オメガバースごっこ(目次)

キャラ名ありません。全17話。
ここがオメガバースの世界ならの続編です。
・双方が両想いに気づくこと
・ヒート(発情期)
・巣作り
以上3つのネタを消化したかっただけのオマケ小話の予定でしたが、気づけば本編とほぼ同じ長さに。

高校を卒業し、同じ大学に進学すると同時に同棲開始しました。
体を繋げる関係に進展してますが、性的な描写を入れるとダラダラと長くなるのがわかりきっているので、R18描写はありません。

下記タイトルは内容に合わせたものを適当に付けてあります。
視点が途中で何度か交代しているので、タイトル横に(受)(攻)を記載しています。

1 姉からの電話(攻)
2 姉の心配事(攻)
3 呆れ返ったメッセージ(受)
4 こじれてしまう前に(受)
5 クリスマスお家デート(受)
6 受験前に抱いて欲しい(受)
7 発情期っぽい体(受)
8 応じたいけど応じたくない(攻)
9 番の発情期(攻)
10 同棲してるはずなのに(受)
11 予定変更の帰宅(攻)
12 ヒートが来てる ” 設定 ”(攻)
13 番として今やるべきこと(攻)
14 巣作りに気づかれてた(受)
15 ぶっちゃけ話(受)
16 巣作り理由(受)
17 これから先のが断然長い(受)

 
 
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オメガバースごっこ17(終)

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「オメガって健気だよな」
「へ?」
 この言い方からすると、自分の行いへの評価ではなく、Ωという存在に対する感想に思えるのだけれど。まさかの発言に思わず間の抜けた声が出てしまった。
「番が作った巣みて、愛しさが増すアルファの気持ちはわかる気がする」
「そ、そう?」
「てわけで、今後巣作り見つけたら、俺も上手にできてるって褒めることにする」
「ちょ、待って。何その結論」
 意味がわからなすぎて、くっついていた体を離して相手の顔をまじまじと見てしまう。相手はいい案だと言わんばかりに、満足げな顔をしていた。どうやら本気っぽいことはわかる。
「てか見つからない想定で作ったんだけど。もし次があるとしても、今度こそ見つからないように作るから」
「それはダメ。てかお前、抑制剤効いてるとか言うの止めて、定期的に発情期くるようにしねぇ?」
「は? はぁああ?」
「ドリンク剤飲むかはお前に任せるけど、俺としては、興奮しすぎて大丈夫じゃなくなって、俺のこと求めまくるお前見るのは好き。とは言っとくわ」
「ちょ、ずるい。てか本気、で?」
 本気なんだろうとは思うのに、確かめずには居られなかった。
「本気。お前はもっと素直に俺を求めるべき。それと、」
 意味深に言葉を区切るから、なんだか緊張してしまう。これ以上、いったい何を言われるんだろう。
「俺も、お前が求められて平気な頻度は知りたいと思ってる」
「頻度? Ωのヒートは3ヶ月に1回って設定が多いイメージだけど?」
 頻度という部分と直前に話していた定期的な発情期の話が結びついて、ついΩのヒート間隔について口にしてしまったが、どうやら違ったらしい。
「じゃなくて、俺が、お前を抱きたいって言っていい頻度。どれくらいなら、お前の負担にならずに済む?」
 呆れずに付き合ってくれる頻度じゃなくて、体の負担について知りたいのだと言われて、そういやさっき、相手が呆れずに付き合ってくれる頻度が知りたいと言ったことを思い出す。
「え、それは、考えたことなかった、かも」
 もっと抱いて欲しいなと思いはしたが、これくらいの頻度で求められたい、なんてことを考えたことはない。当然、自分の体がどの程度なら大丈夫なのかも、考えたりしなかった。
「一緒に住むようになったら毎晩のように求められるのかな、みたいに思ってたことはあって、でもそんなこと全然なくて、俺ばっか期待してたのかと思って悲しかったけど、確かに、そんなに求められたら俺の体が持たないよね。そ、っか……俺の体の負担……」
 求められる頻度が上がれば自分の体の負担が増える、という当たり前のことを考えていなかったと知って、相手が呆れたようなため息を吐いている。
「お前さっき、俺より性欲強いかもとかなんとか言ってたけど、多分そんな事は一切ねぇから。突っ込むまでするとなると、お前の体に負担掛かるし、準備だ後始末だでけっこう時間食うだろ。でも一緒に暮らすようになったら、抜き合いで終わらせられる自信が全くなくなって、俺、実家にいる頃と変わんない頻度でオナニーしてっから。お前のこと抱く回数は増えてんのに、オナニー回数減ってないから」
「は? ナニソレ。はぁあ? ちょ、初耳なんだけど」
「俺がオナニーしまくってるとか知ったら、お前、体キツくても抱いていいとか言いそうで」
「うっ、それは、言うかも、だけど。でも、多分俺、そんなに求められたら、体辛いより先に、きっと嬉しいって思うよ?」
「だーから、それわかってっから、教えられなかったって話だっての」
「なんで!?」
「これから先のが断然長いからだ。嬉しくても体に無理させたらダメなんだって」
 これから先のが断然長い、という言葉に、またしてもじわりと涙が滲み始める。
 第二性なんかなくて、番なんてシステムもないのに。その番だって、αからなら解消できるという設定が大半なのに。
 オメガバースなんてない世界で番を持っているのも悪くない、と言った相手は、きっと生涯を共にしようと思ってくれている。
「また泣くのか」
 少し呆れた口調だけれど、滲む涙を拭ってくれる仕草はやはり優しい。
「だってぇ」
 嬉しいんだと訴えれば、嬉しそうに笑った相手の顔が近づいてくる。

<終>

最後までお付き合いありがとうございました。
近日中に目次ページを作るつもりですが、次のお話の更新は8/26(金)からを予定しています。

 
 
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オメガバースごっこ16

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「正直、調べてもよくわかんないんだよ、オメガの巣作り。まぁ巣作りに限らずオメガバースって作品による独自設定的なの多かったし、巣作り扱う作品少なかったし、しょうがないんだろうけど」
 ヒート中、もしくはヒートが近いオメガが、アルファの匂いを求めて集めたもので作りあげるもの、以外の要素についてはお前から聞かなきゃわからない。と続いた言葉に、どれだけ巣作りの理由を知りたがっているかを察してしまう。なんでそこまで、とは思うけれど。
「それ、そんなに重要なこと?」
「多分」
「多分?」
 そこまでしつこく気にするのに、多分、という曖昧な返答をされて少し驚いたけれど、どうやら過去に読んだ何かに引っかかりを覚えているらしい。
「作品名どころか内容もあんましっかり思い出せないけど、巣の中で発情期に苦しんでるオメガがいたんだよ」
「だって苦しさを緩和するための巣、でしょ?」
 巣の中でヒートに苦しんでる描写があっても、そんなに違和感があるとは思えなかった。
「そ、だけど。でもそーいうんじゃなくて。なんかオメガまじ不憫、って思うような、可哀想な状況で巣作りしてたような気がして、でもその肝心なとこが全く思い出せないし、検索してもうまく見つからないし。だからお前が、何考えてこれ作ったのか、俺に抱いてくれって言えなくて、というのがなんでこっそり巣作りになるのか、理由、はっきりさせときたくて」
 お前の中では明確に何か意味があってやってんだろ、という指摘に、ないなんて言えっこない。そしてこんなに自分を気遣ってくれる相手に、相談もせずにこそこそと巣作りして、抱いて貰えない切なさに浸っていた自分が恥ずかしくなる。もともとあった、相手への申し訳ない気持ちが膨らんでしまう。
「俺、お前好きになって、本当に良かった。お前が俺を恋人にしてくれて、本当に、良かった」
 さっき謝られたいわけじゃないと言われたので、ごめんの代わりに喜びを伝えてみたのだけれど、膨らんだ想いが胸を締め付けてじわりと涙が滲んいく。
「それさっきも言ってたな」
 小さく笑いながら、そっと滲む涙を拭ってくれる。
「俺も、お前好きになってよかったと思ってるし、さっさと恋人って形でお前を俺に縛り付けたのを良かったって言ってもらえんのは、ホッとするよ。ついでに言うなら、お前が腐男子で良かったとも思ってるし、オメガバースなんて無い世界で番を持ってるのも、悪くないって思ってる」
 せっかく涙を拭ってもらったのに、その言葉でまた胸が詰まってしまう。次々と溢れてしまう涙に埒が明かないと思われたのか、すぐにギュッと抱きしめられてしまった。
「うぅっ好きぃ」
「俺も好き」
 相手の胸の中、泣きながら伝えた想いには、やはりすぐさま同じ想いが返される。何度かそれを繰り返している内に、次第に涙ではなく笑いが溢れだす。当然、相手からも笑いを含んだ好きが帰ってくる。
「あのね」
「おう」
 顔は上げないまま告げれば、相手も何かを察したらしい。クスクスと笑い合う浮ついた雰囲気が消えて、真面目な話をするための空気になった。
「俺、お前に片想いしてた時期、けっこう長かったろ」
 前に中学生の頃から好きだったと伝えたことがあるので、相手もそれはわかっている。
「そうだな」
「お前と番になってからも、そこそこの期間片想いだったから、俺が巣作りの真似事してたのってその頃で、番のαに抱いて貰えないΩになりきってお前の私物握りながら自分慰めてたわけ。で、そういう経験があったから、お前にもっと抱いて欲しいって言えなくて一人で勝手に苦しくなってる今の状況に被ったと言うか、お前に抱かれたいって思いながら一人でするのには巣を作りたかったっていうか、そういう感じ」
 言い切って一つ息を吐いた。これを聞いて、相手は何を思うんだろう。

続きました→

 
 
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オメガバースごっこ15

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「どうして、って……」
 本当には発情期なんて来ない身である以上、彼がいない日を狙っての自慰行為だったのは明白だけど、見つかる想定がなかったので言い訳だって考えていない。
「そういや何がゴメンだったのかも聞きそびれてんだけど。もしかしてこの巣作りと関係してる?」
 勝手に服とか小物とか持ち出してゴメンって意味だった? と続いた言葉に、そうだと頷くことは出来なかった。だって、絶対違うだろって確信してる。
 ちょっとくらいはそういう気持ちも混ざってのゴメンだったんだけど。ただ実際には、一人で欲求不満を持て余してる、という事実が単純に申し訳ないなって気持ちが大きかった。
 ちゃんと恋人になったのに、抱いて貰えない切なさに浸って一人で処理する、というのが、なんとなく相手への裏切り行為のように感じている。もっと頻繁に抱いて欲しいとねだったら、きっと叶えてくれるだろうと思ってもいるから尚更だ。
「お前がいるのに、一人でしようとして、ごめん……みたいな。あと、お前の物、勝手に持ち出したのも、ゴメンって思ってる、よ」
「一人でするのが好きで、俺が居ない日狙ってた。ってわけじゃないんだよな?」
「うん」
「俺を直接誘おうとは思わなかった理由って何?」
「それは、誘ったら付き合ってくれるとは思ったけど、でも、言い出しにくくて……」
「だからそれはなんでだよ」
 自分から誘う前に相手が手を出してくれることが多いけれど、自分から誘ったこともなくはない。でも、何の躊躇いもなく誘えていたと思わないで欲しい。
「なぁ、俺だって、お前がしたいって思ったときには誘って欲しんだけど?」
「そ、れは、……だから、ごめん、って」
「だーからっ! 俺も、謝られたいわけじゃないんだっつの。てかもしかして、一緒に住んでるからこそ誘うタイミングが難しい、みたいな話?」
「そういうのとはちょっと違う。でも、どれくらいの頻度なら、お前が呆れずに付き合ってくれるのか知りたい、とは思う」
「頻度?」
「もうさ、ぶっちゃけて言うけど」
 これもう相手が納得行くまで追求が止まないな、と思ってしまって、仕方なく口を開いた。
 さっきはこちらの欲を優先して抱いてくれたけれど、それだって、聞きたいことは後回しにして色々飲み込んでたってだけなんだろう。だから今度はこちらが相手の求めに応じなくちゃいけない。
「恥ずかしい話、俺、お前より性欲強いのかもで」
「は?」
 突然何を言い出したと言いたげに驚かれたけど、いいから聞いてと黙らせる。
「お前が誘ってくれるのすげー待ってることあるし、俺から誘うのも、どれくらい期間開けたら怪しまれないか考えて誘ってんだよね。だってお前に淫乱とかはしたないとか思われたくないし、誘って断られたらと思うと怖いし、あんまり頻繁にねだって呆れられたり飽きられたりも怖いし。なら、お前にばれないように一人で解消するしかないじゃん。巣作りしたのは、一人でするのに都合が良かったから、だよ」
「色々言いたいことがありすぎんだけど、巣作りが都合いいって、どんなとこが?」
「うぅっ……」
 まず聞くのがそこなのかと思って、小さく唸った。

続きました→

 
 
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オメガバースごっこ14

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※ ここから受けの視点になります

 意識が浮上してまず目に入ったのは相手の背中だった。ベッドのふちに腰掛けて、手元の携帯を弄っているようだ。
 その背を見ながら、いつ寝たんだろうと思う。確かに抱かれた後はだいたいいつも疲れ切っていて、簡単に後始末を終えたら寝てしまうことが多いけれど、今回は終えた記憶もなければ、後始末をした記憶もない。
 つまり抱き潰されたってこと?
 欲求不満からの自慰行為にドリンク剤を利用したせいで、とんでもないことになった。いつ寝落ちたかはわからなくても、相手を求めまくった記憶はしっかりあって、なんとも恥ずかしい。
 だってまさか、あんなに早く帰宅するなんて思ってなかった。でも同時に、酷く満たされてもいた。
 自分の作った巣の中に番のαが来てくれる、という幸せを擬似的に体験したせいだ。
 発情期に相手を求めるあまり、相手の匂いを少しでも感じたくて相手の私物を積み上げて作るのが巣、という認識なのだけれど、相手と恋人として付き合ってから作ったのは初めてだから、当然、過去に作った巣に相手が来てくれたことはない。今回だって、相手が帰宅するなんて想定はなかったし、ドリンク剤を飲むことで、相手のことを想いながら辛いヒートを耐えるという状況を強化してもいた。
 相手に抱かれる幸せを知った後だから、それくらいしないと、お尻を使った自慰行為に没頭できそうになかったからだ。
 さすがに巣作りには気付かなかったようだけど、でも、ヒートが来てる設定でドリンク剤を飲んだと聞いた相手は、抑制剤が効かずに久々に酷い発情期が来てしまった番のΩをケアするαとして、即座に対応してくれた。相変わらず察しがいいというか、第二性のある世界ならマジで絶対αだよなと思わずにいられない。
 そんな設定を当たり前に受け入れ応じてくれる男が今は自分の恋人、という幸せを噛みしめる。
「お前が俺の恋人で、本当に良かった」
 相手の背中に向かって投げた呟きは無事に拾われて、相手が振り向いた。
「起きたのか」
「ん。どれくらい落ちてた?」
 のそりと体を起こすのを、サッと伸びてきた手が支えてくれる。疲れ切った体を気遣ってのことだろう。起き上がった後も、安堵と心配を混ぜたような顔で、こちらの様子を確認している。
「1時間位」
 聞いたのは自分だが、抱き潰されて意識を落としたのが初めてだから、それが長いのか短いのか判別がつかない。ということに、時間を聞いてから気づいた。
「で、お前は1時間も何してたの? もしかして心配掛けた?」
「疲れ切って寝落ちただけと思ってたから、特に心配はしてないけど。お前の体拭いて、片付けして、今はオメガの巣作り検索掛けてた」
「巣作り!?」
 気付かれていないと思っていたので、相手の口からこぼれた単語に盛大に反応してしまった。
「巣作りしてたんだろ、これ」
 ぽんぽんと相手が叩いたのは、相手の腰の横に畳まれて積まれている服類だ。それらが相手の私服だということには、きっとすぐに気づいただろう。
 なるほど、そこからΩの巣作りへたどり着いてしまったのか……
「上手に作れたな、って褒めてやるべきだった?」
「へ?」
「でもこれ、俺に見つからない前提で、作ってたんだよな?」
 どうして巣作りなんかしてたの、と尋ねてくる顔は少し怖いくらいに真剣だった。

続きました→

 
 
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オメガバースごっこ13

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「今までも、一人でする時に飲んでたこと、あんの?」
「お前と初めてする前に、試したことはあったけど。でもその1回と、初めてしたときの1回と、今日、だけ。っていうか、俺もこんなことするのは本当に久々で……」
 困ったと言わんばかりに眉尻を下げて、そのくせ無理矢理に笑顔を浮かべながら、吐き出すため息が震えていた。こうして話している間も、相手の体は興奮しきっていて辛いのかも知れない。抱いて欲しいと突撃してきたあの日の様子に似ている。
「久々って……」
 まさかオナニー頻度の話ではないだろうから、お尻を弄るアナニーがって意味だろうか。
「だってお前が居たから。付き合って、抱いて貰うようになって、だからまさか、今更こんなことにしてるの俺もおかしいって思うけど、でも我慢できなくて、本当に、ごめん……」
「待て待て待て。なんで謝られてるのかわかんねぇんだけど」
 今度はたまらず口に出した。謝られてる意味もわからないが、我慢できなくてって言葉もなんだか不穏すぎる。
「俺、お前になんか我慢させてた?」
「我慢、っていうか、俺が……俺の体が……」
 あ、と思ったときには相手の目からボロボロっと涙がこぼれ落ちていて、ますます気持ちばかりが焦っていく。何かやらかしているっぽいのに、いったい何をやらかしたのか、相手の言葉から推察できない。
 どうしたらいいんだと思いながらも、泣いている相手を前にしたら、抱きしめずにはいられなかった。
 腕の中で震える体も、相手が吐き出す息も、熱い。
「お、願い。も、はやく、抱いて……」
 ドリンク剤で強制的に興奮している相手の行為を中断させていたのだ。しかも、自分が側にいるせいで、余計に相手の興奮を煽っている可能性がある。
 いまいち会話が成立しないと言うか、相手の言葉が上手く飲み込めないのも、相手がこんな状態だからかも知れない。
「わかった。普段抑制剤効いてるから、発情期、久々だもんな。お前がツラいの気づいてやれなくて、俺こそゴメンな」
 ヒートが来てる設定だっていうなら、その設定に乗っておこうと思った。
 相手はいま発情中で、番のアルファを求めてやまないのだ。だったら番のアルファとして、やるべきことは決まっている。
 そんなこちらの態度に、相手は安心した様子でふにゃりと笑みを返してきたから、間違っていないという確信を持って相手の体をベッドの上に押し倒した。


 初めてのときと違って抱き慣れてきたことと、ドリンク剤効果か相手の興奮が長引いたこととで、いつも以上にやりすぎてしまった。疲れ切って寝落ちた相手の顔が、満足げなことだけが救いだ。
 相手の体をある程度清めてやった後、気持ち的にはその隣に潜り込んで一緒に眠りたいところをこらえて、ベッドの上に散らかっていた布類や小物類を片付ける。それらが何であるのかは、行為の最中に気づいていた。
 時折思い出したようにそれらを握ったり、布類に顔を埋めたりしていたので、気になるのは当然だったし、それが自分の私物だとわかってしまった後は、目の前で幸せそうにそんな真似をしている相手に煽られまくったのだって仕方がないと思う。当然これも、やりすぎた原因の一端になっている。
 しかも、それに気づいてから先、何かが頭の隅に引っかかっても居た。相手が何をしているのか、その行為に何の意味があるのか、知っているような気がする。
 多分、オメガバース関連。とまでは想像できたが、それなりに読んだとは言ってもすぐに思い当たる何かはない。
 なので、埒が明かないと姉に電話をかけてみた。オメガがアルファの私物をベッドに並べる現象ってなんだっけと聞いたら、思った通りにあっさり答えが返される。
『巣作りでしょ』
「あー……あったな、そんなの」
 そこまで頻繁に出てきたわけじゃないが、確かに「巣作り」という現象があったのを思い出した。

続きました→

 
 
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