親友の兄貴がヤバイ19(終)

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 わかってるよと返る相手の口調もいささか強いが、憤りというよりはもどかしくて仕方がないと言いたげだ。
「知ってるし、分かってるし、でもまだ傷ついてないし、多分この後も傷ついたりしない」
 強い口調のままそう吐き出した相手は、それから柔らかな声で、ねぇ、と続ける。
「これ以上、焦らす気ないって、言ってたろ?」
「焦らしてるわけじゃ……」
「お前は俺に優しくしてくれてるだけってわかってるけど、でもそれ、めちゃくちゃ焦らされんだってば。俺だって早く見たいんだよ?」
 腰を掴んだ手に相手の手が添えられたかと思うと、腰を掴む手を剥がしにかかられる。口調は柔らかだったのに、手に掛かる力は強かった。そして拘束が緩めばまた腰を揺すってくる。
「ぁあっ、ちょ、……見たいって、何、をですかっ」
 抱きつく腕のなくなった上体を起こし、揺れる腰を再度強く掴んだ。強く掴みすぎたのか、一瞬相手の顔が苦痛に歪んだ気がして、慌てて力を緩めたけれど、相手も諦めたのか再度手を剥がしに掛かることも、腰を揺すってくることもなかった。
「っそんなの、お前のヤラシイ顔、にっ、決まってる。俺に突っ込んで、気持ち良くなってイッちゃうとこ、見せてよ」
 お前ばっかり俺を二度もイかせてズルいと拗ねた口調で言われたけれど、その二回とも、相手のイキ顔なんて見ていない。まぁ、そういう話ではないって事はわかっているけれど。
「あーもう、目一杯優しくしたいこっちの気持ち折るようにそーやって煽るの、本当、酷いですよっ」
「だってもう目一杯、優しくされたもん」
「もん、とかクソ可愛いのどうにかしろ。じゃあもう、お望み通りがっついてあげますよ」
 こっちの顔見る余裕があったらいいですねと言いながら、素早く腰を引いて強く打ち付ける。
「ぅあっ!!」
 そのまま自分の快楽だけを追って腰を振り立てれば、ひっきりなしに高い声が上がった。
「あっ、ぁあ、ぁああっっ」
 声も、僅かな明かりの中に浮かぶ表情も、どちらもかなり苦しそうだけれど、こちらももう止まれない。
「も、イキます、よ」
 告げれば、辛そうに眉間を寄せてこちらを必死に見つめていた相手の顔が、一瞬柔らかにほころんだ。この状況で、そんな嬉しそうに微笑まれたら堪らない。
「ヤバすぎ」
 思わず零した呟きと共に、相手の中に思いの丈をぶちまける。正確には、さきほど装着したゴムの中だけど。
 吐き出してスッキリしてしまうと、次にやってくるのはなんとも中途半端な後悔だった。
 煽ってきたのは相手で、多分相手の望むままに振る舞ったはずで、でも本当はもっと優しくしたかった。性急に自分の快楽だけ貪るような真似はしたくなかった。いきなりでは難しいかもしれないが、相手のキモチイイだって探りたかった。さっき確かめた前立腺だって、優しく突いて擦ってしてみたかった。
 そんな気持ちがグルグルして、吐精した余韻に浸るどころか固まって動けなくなっていたら、相手が動いて力をなくしたペニスがズルリと相手の中から吐き出されてくる。確かに繋がっていたものが切られたような気がして寂しい。
「おーい」
 掛けられた声にハッとして相手を見れば、嬉しくて仕方がないという気持ちに苦笑を上乗せしたみたいな顔をしていた。その顔がぐっと近づいてきて、ギュウギュウに抱きしめられたかと思うと、わしゃわしゃと頭を撫でられる。
「わがままきいてくれて、ちゃんとがっついてくれて、ありがとな」
 きっとその言葉に嘘はない。本心なのだというのはわかるが、でも納得はできそうになかった。
「本当に、あんなのが、良かったんですか?」
「うん」
「全く気持ちよさそうじゃなかったですけど。というか、辛かった、ですよね?」
「まぁ体は初めてなんだから仕方ないよな。でも痛いのは殆どなかったし」
「やり方次第で、もうちょっと、貴方も気持ちよくなれたと思うんですけど」
「それはゴメン。次は俺も、お前だけ気持ちよくなってなんて言わないから、一緒に気持ちよくして?」
 次という言葉に、ああ、次もあるのだと思って少しだけ気持ちが浮上する。
「次、あるんですね」
「俺より若いんだから、そんな体力ないとか言わないだろ? ああ、もしかして一回だけで終わるつもりだったから、あんな必死に堪えて頑張ってたの?」
「え、次って、まさか今日の話ですか?」
「そうだけど。というか、お前の言う次って、またお泊りデートがあるかどうかって話なの?  お前の受験終わったらデートもセックスもいっぱいする気でいるんだけど、そんなつもりないとか言うなよ?」
 言いませんよと答えながら、抱きつく体を抱きしめ返した。
「でもなんか、抱かれる側の貴方が、セックスにこんな積極的なのめちゃくちゃ想定外だったんで、イマイチ信じられないと言うか」
「ああ、うん。それは確かに。俺も自分が抱かれる側で、こんなにお前欲しくなるって思わなかった」
 こんなイヤラシイ体にしたのお前だからね? 責任取ってね? と続いた言葉に、即座にもちろんですと返せば腕の中の体が楽しげに小さく揺れる。
「じゃ、も少し休憩したら、今度は二人一緒に気持ちよくなれるセックスな」
 その言葉通り、二回目は体を繋げてからの時間を大事にするようなセックスをした。お互い相手の快楽を煽りまくるようなことはせず、同時に果てられるようにと、快感の波を合わせていく作業はひたすら幸せだった。
 しかも更にその後、相手の手で、結局自分も三回目をイかされることになった。
 十分満足した後だったので全く必要ないのだが、彼によって植え付けられた過去のトラウマを、彼自身が随分と気にしているらしいのを知ってしまって拒否できなかったからだ。
 彼の手に反応するペニスを包み込んで扱きながら、二度もイッた後なのにすぐにこんなに硬くして淫乱でイヤラシイ体だと笑う顔は、あの日の蔑むような冷たいものとは全く違う。
 愛しくて仕方がないと言いたげな優しい顔だ。
「俺が何度だってこんなになるのは、弄ってくれるのが貴方の手だからですよ。俺を、淫乱でイヤラシイ体にしてるのは、今も昔も、貴方なんですからね?」
「そうだよ。だから、ちゃんと責任取らせてね?」
 ふふっと笑った顔がスススッと降りていって、まさかと思ううちにパクリとその口に咥えられてしまう。
 口内の温かさと、ぬめる気持ちよさと、くちゅくちゅと小さく響く卑猥な音。そしてなにより、若干潔癖気味な彼が口を使って愛してくれているという事実に。三度目だというのにあっと言う間に昇り詰める。
 なお、さすがに飲むのは無理だと判断した相手が咄嗟に顔を離したものだから、初お泊りデートの締めくくりに、意図せずして顔射を決めるというオマケが付いた。

<終>

ダラダラセックスにお付き合いありがとうございました。書いててとても楽しかったです!
予定していたオマケ話も無事書き上がりました〜
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