親父のものだと思ってた26

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 どれくらい先になるかわからないと言われた「いつか」は、思っていたより早く来た。リハビリ成功と言っていたし、躊躇う理由や怯える理由が減って残るのは、恋人ともっとエロいことがしたい欲求だってのは想像に難しくない。色々抱えて慣れるのに時間が掛かるってだけで、結構しっかり興味があるのは元々わかっていたことだ。
 ただまぁ、年齢や経験の無さやらを気にしているのも、自身の体にまったく自信が持てないらしいのも事実らしく、もっと言えば、子供の頃から知ってるどころか、半ば成長を見守ってきたような年下の男相手に、自分の体の開発を任せる気にはならなかったらしい。
 ついでに、抱かれることを了承するのと主導権を明け渡すのは別、とかも思っているかも知れない。
 つまり、「いつか」は思っていたよりも早く来たが、想像していた展開とは全く違った。
「なぁ、今日、場所変えていい?」
 いつもどおりの週末、ソファに座って数回キスを繰り返しただけの段階でそう切り出された時はまだ、ただ期待が膨らむだけだったのだけれど。
「どこに? てか変える場所なんてどっちかの部屋しかないけど」
 部屋に入れてくれるのかと聞けばすぐに肯定が返ったから、相手に先へ進む意志があるのだと思って、内心浮かれまくってたのに。まぁ、先へ進む意志がある、の部分は間違いではないか。
「抱かれる覚悟できてきたから、今日ちょっと挿れてみるの試したいんだよね」
「え? なんて?」
「抱かれるの、試してみたい」
「うん、それは俺も嬉しいけど、でもなんか言い方が引っかかったっていうか……」
「とりあえず移動しないか?」
 何が引っかかったか突き止める時間はなく、促されるまま相手の部屋へ行って、ベッドの上に準備万端に用意されていたローションやゴムの箱を見て、違和感が更に増した。
 引き寄せられるようにそのローションを手に取り、半分ほど減って居るのを確認した後、コンドームの箱を取り上げる。そちらも当然のように開封済みで、中身は少し減っているようだ。
「ねぇ、もしかしなくても、俺の突っ込めそうなくらいに自己開発、した?」
 ゴムの箱を手に相手をまっすぐに見つめて問えば、気まずそうに視線をそらされたから、こちらが何を期待して裏切られたと感じているか、多分相手に伝わっている。
「した」
「ずるいっ!」
「ずるい、って言ったって……」
「そういうの、俺が、時間かけてゆっくり慣らしてあげたいって、思ってたよ?」
「でも俺だって譲れないとこはあるよ?」
 こちらがそう思ってたことは承知してて、でもそれは嫌だったから、勝手に自分で慣らしてしまったってことだ。
「恋人なのに? 相談もなしで?」
「だって相談したらお前、絶対に自分がやるって言ってきかないだろ」
「言うけど、無理強いまではしないよ?」
「お前に知られて進捗状況聞かれたり、本当は自分がやりたいのにって圧掛けられたりするの、考えただけでキツいんだって」
「一応聞くけど、抱かれる覚悟できたってのも、俺に抱かれる覚悟じゃなくて、俺のをお尻の穴に入れる覚悟ができただけ?」
 聞いてもピンとこないようで、何を聞かれたかわからない顔をしている。
「たとえば、俺だけちんこ弄られて気持ちよくなってた時みたいに、俺に勝手なことするなって言う? 寝そべってちんこ勃てとくだけでいいから、みたいな」
「あー……」
「言うんだ」
「そうして欲しい気持ちは、ある」
「やっぱり!」
「嫌か?」
「嫌に決まってんでしょ。てか俺、前にいくらだって待つって言ったよね? てわけで抱くの試すのなし。まずは俺に気持ちよくされるの、もっと慣れてからにしよう」
 せっかく部屋に入れてくれたし、ローションやらゴムやら準備してくれてるし、わざわざリビングに戻ることはしないけれど。でも相手にこの体を差し出して、自己開発した穴に上手に入るか試したい、なんてのに応じるつもりはなかった。だって相手が気にしてるのは主に年齢差で、多分こちらが主導権を握ってあれこれされることに不安やら抵抗感が強いだけで、深刻なトラウマを抱えているとかではないとわかっているのだから。

続きました→

 
 
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