「さっきまで、は、なかった」
「興奮してちんこ勃ったから、中も敏感になった感じじゃない?」
「なに、それぇ」
「てか、前立腺って気持ちよくなれる場所じゃないの?」
本当に気持ちよくない? と聞きながら、再度、指先に触れたままのしこりを撫でてやる。
「ふぁあっっ」
またビクビクっと体が震えて、ペニスの先から先走りが溢れてくるから、現象だけ見れば気持ちが良さそうなんだけど。というか、今のは声も結構気持ちが良さそうに聞こえたけど。
「もうちょっとだけ弄らせてよ」
「ぁ、でも」
「待ってって言われたらちゃんと止まるから、ね」
了承は返らなかったが、拒否もなかった。黙ってしまったということは、結局の所、許可が降りたってことだろう。
手の中のペニスにも意識を向けながら、強い刺激になりすぎないよう注意しつつ、ゆるゆるとその場所を撫で擦る。
「ぁ、……ぁあ……」
時折か細く漏れ出る声は気持ちが良さそうだし、中を擦る指と同じ速度でゆるゆると扱いている手の中のペニスは、大きく張り詰めて先走りを零し続けている。もう少し強く握って、扱く速度を上げたら、多分間違いなく射精すると思う。
コクリと自身の喉が鳴る。
だって、こちらからの一方的な奉仕で、相手だけを気持ちよくイカせた経験があまりに少ないのだ。こちらはさんざん相手に体を任せて、自分だけ気持ちよくしてもらったのに。
自分だけが気持ちよくイカされてしまう罪悪感とか羞恥心とかは身を持って知っているし、相手の興奮に煽られやすく、自分も早く気持ちよくなりたい欲を隠せないというか、それを見抜く相手に一緒に気持ちよくなろうと誘われたら断れるわけがないので、相手だけを先に気持ちよくイカせる経験が乏しい理由はわかっているし納得もしているんだけど。
「ね、イカせて、いい? てかイッて?」
発した声は緊張と期待とで少しかすれてしまった。
「ちんこ扱いたらイケるよね?」
「ぁ、ちょ、まっ」
言いながらペニスを握る手の圧を増やしたら、慌てた様子で待ったが掛かる。
「だめ?」
待ってとはっきり言われてはいないが、一度ちゃんと両手とも動きを止めて問いかけた。なし崩しに押し流せそうとも思わなくはないが、許可を取らずに追い詰めて「無理」を言われたくはないのだ。
「き、きもちくなれてる、んだけど」
「うん。だから、お尻イジられながらでも、今ならイケそうって思って」
「お前、挿れないの?」
ずっと枕に押し付けられていた頭が少し浮いて振り向いた。といっても視線は合わず、相手が見つめる先はどうやらこちらの股間だった。ちゃんと見えているかはわからないが、もちろん一切萎えずにバキバキだ。
「俺がお尻でアンアン出来たら挿れる、って、言ったろ」
「そ、だけど」
「じゃ、きてよ」
「ううっ……」
挿れたい気持ちとこのまま手でイカせたい気持ちとがぶつかって、唸るしか出来ない。
「抱けない、なら、ここまでに、する?」
「はぁ!?」
「だって、挿れたくない、んだろ?」
「何言ってんの。挿れたいに決まってんじゃん。でもこんな気持ちよさそうな穴に突っ込んだら、どこまでそっち気遣えるかわかんないっていうか、俺が気持ちよくなるばっかりで気持ちよくしてあげられないかもだから、先に一度気持ちよくしてあげたいっていうか、俺の手で気持ちよくイクとこ見たいっていうか、そういうのだよ?」
必死で言い募れば、何故か相手が笑い出す。ただ、動きを止めたとは言えお尻に指が入ったままだし、力は抜いているがペニスだって握ったままだ。
「はは、ぁあ、んっ」
自身の体の揺れで刺激されるのか、笑いながら喘いでいる。なんだこれ。
「ちょっとぉ」
「ん、ごめ」
「随分余裕あるみたいだし、やっぱ一回イッとこ? 俺の手で、気持ちよくアンアンしながら射精しよ?」
「お、前、だから、おっさんの体力舐め過ぎなんだ、って」
イカされた後に更に抱かれるとか無理、という訴えに、またしても唸ってしまう。
本当に体力やら持久力やらに問題があるかは微妙なとこだと思うけれど、それが事実かどうかはあまり関係がない。だって、無理って単語を使ったってことは、その流れは本気で嫌だという訴えだ。
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