「ごめんって何が。てか俺こそごめん。俺に知られたくなかったんだよな?」
当初の予定と違う行動をしたのはこちらだ。
「あの、もしこれ続けたくて、俺が邪魔なら、どっか出かけて時間つぶしてくるけど……」
躊躇われる、と思っていても結局聞かずには居られなかった。けれど相手の手が伸びてきて服の裾を握られ、やっぱり絞り出すみたいな声で嫌だと言って首を横に振られた。
「なら、俺と続き、する? 俺が抱くんでも、いい?」
相手から誘ってくれる気は皆無と思ったけれど、服の裾を掴んで引き止めたってのは、つまりお誘いってことだろう。それでも一応確認を取れば、今度は首が縦に振られて、してと短な声が返った。
ホッとしながらベッドの端に腰をおろして、未だ気まずそうに俯く相手の頬に手を伸ばす。
「変なとこ踏み込まれて恥ずかしいのわかるけど、ちゃんと顔見たい」
むりやり顔を上げさせることはせず、相手から顔を上げてくれるのを待った。そう待たされることなく上げられた顔は、やっぱり少し赤みが強くて瞳の水分量が多い。顔を寄せて、まずはその目の縁に唇で触れた。
交互に目元に触れた後、そっと塞いだ唇は微かに震えていて、相手のいたたまれなさがこちらにまで伝染してくる。なんだか悪いことをしているみたいだ。というか、相手を抱くのは初めてではないのに、反応が随分と初々しくて戸惑う。
「なぁ、さっきの『ごめん』って、なに?」
「う、……ぁ……それ、聞くの……?」
「いやだって、今日のお前、なんかすごく変だし」
「そ、れは……」
「それは?」
「えっと、あの、俺、今、ヒート来てる設定で……」
「ん?」
「だから、その、Ωの……」
「えー、っと、発情期?」
「そう」
待て待て待て。と出掛かる声をなんとか飲み込んだ。いやちょっと想定外すぎる単語が飛び出てきて、全く意味がわからない。
オメガバースは自分たちの関係に深く関わっているから、アルファだオメガだのを意識した言動はお互い今でも時折出てしまうけれど、相手に発情期が訪れている設定で抱いたのは初めての時だけだ。
発情期は来てないのか聞いたら、ちゃんと抑制剤飲んでるからと言って躱されたことがあって、でも本当の理由は、普通にしたって相手の方が射精回数が多くなるようなセックスなのに、精力剤なんて飲んでやってられないってだけだった。一人だけ興奮して惨めで恥ずかしい、という思いをさせたわけじゃないなら別にいい。こっちだって、わざわざ相手の負担が増えるようなことをしたいわけじゃない。
「あー……つまり、精力剤飲んでるってこと?」
「うっ……まぁ、そう」
「それ、なんで、って聞いていいとこ?」
「良くないって言ったら聞かないでくれんの?」
「いや知りたい。無理」
「だよね。でもちょっと気持ち盛り上げたいな、くらいの軽い気持ちで、お前がいないなら大丈夫だと思って」
「俺がいると大丈夫じゃないわけ?」
「そりゃ、だって、お前にされたら何も飲まなくたって興奮するのに、そこに上乗せする形になるんだから、大丈夫じゃなくなるだろ」
何を当たり前のことを、みたいな言い方をされたけれど初耳だ。というかさらっと結構凄いことを言われた気がする。
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