後にコメントを下さり、どうもありがとうございます!
親友可愛いって思って貰えて嬉しいです(*^_^*)
拗らせの方向性が危なっかしくて、放っておけなくなっちゃう系の可愛さですよね(笑)
弟くんは機会があれば、彼をメインで話を作るのもありかなと思ってみたり、兄が男と恋人になってしまったから、自分が子供残さなきゃって普通に結婚したりするのかなぁと思ってみたりしています。
今回のお話も楽しんでもらえて良かったです。
また暫くは単発の小ネタかなと思いますが、これからもどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m
ひとまずは、終わりましたね。 レイさん、お疲れさまでした―。
そうそう、最初に読んだときは、ノンフィクションかと思っちゃいました。すごくリアル感あって。
過程はどうあれ、ハッピーエンドは嬉しいものです。
お兄さん、親友くん。 おめでとうーー!!
&弟くん、努力は結ばれた。 キミの幸せはセピア色になってしまったけど、きっと本気の恋ができるよ!
あー、でも、親友クン、これからも危うい部分がありそうで、兄弟共々気が気じゃないんじゃないかなあ(笑)。
お兄さん、頑張って受け止めて、包んであげてね(色々と)❤
・・第2章は、合体がたくさん?(ヲイ) 待ち遠しいです(だから、待ちなさいってー)。
mさん、ずっと見守ってくださっててどうもありがとうございました~
取り敢えず無事に、兄さんと親友で恋人になれました(*^_^*)
でも確かに、親友くんは今後もまだまだ危うい感じありますねぇ
兄さん色々苦労しそうです(笑)
今のところ続きは考えてませんが、結局触る以上のこと出来なかったのは確かにちょっと心残りなので、何かの拍子にひょっこり続きが出来てたりするかもしれません。
この話はひとまずここで終了ですが、今後も色々書いていくつもりなので、mさんの興味を引くものが書けた時には、ぜひまたよろしくお願いします~
こんばんは〜!
このお話読みました!
弟の親友に狙われるというシチュエーション自分も考えたことがありまして、このお話萌えたのですが、続きが気になりますね!(笑)最後まで番外編か何かで書かれていたら嬉しいなと思うのですが、まだないですよね?f^_^;
違うお話もまた読みに来ますね^_^
寒いですがご自愛くださいませー。
睡魔さん、さっそく他のお話も読んで下さってありがとうございますヽ(=´▽`=)ノ
番外編というか、視点を親友くん側に変えて「親友の兄貴がヤバイ」みたいな続き(主に初エッチ部分)が書けたらいいなと最近色々考え中です。
今書いてるおっさんの蔵書に一段落付いた後にこっち書けたらいいなーと思っていますので、ちょっと先になりそうですが、今暫くお待ち下さい〜