兄は疲れ切っている9

1話戻る→   目次へ→

 兄とは結局、月に2〜3回セックスする仲が続いている。
 抱かれる体の負担を考えてくれと言われたから、抱くとしたら金曜夜から土曜の夜までのどこかで、場所はラブホ一択だった。しかも場所代の大半は兄が出している。
 バイトを全くしていないわけではない上に未だ親からの小遣いもあるけれど、学業と所属してる部の活動とでかなり時間も金も食われているし、そこまで金銭的に潤っているわけではない。というよりも、どちらかと言えばカツカツな方が多い。合意の上のセックスとはいえ、ヤりたいのはどう考えたってこちらだけなのに、だからとラブホ代を全額負担なんてとても無理だった。
 つまりラブホ代を兄が出してくれるのは、家の中で抱かれるくらいなら自腹切ってでもラブホを選ぶ、というだけにすぎない。
 半ば脅すみたいに関係してしまったし、その後も負担ばかり強いているのに、体を気遣って欲しい程度の要望はあるものの不平不満がほぼないまま、もう嫌だと拒否られることもなく続いているのがいっそ不気味ですらある。
 当初は動画なり写真なり残して、それをネタに脅してむりやりにでも関係を続ける気でいたが、兄があまりにもあっさり抱かれることや彼女を作ることを諦めるのを了承した事と、絶対に何か誤解したままだとわかっていたから、あの夜、兄にカメラを向けるようなことはしなかった。だから、逃がすわけ無いだとか、兄を自分のものにしたいだとかを確かに言ったけれど、それらは言葉だけで強制力なんてなにもない。
 なのに一向に逃げ出す素振りすらない兄が、いったい何を考えてこんな関係に付き合い続けているのかわからなかった。
 抱かれるセックスが思いの外良くてハマっただとか、こちらの好意が正しく伝わって兄の中で恋人として認識されただとか、そんな都合の良い展開になった訳ではないことははっきりしている。
 初回が、酔いつぶれて弛緩した体を丁寧に慣らしまくった末の挿入だったのと、兄が思いの外協力的なのもあって、今まで女性との性経験しか無かった男二人のセックスでも、それなりにお互い快楽は拾えていると思う。協力的なのは一緒に気持ちよくなりたい意思でというより、単純に痛いのが嫌だからという可能性もあるけれど、とりあえずの所、肉体的にはそこまで兄の体に苦痛を与えてはいないはずだった。
 でも実の弟に押し倒されて突っ込まれて、それなりだろうと気持ちよくなってしまう、という状況を苦々しくは思っているだろう。
 誘いを断られることはないが浮かない表情を見せていることが圧倒的に多いし、たまに明るく応じることがあっても空元気にしか見えないし、素直に気持ちが良いと言って喘ぐくせに、突っ込んで揺すっている最中に時折ホロリと涙を流す。生理的な涙だと言い張るのであまり突っ込んで聞けていないが、絶対に嘘だと思っているし、体はともかく精神的には間違いなく苦しいのだろうと思ってもいる。
 一応、雄っぱいは年中無休で、兄が揉みたいと手を伸ばしてきた時は好きに揉ませているけれど、そんなの兄にさせている事と比べたら余りにささやかすぎるお返しだ。
 お返しだと思っているから、そういう時は抱きしめたいのすらグッと我慢しているけれど、こちらが手を出さないのをわかっているからか、以前と変わらず安心しきって甘えてくるのが辛くもあった。
 兄が穏やかに笑ってくれたり、とろりと甘えた顔を見せてくれるのは、結局のところ雄っぱいに張り付いている時だけなのだ。それだって、一度でもそんな兄をそのまま抱きしめ押し倒すような真似をすれば、警戒されて二度とそんな姿を見せてくれなくなるかも知れない。
 わかっているから手なんか出す気はないけれど、こんな風に甘えてくれる兄を抱きたいのにという欲求だけは着々と高まっていくから、どれだけ抱いても甘やかにとろける顔など見せてはくれないセックスを、このまま続けることに少しばかり迷い始めている。

続きました→

 
 
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■


HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です