意気地なしの大人と厄介な子供4

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※ 視点変更しています。

 意識の浮上とともに頭の痛みを認識して、深い溜め息をこぼす。これが噂の二日酔いってやつだろうか。
 初心者が飲みやすさに釣られて飲み過ぎる、というカクテル類をあえて選んで飲んでいたのだから、狙い通りと言えなくもないのだけれど。でもどうせなら、昨夜の記憶を全抹消するくらい派手に酔ってしまえばよかった。いやでも、それはそれで、酔った自分が何を言って何をしたかわからないのは怖すぎる。
「はぁ〜……」
 再度大きなため息を吐きながら、昨夜のアレコレに思いを馳せた。
 予想通りに酔っぱらいとして世話を焼かれたけれど、予想以上に甲斐甲斐しかったのは、こちらが盛大に甘えまくったせいだろう。酔って気が大きくなったと言うか、普段の自分らしくない真似だって、全部酔ったせいに出来ると思ってしまったと言うか。
(イケるかと思ったんだけどな……)
 好きなくせに、という指摘には否定がなかった。その上、無茶振り抱っこの要求まで叶えてくれた。
 だから、酔って迫ってワンチャンきたこれ、って思ったのに。しかし物事はそこまで狙い通りには進まなかった。据え膳だよは否定されて、大人のけじめとやらで、結局手は出されずに終わってしまった。
 叔父の代わりにしてもいい、とまで言ったのに。
 叔父、という単語を出した直後、腕の中で硬直した体には気付いたから、きっと、バレてないと思ってたんだろう。あの後の沈黙が、代わりにしていいという誘惑への逡巡だったのかはわからないけど、その沈黙を前に、もしも「じゃあする」って言われたらヤダなと思ってしまって、自分で誘ったくせに、自分で放り出してしまった。
 部屋を出ていった彼が、その後、叔父本人に連絡を入れただろうことまではわかっている。いやまぁ、相手が本当に叔父かはわからないのだが、誰かと電話で話しているようではあった。
 さすがにベッドから抜け出して聞き耳を立てる気力もなく、いつの間にか寝落ちていたようで、気付いたらこうして朝なわけだけど。
(てかあの人どこで寝たんだろ?)
 自分が寝てる間に隣に潜り込んで、目覚める前に起きだした。という可能性はあるだろうか?
 深く寝入っていて全く気づかなかった、という可能性もありそうな気がするけど。なんせ大人のけじめとやらで手を出さなかった人だ。と思うと、隣で寝たりはしなかった、という可能性のが高そうな気がする。
 もっと年齢差が少なかったら、こちらが学生ではなく社会人だったら。あれは、そう期待しそうになる断り文句だと思う。
 つまりは、それなりに効いていたってことじゃないのか?
 だったらいいな、と思いながら、ようやく身を起こしてベッドを降りた。閉じた扉の先で人の動く気配がしているから、相手はとっくに目覚めている。
「おはよ、ございます」
 人の動く気配がはっきりとしていたのは、相手がキッチンで動き回っていたせいだ。どうやら朝食を準備中らしい。
「はよ。よく眠れたか? 体調どうだ?」
「ちょっと頭痛いくらい」
「朝飯食えそう?」
「食べる」
「りょーかい」
 タイミングよく起きてきたなと言われながら、あっという間に出来上がった朝食を一緒に食べる。
「昨日、どこで寝たの?」
「ソファ」
 あっさり返された答えに、やっぱり、と思う。やっぱり、とは思うものの、マジで、という気持ちもあれば、申し訳ないことをしたような罪悪感もある。
「小さすぎない?」
「ベッドお前に貸したんだからしょーがねぇだろ」
「ベッド、一緒に使えばよかったじゃん」
 言えば相手の動きが止まった。

続きます

 
 
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