月曜2限は空きコマで、時間をつぶすのはもっぱら学食の片隅だ。
「よぉ。一人なのは珍しいな」
声をかけられて手元のスマホからそちらへ顔をあげれば、サークルの先輩が昼食が乗っているのだろうトレーを手にして立っていた。
相席の申し出にもちろん構わないと返して、相手が向かいの席につくのを待つ。本日の先輩の昼食は、どうやら生姜焼き定食だ。
「美味そうっすね」
チラッと時計を確認して、少し早いが自分も昼を食べてしまおうかと思う。
「俺も昼飯買ってきていいですか?」
「おぅ」
「じゃちょっと行ってくるんで、荷物よろしくおねがいします」
財布だけ握って、気持ち急ぎながら注文しに行く。昼休み前でまだ空いているので、同じく生姜焼き定食の乗ったトレーを手に戻るまでにそう時間は掛からなかったと思うけれど、どうやら先輩はこちらが戻ってくるのを待っていてくれたらしい。
「お待たせしました。てか食べてても良かったのに」
「いやだって、慌てて買いに行くの見たら、一緒に食べるかって思うだろ」
こちらのトレーに同じ定食が乗っているのを見た先輩が、可笑しそうに笑う。つられて買いに走ったのが明白すぎて、ごまかすようにこちらも笑った。
「へへ。ありがとうございます」
「じゃ、いただきます」
「はい、いただきます」
応じるように告げて箸を持つ。
今日は一人で昼ごはんと思っていたから、余計に美味しく感じる気がする。声をかけて貰えてよかった。
「先輩って、いつもこの時間に昼飯なんですか?」
先輩は4年生で、すでに講義はほとんどないらしい。だいたいは所属のゼミ室にいると聞いたことがある。時間に融通がききやすいようだから、混む昼休みを避けて学食を利用しているのかもしれない。
「今日はちょっと遅いくらいかな。俺、朝食わないから」
「へぇ」
「で、そっちは? いつもこの時間には見かけてたけど、でも先週までは誰かしら一緒だったろ?」
「あー……月曜1限とか来るのだるいっすよね。必修じゃないなら尚更」
「つまり、脱落した?」
「みたいです」
「お前は?」
「もう半分過ぎてるから、俺は今更捨てるの、なんか悔しくて。俺こう見えて真面目なんで、ここまでしっかりフルで出てるんですよね、ってのも大きいかも」
「なるほどね。じゃ来週も、てかこっから先の月曜2限は一人ってこと?」
「多分そうなりますね」
「じゃ、また見かけたら声かけていいか?」
「もちろんいいっすよ。てか今までだって、見かけてたんなら声かけてくれても良かったのに」
「それはまぁ、友達と楽しそうにしてたし、邪魔したくないし、そっちが気づいてないならいいかと」
「あー、俺のほうこそ、今まで気づかなくてすみませんってやつだコレ!」
「いやそんなのは別に全然いいんだが」
その後も昼休みが始まるギリギリまで、軽い雑談がメインとは言え話が途切れることはなく、昼休み開始とともに、じゃあまた来週と言って先輩は食堂を出ていった。
そうなると、同じく昼食を終えている状態でここに居座るのは気が引けてしまう。こちらはまだゼミ室などというものがないので、追加でドリンクでも買ってくるか、場所を移動するかしかない。
迷って結局、次の講義で使う教室へ早々と移動することにした。
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