恋人になって好きだと言い合って、ただただ互いの性器を扱きあって抜くだけだった行為は、キスや愛撫や睦言が加わって随分と甘やかに変化したけれど、それだけだった。当然のようにそれ以上の関係も求められると思っていたので、正直違和感が強いのだけれど、女の子としか交際してこなかった相手に抱いて欲しいと自分からねだる勇気はない。
それでも会話の端々からこちらの不安とか不満とかは伝わったようで、なぜか同じ大学を目指すことになり、入学後はルームシェアという名の同棲を始めるという方向で、ルームシェアに関しては既に双方の親の了承を取得済みだった。
どうやら彼の中では、今以上の行為は卒業後に一緒の生活を始めてから、という認識になっているらしい。相手の両親は仕事が忙しく、今だって相手の家で二人きりになれる時間は充分すぎるほどあるのに、なぜ卒業後なのかがわからない。ついでに言うと、一緒に暮らし始めてから、やっぱり抱くのは無理と言われる可能性に恐怖しても居る。
いくらBLを読むようになって男相手も有りという認識に変わったって、物語と現実が違うのはわかっているし、女性の体を知っている相手が、リアルの男相手にどこまでする気になれるのかわからないから怖い。しかも相手のBL知識の多くはオメガバース関連で、Ωの体はかなり特殊だ。
お前が本当に番のΩなら良かった、という言葉の中に、結婚したり子供を作ったりが可能だからという意味はないと言っていたけれど、発情期には勝手に濡れて抱かれることを欲する体になる辺り、抱く側になる男からすれば女性以上に便利な穴に思えるんじゃないだろうか。少なくとも、ローションなどを使ってしっかり拡げないと入らない、自分のお尻の穴とは完全に別物だろう。
同じ大学に入学するという目標を掲げて相手は受験に身を入れ始め、抜きあう行為も少しずつ減っているから、同じように受験に身を入れなければと思うほどに焦っていく。
だから、最近勉強一色だけどクリスマスくらいは恋人っぽいことしようぜ、という誘いを貰った時に、勇気がないなどと言ってずるずる先延ばしにするのを止めた。つまりは、抱いて欲しいと自分からお願いすることにした。
拒否されたら当然ルームシェアは見直すつもりだし、いっそ、同じ大学に進学することから考え直した方が良いかも知れない。
相手にとっての恋人っぽいクリスマスは、クリスマスを理由に部屋にこもってエロいことをする誘いではなかったようで、どうやら屋外デートの誘いだったらしい。付き合う前も後も、デートらしいデートはしたことがないというか、デートをするぞと言って出かけた経験がなかったので、それはそれですごく魅力的ではあったけれど、受験でなかなか時間が取れないからこそ、二人きりでゆっくり過ごしたいとお願いすれば相手はあっさり了解してくれたし、その意図を汲み取って抜きあう気にはなっていたようだった。更に言うなら、相手の家で過ごしたいという申し出に、久々に手料理を振る舞う気だとも思っていたようだ。
彼が入院を終えて自宅療養をしていた頃は、買い物袋を下げて訪れることが多かったからだろう。鞄一つで訪れたことに不思議そうにした後、一緒に買い物に行くってことかと聞いてきた。
ゆるく首を振って多分そんな余裕はないと言えば、不思議そうにしていた顔が少し歪んで、何を考えていると幾分低くなった声で問われてしまう。
こちらの様子の怪しさが、さっそくバレているらしい。
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