予想通り甥っ子はさっくりシャワーを終えて、腰にタオルを巻いただけの状態で急ぎ戻ってくる。その時自分は、ちょうどベッドの上にバスタオルを広げていた所だった。
雰囲気やら勢いやらも大事だと思うので、その流れで始めてしまうなら仕方がないが、余裕があるなら出来る準備はしたい派だ。シーツをまるっと取り替えるより、バスタオルを洗濯するほうが楽なのは当然だった。
それを見た甥っ子は随分とホッとした様子を見せる。
「気持ち変わったりしないって言ったろ」
苦笑して見せたら、だってと気まずそうに口を開く。
「戻った時にはにーちゃん居なくなってるかもって思って……」
正直言えば、未だに逃げれるなら逃げたい気持ちはあった。しかしここで逃げてしまったら、どれだけ彼を傷つけるのかわからない。諦め帰るよう説得できず、受け入れる態度を見せた以上、こちらだって覚悟を決めるしかなかった。
「逃げないよ。こっちおいで」
おとなしく従った甥っ子はぎこちない様子で、ベッドに腰掛ける自分の隣へ同じように腰を下ろす。
「髪もまだ濡れてるし」
「どうせすぐ乾くよ」
「まぁそうだろうけどさ」
言いながら、取り敢えずで枕横に用意しておいたフェイスタオルを取り上げ、甥っ子の頭にふわりと被せた。そのままゴシゴシと頭を拭いてやっても、甥っ子は黙ってされるがままだ。
「おとなしいな。緊張してる?」
「そりゃ……」
ぼそぼそと溢れてくる声はやはり元気がなかった。
ほぼ裸に近い格好で勢い良く戻ってきた割に、そう積極的でもないようだ。さあ抱け! とぐいぐい来られるよりは有り難い気もするが、どう扱っていいか迷うのも確かだった。
こんなに気を使いながら始めるセックスっていつぶりだろう?
そう思いながらそっと頭に被せていたタオルを外して、手櫛で何度か髪を梳いて簡単に整えた後、伺うように軽いキスを一つ鼻の頭に落としてみた。
対する甥っ子も、やはり黙ったまま目を何度か瞬かせて探る気配を見せるので、もう一度、今度はその唇に触れてみる。
「あ、あのさ」
躊躇いがちなセリフの先を、そっと促す。
「うん、何?」
「名前、呼んだほうが嬉しい?」
「名前を呼び合いたいとかって要望じゃなくて、俺が嬉しいかどうかを聞くわけ?」
発想が時々面白いなと思いつつ聞き返したら、義兄の代わりになるのなら義兄の呼び方で呼んだほうが嬉しいか、という意味だったようで驚いた。
「俺の言い方が悪かったのは認める。というか、ああ言えばお前が諦めると思ったのは確かだけど、義兄さんの代わりになれってつもりで言ったわけじゃないぞ?」
「違うの?」
言葉の端々から、そう誤解してるような予感はしていたが、どうやら当たっていたようだ。
「違うよ。ただ俺の中でお前と義兄さんの境が曖昧なんだって話。俺の中でのお前は、どっちかっていったら小学生の頃のイメージが強いし。逆に義兄さんは今のお前より少し年行ったくらいの頃のイメージが強いんだよ。俺がよく遊んでもらってた頃の話な」
「じゃあ、にーちゃんって呼んだままでいいの? でももしかしてそれも嫌だったりする?」
不安げな様子はやはり、そう呼ぶことで、甥であり弟のような存在であることを意識させると思っているからだろうか。
「好きに呼んでいいよ」
「にーちゃんは? 俺をなんて呼ぶの?」
苦笑しながら甥っ子の名を呼んでやれば、安堵を混ぜながらも泣きそうに笑った。
こんな顔をされてしまったら、間違っても義兄を呼べないなと思う。まぁきっと、自分が抱く側でそこまで強く錯覚することもないだろう。そうであればいいなと願うように思った。
「他にも何かあるか?」
少し考える素振りの後、ないよと言うように首を振る。キュッと唇を噛み締めているから、もしかしたら何かあるのかもしれないが、どうやら飲み込むことにしたらしい。
「後、一応言っておくけど、こっちが経験者だからって、嫌なことされて我慢する必要はないからな?」
わかったと頷くのを待ってから、ゆっくりと唇を塞いだ。今度はもちろん触れるだけではない。
時々角度を変えながら、軽く吸い付いて、唇を食んで引っ張った。舌を出して緩く開かれた唇の隙間を突けば、応じるように舌が差し出されてくる。それを舐めて、やはり軽く歯を立てながら自分の口内へと誘いこむ。
甥っ子からこぼれるぎこちない吐息が、甘く耳の奥をくすぐった。
あなたは『「今更嫌いになれないこと知ってるくせに」って泣き崩れる』誰かを幸せにしてあげてください。
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