オメガバースごっこ14

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※ ここから受けの視点になります

 意識が浮上してまず目に入ったのは相手の背中だった。ベッドのふちに腰掛けて、手元の携帯を弄っているようだ。
 その背を見ながら、いつ寝たんだろうと思う。確かに抱かれた後はだいたいいつも疲れ切っていて、簡単に後始末を終えたら寝てしまうことが多いけれど、今回は終えた記憶もなければ、後始末をした記憶もない。
 つまり抱き潰されたってこと?
 欲求不満からの自慰行為にドリンク剤を利用したせいで、とんでもないことになった。いつ寝落ちたかはわからなくても、相手を求めまくった記憶はしっかりあって、なんとも恥ずかしい。
 だってまさか、あんなに早く帰宅するなんて思ってなかった。でも同時に、酷く満たされてもいた。
 自分の作った巣の中に番のαが来てくれる、という幸せを擬似的に体験したせいだ。
 発情期に相手を求めるあまり、相手の匂いを少しでも感じたくて相手の私物を積み上げて作るのが巣、という認識なのだけれど、相手と恋人として付き合ってから作ったのは初めてだから、当然、過去に作った巣に相手が来てくれたことはない。今回だって、相手が帰宅するなんて想定はなかったし、ドリンク剤を飲むことで、相手のことを想いながら辛いヒートを耐えるという状況を強化してもいた。
 相手に抱かれる幸せを知った後だから、それくらいしないと、お尻を使った自慰行為に没頭できそうになかったからだ。
 さすがに巣作りには気付かなかったようだけど、でも、ヒートが来てる設定でドリンク剤を飲んだと聞いた相手は、抑制剤が効かずに久々に酷い発情期が来てしまった番のΩをケアするαとして、即座に対応してくれた。相変わらず察しがいいというか、第二性のある世界ならマジで絶対αだよなと思わずにいられない。
 そんな設定を当たり前に受け入れ応じてくれる男が今は自分の恋人、という幸せを噛みしめる。
「お前が俺の恋人で、本当に良かった」
 相手の背中に向かって投げた呟きは無事に拾われて、相手が振り向いた。
「起きたのか」
「ん。どれくらい落ちてた?」
 のそりと体を起こすのを、サッと伸びてきた手が支えてくれる。疲れ切った体を気遣ってのことだろう。起き上がった後も、安堵と心配を混ぜたような顔で、こちらの様子を確認している。
「1時間位」
 聞いたのは自分だが、抱き潰されて意識を落としたのが初めてだから、それが長いのか短いのか判別がつかない。ということに、時間を聞いてから気づいた。
「で、お前は1時間も何してたの? もしかして心配掛けた?」
「疲れ切って寝落ちただけと思ってたから、特に心配はしてないけど。お前の体拭いて、片付けして、今はオメガの巣作り検索掛けてた」
「巣作り!?」
 気付かれていないと思っていたので、相手の口からこぼれた単語に盛大に反応してしまった。
「巣作りしてたんだろ、これ」
 ぽんぽんと相手が叩いたのは、相手の腰の横に畳まれて積まれている服類だ。それらが相手の私服だということには、きっとすぐに気づいただろう。
 なるほど、そこからΩの巣作りへたどり着いてしまったのか……
「上手に作れたな、って褒めてやるべきだった?」
「へ?」
「でもこれ、俺に見つからない前提で、作ってたんだよな?」
 どうして巣作りなんかしてたの、と尋ねてくる顔は少し怖いくらいに真剣だった。

続きました→

 
 
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