兄は疲れ切っている39

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 中を洗い終えた後は、椅子に座らせた兄の体を丁寧に洗ってやる。ほぼお湯だけとは言え、排泄している姿を散々可愛いと言われまくった兄は少々放心気味で、自分で出来るだとか必要ないとか言うことなく、おとなしくこちらに体を預け洗われている。
 肌の上を滑るスポンジに、うっとりと甘い息を零して見せるから、ムクムクと湧き上がる悪戯心を抑えるのが大変だ。
 今日だけじゃないんだからと、何度も自分に言い聞かした。さすがに今日、これ以上兄の体に負担をかける行為をする気はない。
 けれど当然、いつかは事後に風呂場で襲ってやろう、とは考えていた。いや、前準備を手伝わせてもらえるようになったら、先に風呂場で一発、みたいなのも楽しそうだ。
 いつか、兄の可愛い声が風呂場に反響するのを堪能したい。
「はい、終わり」
 頭の中を不埒な妄想でいっぱいにしながらも、なんとか余計な刺激を与えてしまわないように気をつけつつ、やっぱり丁寧に泡を流してやって終了を告げた。
「俺も体洗うけど、先に湯船入ってる?」
 先に連れて行こうかと言えば、すぐそこなのに? と笑われてしまう。家とは比べ物にならないくらい広々としたバスルームではあるが、それでも確かに、湯船までは数歩でたどり着ける距離だった。
「すぐそこでも、だよ。なんなら、抱き上げて運んで、そっと風呂の湯の中に下ろしてやるけど?」
 兄はふふっと笑って、抱き上げて連れて行こうかという提案への返答ではなく、待ってるから体洗っちゃいなと言った。
 けれど素早く体を洗い終えて兄に向き直れば、ん、と両腕を持ち上げて突き出してくる。抱いて連れて行けという催促だ。まさかの行動に、デレデレとにやけてしまうのを止められない。
「にやけすぎ。そんな嬉しい?」
「うん、めちゃくちゃ嬉しい」
 指摘にもあっさり頷いて、広げられた両腕の中に身を屈めていく。
「ほんっと大好き。いくらでも甘やかすから、これからもいっぱい甘えて?」
 おでこにちゅっと唇を落としてから、兄の背と脚を支えるように腕を差し込み抱き上げた。慣れていない兄が、やはりきゅっとしがみついてくる。たまらなく愛しいと思った。
 先程言った通り、そっと兄を湯の中に下ろしてやってから、自分も湯船に踏み入って、兄の背後に体を滑り込ませる。
「こんな広いのに、なんでそっち?」
「なんでって、そんなの、こうしたいからに決まってる」
 振り返って不思議そうに聞いてくる兄の腰を掴んで、開いた足の間に引き寄せた。
「ぅわっ」
 小さな驚きの声は上がったものの、ふわっと湯の中を滑って、兄の体があっさり腕の中に収まってしまえば、何も言わずとも兄が背を倒して胸に凭れ掛かってくる。んふふっと小さな笑いが溢れて、どうやら兄も楽しんでくれているようだ。
 湯に浸かりきらない肩に向かって、お湯をすくって撫でるように掛けてやる。
「気持ちぃ」
 数度繰り返せば、とろりとした声がうっとりと響いた。
「ん、なら、良かった」
「これ、いいな。これなら、うっかり寝ちゃっても、溺れない」
「眠い?」
「んー……まぁ、ちょっと」
 横から兄の顔を覗き込めば、既に瞼が落ちている。
「溺れさせることはないけど、のぼせても困るし、上がろうか」
「んっ……も、ちょっと」
 ああこれ、本気で寝そう。そう思いながらも、あまりに気持ちよさそうな声での「もうちょっと」のお願いを聞いてあげたくて、脳内でゆっくりと数を数え始める。
 カウント100までくらいなら、このままゆるっとお湯に浸かっていてもいいだろうと思いながら、お湯をすくっては兄の肩に撫で掛けてやるのを繰り返した。

続きました→

 
 
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