せっかく荒れる気持ちを押さえつけて飲み込んだというのに、それをわざわざ引きずり出して語ってやる理由としては弱い。なのに、やだよと言えばなんでと返されるし、言いたくないと言えばますます知っておきたい気持ちになると返ってきた。
どうでも良くなった内容なら話せるはずだと諭されて、隠されれば隠されるほど、知られたらマズい何かを含んでいるのかと邪推することになるぞと脅されて、仕方なく口を開く。
「じゃあ言うけど、好きになってって言ったら好きになるのがわかってるなら、そっちの方が手っ取り早いのに、好きになってって言わずに好きになってくれるのを待つ理由がわからない。好きにならなかったら諦めがついちゃう程度の気持ちってことなの?」
「それは、」
「待って」
まだ続きがあるからと言えば、わかったと先を促される。
「そもそも、好きになってとは言われなかったけど、それに似たようなことはされたし、それに誘導されて好きって気持ちを育てたいって考えた気もするから、して欲しくなかったらしいことをしちゃってるんだよね。だとすると、言われなくても好きになったら嬉しいって気持ちは、当てはまらないかも知れない。そう思ったら、誘導されて好きになろうとした事実は、隠したほうがいいような気はしたよね」
邪推されるまでもなく、知られたらマズい何かは確か含んでいた。
「というわけで、ほら、やっぱ余計なこと知らないほうが良かったんじゃない?」
これでもまだ嬉しいと言ってくれるのか。彼を好きだと思う気持ちを育てることを許容して、いつか育った気持ちを喜びと共に受け取ってくれるのか。それを挑発するように笑いながら問いかけてやれば、少し嫌そうに顔をしかめながらも、言葉だけは嬉しいよと返ってくる。
「ちっとも嬉しそうな顔じゃないんですけど」
「これはお前にそんな顔させてる自己嫌悪が顔に出てるだけ」
「なにそれ」
「言葉通りだって。不安にさせて悪かったよ。引っかかったのそれだけなら、言い訳聞いて」
「言い訳、あるんだ」
「あるよ。聞いてお前が納得するかはわからないけど」
「それさっきも言ってたね。聞いたら納得はすると思うよ。あなたらしいとは思う、って意味で。さっきのだって、そういう意味ではちゃんと納得は出来てる。納得はしても、もっと早く知りたかったのにって気持ちはなくならないし、卒業前に好きって気持ちが育ってれば、好きと返らない相手を抱かせることもなかったし、苦しいばっかりだなんて言われるセックス、させずに済んだのにと思うし、それが出来てたら、そのままセックス続けられる関係だったかもって考えちゃう、ってだけで」
つらつらと重ねているのはこちらの不満でしか無いはずなのに、聞いていた彼の顔は少しずつ穏やかに解けていく。口を閉じればそうかと頷かれたけれど、声音も表情もだいぶ優しい。
「それなら尚更、お前もお前自身の気持ちを俺に話して、俺を納得させるべきなんだよ」
「どういう、意味?」
「俺のさっきの言い分に対するお前の不満だとか不安だとかは、今の話聞いて納得した。だから俺は今から、それを受け入れた上で、俺の話をお前にするよ。俺をもっと知って欲しいし、理解して欲しいし、納得を深めて欲しい、って気持ちでだ」
もちろんお前をもっと知りたいし、理解したいし、納得を深めたいとも思っていると続けた相手は、これをそういう話し合いの場にしたいのだと言った。
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