サーカス1話 出会い

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『どんな命令にも進んで従う
 従順な性の奴隷に』
オーナーから新人団員である
ガイを託されたビリーは、
同時に与えられた命令に頷く
しかなかった。
そうして始まった調教の日々に
いつしかビリーはガイへの
愛しさに捕らわれていく。
 
 
 
 
 モニタに映る何もない小部屋の中には、一人の子供がうずくまっている。
「それが、例の子供ですか?」
 尋ねる声に返るのは肯定。ビリーは眉を寄せながら小さなため息を一つ零した。
「嫌なら、無理にとは言わないけど?」
 目の前に立つ、このサーカス団の若きオーナーでもある青年は、ビリーが断らないことを確信している笑みでそう言ってのける。
 どういった経緯なのか詳しくは告げられていないが、引き取らざるをえなかった子供。ただ、随分と元気が良すぎたようで、大暴れした末にこの目の前にいる青年の、大事な友人を一人傷つけた。
 運が悪い。
 ビリーはそう思わずにはいられなかった。
『どんな命令にも進んで従う従順な性の奴隷に』
 そう仕立て上げろという、半ば強制的な命令を受けたのは今朝のことだ。
 提示された報酬はビリーが喉から手が出るほど欲している金額を軽く上回る。それだけの金があれば、このサーカス団から抜けて、本当にやりたいことが出来るだろう。
 ビリーがここに居るのは、手っ取り早く金を稼ぐためなのだ。
「やります、よ」
「君ならそう言ってくれると思ってた」
 よろしくと笑った顔は、蝶の羽を躊躇いなく毟り取る残忍な子供のそれだった。
 
 
 
 
 渡された鍵で扉を開く。
 部屋の隅には先ほどモニタ越しに見た少年が、その時と同じ格好でうずくまっていた。
 どうやらガイという名前らしいその少年は、入ってきたビリーに一瞬だけチラリと視線を向けた後、また抱えた膝の中に顔を埋めた。
「生意気そうなガキだな」
 きつめの声を投げかけるビリーに、返される反応はない。
 面倒そうな子供を押し付けられてしまった。それは間違いなく本心で、ビリーはこぼれそうになる溜め息を飲み込んだ。
 覚悟は決めたはずだろう。相手がまだ幼い子供だからと言って、情けをかけてはいけない。そんなものは邪魔にしかならないのだから。
 ビリーは感情を零さない冷たい視線でガイを居抜くと、硬い足音を響かせながら近づいていく。
 肩を掴んで立たせると、顎に手を掛けムリヤリ顔をあげさせた。まっすぐに、気丈そうな大きな瞳がビリーを見据えて睨み付けるのを軽く受け流して、ビリーは口を開く。
「お前、ここがどういう場所か知ってるか?」
「サーカス、やろ?」
 子供特有の少し高めの幼い声が部屋の中に響く。
 言葉が返ってくるとは思っていなかった。ためらいのないしっかりとした口調に、ビリーは口の端を持ち上げて見せた。
「そうだ。だが、お前の仕事は舞台に立つことじゃない」
 言いながら、ガイの胸倉を掴んで持ち上げ、乱暴に小さな唇を吸い上げる。それまで無表情だったガイが、驚愕と嫌悪の表情で顔を歪ませた。
「今後は俺の性欲を満たすためのペットとして、お前を飼ってやるよ」
「なん、やって……?」
 震えながら吐き出される声に、ビリーは極力いやらしい笑みを浮かべてやる。
「いい子にしてたら、お前にもイイ思いをさせてやるさ」
 再度ビリーはガイの唇を奪う。
「……嫌やっ! うっ…ツゥ……」
 逃れようと身体をバタつかせるガイの腕を掴んでねじりあげれば、ガイは痛みにうめき声を洩らした。開いた唇に舌を滑らせ、口内を乱暴に、けれど執拗にネットリと舐めあげる。
「んっ……」
 甘えの混じる声を鼻から漏らすようになるのを待って、ようやくビリーはガイを開放した。
 ビリーを睨み付けるガイの瞳に、先ほどまでのキツイ光彩はない。ビリーは満足げに笑ってみせた。

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