「お前はどうしたいんだ、ガイ」
ビリーの言葉が自分に向かうとは思っていなかったのだろう。ガイは驚きで目を見張る。
「ワイ……?」
「そうだ。お前がもし、こんな生活から抜け出したいって言うなら、買ってやってもいい」
「正気で言うてん?」
「冗談で言うか。俺にはお前を性欲処理のペットとして飼い続けようなんて趣味はないが、お前のことはこれでも結構気に入ってんだよ。だから、お前が望むなら、それくらいしてやってもいい」
探るようなガイの視線を、ビリーは真っ直ぐに受け止めた。
「どうする?」
「……抜け出し、たい」
「わかった。というわけで、商談に入りましょうか、オーナー」
結局、今回の報酬のほとんどを手放すことになりながらも、ビリーはオーナーからガイを買い取った。
「じゃあ、商談成立で。ガイはもう、君のものだよビリー」
「というわけだ、ガイ。自宅に帰るなり、セージの所へ行くなり、好きにするといい」
「「えっ?」」
オーナーとガイの、驚きの声が重なる。
「ちょっと待ちなよ、ビリー。君、ガイを自由にするために、あれだけの金額を僕に支払ったって言う気かい?」
「さすがに、面倒見てやれるほどの金銭的余裕はないんで」
それに、ガイだって、散々な扱いを受けたビリーの元では、今更お前は自由だと言った所で気を使うだろう。待ち受けていたはずの、性の奴隷としての日々から開放してやれただけで、ビリーは充分に満足だった。
自分ではガイを幸せになんてしてやれないけれど、親元に帰るなり、セージを頼るなりすれば、きっと躊躇うことなく笑えるようになるだろう。
そう考えれば、入るはずだった報酬を諦めることすら、容易いことに思えた。
「では、俺は部屋に戻ります」
「ビリー!」
オーナーへと頭を下げるビリーを、ガイの声が呼ぶ。振り返った先にあるのは、戸惑いの表情だった。
「なんて顔してんだよ。自由にしてやったんだ。最後くらい、笑えよ」
「あっ……」
ガイは困ったように言葉を詰まらせる。
「なんてな。俺に向かって笑う必要なんてないから、自分のために笑って生きな」
じゃあな。という言葉と柔らかな笑顔を最後に、ビリーはガイから視線を外して歩き出した。
再度呼び止める声はない。
< 開放エンド >
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