「え、うそ、まじで買ったの? あれを?」
「冗談だったとか、言うなよ?」
ぶん殴りそうだからと物騒な言葉が続いたけれど、もちろん冗談だったなんて言うつもりはない。ただ、本気であれを用意するなんて、欠片も思っていなかっただけだ。
前回、風呂場からシンプルなXバックの下着一枚で出てきたこの男は、すげー勝負パンツ買ったんだと自慢げに見せびらかしてきたので、勝負パンツだってならこういうのを穿いてくれと、フリル満載なメンズ下着の通販ページを見せた記憶が確かにある。めっちゃ蔑むような視線をよこされ、変態だなって言われた記憶もだ。
彼が抱かれる側ではあるが、彼に女性的な要素は欠片もないどころか、どちらかといえば男らしいと言われるタイプなので、際どい下着でもスポーティーなものであればそう抵抗なく穿いてくれそうではある。社会人になっても筋トレを欠かさない彼には、そんな下着もきっと違和感なく似合うとも思う。
でもだからこそ、フリルに纏われた彼を見てみたいと思うし、きっと可愛いだろうなと思ってしまう。格好良い彼を見れる機会は多々あるけれど、可愛い彼が見れる機会というのは少ないので尚更だ。
格好良くてセクシーで可愛い恋人の、可愛いところを存分に可愛がりたい欲求を持つのは仕方がないと思う。だって可愛いんだから。
ただまぁ、絶対に嫌がられるのはわかっている。彼に向かって可愛いと躊躇いなく言うような人間が少なすぎて耐性がないのか、可愛いと言われるのは苦手らしい。
そんな彼に、可愛い下着を着けてくれだとか、その姿を可愛がらせてくれだなんて、言えるはずがないだろう。けれどメンズ下着にも可愛いフリル製品があると知ったときから、恋人のこの男に穿かせてみたいとずっと思っていた。
前回、勝負パンツだなんて言うから思わず願望がこぼれ出てしまったけれど、その願望が叶うなんてことは欠片だって思っていなかったのに。
「冗談だったなんて言うわけ無いだろ。すげーみたい。脱がしていい?」
「や、やだ!」
予想外すぎる出来事に、興奮を前面に出しすぎてしまっただろうか。だいぶ引き気味に断られてしまった。
「なんでよ。俺に見せるために着てくれたんだろ?」
「今めちゃくちゃ後悔してる。てかやっぱ着替えてくる」
「じゃあ俺も行く」
「は?」
「せめて着替えるとこだけでも見たい。てかお前の可愛い下着姿、絶対見たい」
「それじゃ意味ないだろ。やっぱ見られたくねぇって言ってんだっつの」
「だからなんでだよ。俺のために選んだ、俺を喜ばせるためのパンツだろ。俺に見せないでどーすんだ」
「そ、だけど、でもなんか、」
「でもなんか、なに?」
言うのを躊躇うような素振りに続きを促してやれば、渋々と言った様子で口を開く。
「なんか、お前が勝負パンツにすごい興奮してて、やだ。見る前からそんな興奮してて、見られてがっかりされるのも嫌だし、見られてもっと興奮されるのも、なんかやだ。あんなパンツにここまで興奮されんのかと思うと、なんか、悔しい」
「いやちょっと待って。え? パンツに嫉妬してんの?」
「だってお前がセックス前にこんなテンション上げてんの、珍しい」
「それはどっちかって言ったら、パンツじゃなくてお前が可愛いせいだよ。お前の可愛い下着姿に興奮するんであって、フリル付きパンツ単体に興奮できる性癖はさすがにないぞ」
「何言ってんだ? 俺が穿いたら萎える要素のが強いだろ? あんなパンツ、絶対似合ってないんだから、想像で興奮してんならがっかりするだけだぞ」
「いやいやいや。何言ってんのはお前の方だって。今現在、俺のために似合わないと思いながらフリルパンツ買って穿いて緊張してるお前、それだけでめっちゃ可愛いから。あと見ないままで断言するけど、絶対似合ってるから。絶対可愛いから。がっかりなんて絶対しないから」
「そこまで言うのかよ」
「言うよ。だって絶対可愛いもん。お前がこんな緊張してるってだけで、今、本当にあの日俺が見せたような、フリル付きのパンツ穿いてんだって信じられるからな」
どんなの買ったのか見てもいい? と尋ねれば、ようやく観念した様子で頷かれた。
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