これを最後とするべきかどうか

* 別れの話です

 元々ねちっこいセックスをする相手ではあったけれど、今日はいつにも増して執拗で、前戯だけで既に2度ほど射精させられている。なのに未だ相手はアナルに埋めた指を抜こうとはせず、器用な指先で前立腺を中心に弱い場所を捏ね続けるから、早く挿れて欲しいとねだった。
「ね、も、欲しっ、お、おちんちんがいぃ、や、も、ゆびだけ、やぁ」
「指だけでも充分気持ちよくなれてるくせに」
 羞恥に身を焼きながら口にすれば、相手は満足げに口角を持ち上げたけれど、まだ挿入する気はないらしい。恥ずかしいセリフでねだらせたいのだと思っていたのに。
「もう2回もだしてるのにな」
 片手が腹の上に伸びて、そこに散って溜まった先走りやら精子やらを、肌に塗り込むみたいに手の平でかき混ぜる。ついでのように腹を押し込まれながら、中からぐっと前立腺を持ち上げられる刺激に、たまらずまた、ピュッとペニスの先端から何かしらの液体が溢れたのがわかって恥ずかしい。
「ぅあぁ」
「ほら、気持ちいい」
 クスクスと笑いながら、新たにこぼれたものも腹の上に伸ばされた。労るみたいな優しい撫で方だけど、一切気が抜けないどころか、また腹を押されるのではと不安で仕方がない。
「怯えてんの?」
 こちらの不安に気づいたらしい相手は、やはりどこか楽しげに口元に笑みを浮かべている。にやにやと、口元だけで笑っている。
 何かが変だ、と思った。しつこく責められることも、焦らされるのも、意地悪な物言いも、経験がある。でもいつもはもっとちゃんと楽しそうなのに。
 そういうプレイが好きってことも、そういうプレイを許すこちらへの好意も伝わってくるし、だから一緒に楽しめていた。
「ど、したの?」
「どうしたって?」
 思わず問いかけてしまえば、相手は全く疑問に思ってなさそうな顔と声音で問い返してくる。いつもと違うという自覚が、本人にもあるらしい。
「なんか、へん、だよ」
「そうか?」
 答えてくれる気がないことはすぐにわかった。腹の上に置かれたままだった手が、するっと降りて半勃ちのペニスを握ったからだ。
「やだやだやだぁ、な、なんでぇ、またイク、それ、またイッちゃうからぁ」
「イケよ。もう何も出ないってくらい搾りきったら抱いてやる」
「な、なに、それぇ……」
「わかるだろ。言葉通りだ」
「む、むり、やぁ、やだぁ、あ、あっ、だめ、あ、いくっ、いっちゃう」
「イケって」
 射精を促すように強く扱かれながら、アナルに埋めた指を素早く何度も前後されれば、あっという間に昇りつめる。
「でるっ、んんっっ」
 ギュッと目を閉じて快感の波をやりすごす間は、さすがに手を緩めてくれたけれど、それでも動きを止めてくれているわけじゃない。特にお尻の方は、お腹の中の蠢動を楽しむみたいに、ゆるゆると腸壁を擦っている。
「はぁ、っはぁ、も、やめっ」
 軽く息を整えてからどうにか絞りだした声に、相手が薄く笑うのがわかった。


 暴力でしかないような酷いセックスだった。言葉通り何も出なくなってから体を繋げて、泣きながら空イキを繰り返す羽目になって、いつの間にか意識が落ちて、目が冷めたら一人だった。
 テーブルの上には別れと今までの感謝とを伝える短なメッセージが残されていて、ああ、本当に終わりなのだと改めて思う。
 最後の方の記憶は少し曖昧だけれど、泣いて謝られたことは覚えている。相手の泣き顔なんて初めて見たから、あまりの衝撃に曖昧な記憶の中でもそれだけはかなり鮮明だ。
「くそっ」
 いろいろな憤りを小さく吐き出して、寝乱れた髪をさらに掻き毟ってボザボサにしてやる。
 追いかけたい気持ちと、このまま手を切るべきだと思う気持ちと。この仕打を許さないと思う気持ちと、許して相手の存在ごと忘れてやりたい気持ちと。
 どうしたいのか、どうするべきか、まずはじっくり考えなければと思った。

受けが追いかけちゃう続きはこちら→

有坂レイへの今夜のお題は『嘘のつけない涙 / 体液まみれ / 恥ずかしい台詞』です。https://shindanmaker.com/464476

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

夕方のカラオケで振られた君と

 自分がバイトするカラオケは、昼の11時半から19時半までの8時間が昼のフリータイムになっていて、2時間以上歌うのであればそちらが得になる料金設定になっている。
 その男性二人組は開店と同時にやって来て、片方の男が迷うことなくフリータイムで二人分の申し込みをした。
 彼の事は少しだけ知っている。近くの高校に通っている学生らしく、いつもは学校帰りの夕方に友人たちと歌っていく事が多い。
 同じく近くの大学に通い、夕方はだいたいバイトに入っている自分とは、遭遇率も高かった。だいたい4〜6人くらいでやって来るが、受付をするのは決まって彼なので、軽い世間話くらいはする事もある。
 その彼が、いつものメンバーとは全く雰囲気の違う、真面目で大人しそうな男を連れて来店したのが、まず驚きだった。しかも二人利用というのも、自分が知る限り初めてだ。
「学校は春休み?」
 大学はとっくに春休み期間で、だからこそ自分も平日のこんな時間からバイトに入っている。いつもは制服の彼も今日は私服だし、高校もどうやら春休みに入ったようだ。
 わかっていつつも、受付ついでに問いかける。
「あっ、はい」
 緊張と動揺と興奮とが滲む硬い声に、更に感じてしまう違和感。
「どうした?」
「えっ?」
「なんか、らしくないけど」
「あーまぁーちょっと」
 ごにょごにょと言葉を濁され、触れられたくないらしいと深追いはせず、伝票ホルダーにルームナンバーと利用人数と退室時間の記された紙を挟んで渡した。
 恋人だったりして。なんて事を部屋に向かう二人の背中を見送りながら思ってしまったのは、彼のツレに対する態度が明らかにいつもの友人たちに対するものとは違っていたからだ。気を使いつつも馴れ馴れしく、そのくせどこかぎこちない。
 彼らが恋人なら少し残念だなと思ってしまうのは、同性が恋愛対象な自分にとっては、時折訪れる彼が魅力的に映っていたからだ。それとも、彼も同類かもしれないと喜ぶべき場面なのだろうか?
 なんて事をつらつらと考えていたら、そのツレの男が、入店から1時間もしないうちにレジカウンター前にあらわれた。とはいってもこちらに用がある様子ではなく、どうやらそのまま帰るらしい。
「お帰りですか?」
「……はい」
 思わず声をかけてしまえば、彼は気まずそうに会釈して、そそくさと出入り口の扉を通って行ってしまった。
 その直後、彼らが入った部屋からの入電があり、何品ものフードメニューを注文された。ツレは帰ってしまったのに、どう考えても一人で食べる量じゃない。そうは思いながらも、注文が来た以上は次々と料理を作り運んでいく。
 最初に運んだ数品はすごい勢いで食べ尽くされて、次の料理を運ぶ時には空になった前の皿を下げるという調子だったが、さすがに途中からはテーブルの上に料理の皿が並んでいく。
 しかも部屋の空気は訪れるごとに重く沈んでいくようだった。
 ペースは落ちたものの変わらず黙々と料理を食べ続ける彼からは、いつもの明るさも楽しげな様子も一切抜け落ちている。必死に何かを耐えているようにも見えた。
 帰ってしまった彼と喧嘩でもしたのだろうか。しかし何があったかなど聞ける立場にはいない。
「あのっ!」
 注文された最後の料理を運び、部屋を出ようとしたところで呼び止められる。
「他にも何か?」
「いやその……これ、一緒に食べて、貰えないかなって……」
「はっ?」
 思わず漏れてしまった声に、相手はすまなさそうな顔で言葉を続ける。
「振られたからやけ食い。って思って頼んだけど、やっぱ頼みすぎだったから」
 振られたんだ!? と言う驚きと、そりゃこの量を一人で食べるのは無理だと頷く気持ちとが同時に押し寄せて言葉に詰まってしまったら、相手は泣きそうな顔を隠すように俯いて、ごめんなさいと言った。
「仕事中に無理言ってすみません。大丈夫なんで戻って下さい」
 少し震える硬い声に後ろ髪引かれつつも一度退室した後は、手すきの合間にバイト仲間に電話をかけまくった。
 ようやく急な代打を引き受けてくれる相手を見つけて、その相手が到着したのは既に夕刻だったが、幸い彼はまだ退室していない。
 慌てて着替えて向かう先はもちろん彼の居る部屋だ。
「お待たせ」
「えっ?」
「食べに来たよ」
「な、なんで?」
「一緒に食べてって誘ってくれたのそっちでしょ?」
 びっくり顔で目をぱちくりさせる様子はかわいいが、その目元は泣いたのか赤くなっている。
 遠慮なく彼の隣に腰を下ろし、その顔を覗き込むようにグッと顔を寄せた。
「泣いたの?」
 慌ててのけぞろうとするのを阻止するように腕を掴めば、ますます慌てたようだった。
「実は、チャンスだと思ってる」
「ちゃ、…ンス?」
「一緒に来てた男の子に振られたって事は、俺を好きになって貰える可能性、ゼロじゃないよね?」
「それ、って……」
 にっこり笑って頷いて、君が好きだと告げてみた。

有坂レイさんは、「夕方のカラオケ」で登場人物が「振られる」、「春」という単語を使ったお話を考えて下さい。
shindanmaker.com/28927

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

優しい笑顔が好きだった

 丁寧に慣らされたアナルは広がりきって、彼の大きなモノを飲み込み、時折グチュリチュプリと湿った音を響かせている。
「あっんアッ、んぃっ、いい、あぁっ」
 焦らすようにゆっくり腰を引かれると、ぞわりと背筋を駆け抜ける快楽に声が押さえられない。
「あっ……はっぁ……」
 ぎりぎりまで引きぬかれて一度動きが止まると、次の衝撃を待って息を整える。もちろん、相手は息が整うのを待ってくれるわけではない。
「ひああぁぁぁっ」
 突き抜ける快感。こちらのタイミングをわざと外して、抜かれる時の焦れったさとは逆に勢い良く突かれれば、漏れ出るのはもはや悲鳴に近い。
 何度か繰り返されてこちらがイきたくてたまらなくなる頃、彼はわざと全ての動きを止める。どうしようもなく刺激を求め、こちらが腰を揺すってしまうのを眺めるためだ。
 わかっていても、自ら腰を揺すって快楽を追うのは躊躇われて、無駄と知りつつ「お願い」と口にする。
「お願い、ね、もう、…いか、せて。動い、て」
 優しい笑みは残酷だ。もう少し楽しもうよなんて言われながら額に張り付く髪をそっと払われただけで、ビクビクと体が跳ねるほどの快感が走る。その痙攣で咥え込んだ彼を意識させられ、そうなるともうダメだった。抑えよう耐えようと思う気持ちを裏切って、体は刺激を求めて動き出してしまう。
「いやらしい体になったね」
 凄く可愛いよと満足気に笑う顔はひどく優しいのに、じわりと視界がぼやけていく。
「どうして泣くの?」
「だって」
「うんと焦らされる方が、ずっと気持良くなれるの知ってるよね?」
 意地悪してるわけじゃないんだよ。と苦笑される気配に、そうじゃないとは言えなかった。
 意地悪だなんて思ったことはない。関係をねだったのは自分で、彼は最初からずっと優しい。男に抱かれて感じられる体になりたい。そんなバカみたいなお願いを、断りきれなかったくらいに優しい人だ。
 彼にとって自分が恋愛対象外なことはわかっていて、それでもどうにか自分に目を向けて欲しくて無茶をした、という自覚はある。誤算は、ここまで自分の体が変わってしまうとは思わなかった点だ。
 一度だけのつもりが、彼の優しさに甘えてずるずると関係を続けてしまった結果がこれだ。
「今日…で、やめる」
 とうとう言った。ボロリと落ちていく涙は、やはり彼の指がやさしく拭っていく。
「それで泣いてるの?」
「だって、好きなんだ」
「だから最初に言ったのに。そんなことしたら情がわくよって」
 情なんて最初から持っている。むしろ、情が湧いてくれたらいいのにと思ってさえいた。
「そっか。でも良かったよ。一緒になって楽しんでた自分が言うのもなんだけど、このままズルズル続けるのも問題だなと思ってた所だし」
 知ってる。なんてことは悔しすぎて言えない。
 数回前から、わかりやすく散らされ始めた所有印。恋人ができたのかどうかは聞いていないが、少なくとも自分には許されていないし、この体に痕を残されたこともないのだから、答えは明白だ。
「ああ、でも、これが最後なら、うんと気持ちよくならないとね」
 泣いたせいで若干散っていた快感を思い出させるように、彼がまたゆっくりと腰を使い出す。
「あっぁアッ」
 すぐにたまらず溢れる声を、いい声だねと褒められる。
 イヤラシイ行為の真っ最中にも、優しく笑っている顔が本当に大好きだった。
 これで最後なのだと思うとやはり胸がキュウと痛んだけれど、それでも精一杯、彼を真似て笑ってみせた。

 

レイへの3つの恋のお題:彼とも、してるんだ?/見える位置に残された痕/優しい笑顔が好きだった
http://shindanmaker.com/125562

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁