今更嫌いになれないこと知ってるくせに17

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 目が合ったと思った瞬間、ぶわりと盛り上がる涙に焦る。焦っている間にそれはあっという間に瞳からあふれて流れ落ちた。
「にーちゃんの嘘つき」
「えっ…?」
 ふにゃんと顔を歪ませながら、こちらの戸惑いを構うことなく、甥っ子は言葉を続ける。
「やだって言った。触っても言ったのに」
 グスッと鼻をすする甥っ子が何を言いたいかはわかった。それを言うなら、意地悪じゃなければこちらの抱き方でいいだとか、抱き方を教えてだとか言ったのは誰だと言ってやりたかったが、さすがにそれは飲み込んだ。
「あー……うん、ゴメン?」
「悪いと思ってない」
 思わず疑問符が付いてしまったのを聞き逃さなかったようで、やはりグズグズと鼻をすすりながらも口を尖らせる。酷く子供っぽいしぐさに、逆に愛しさが込みあげるのだから不思議だった。
「そりゃあなぁ……」
「やっぱりだ」
 酷いと口にされても苦笑するしかない。
「だってお前、実際後ろだけでイけたろ? しかも指3本で」
「そーだけどっ」
「俺はお前に気持ちよくなって貰おうと思っただけで、意地悪してたつもりはないぞ?」
 宥めるつもりで頭に手を乗せ、ゆっくりと撫でながら言葉を続ける。
「やだったなら、ここまでにするか」
「えっ?」
「このまま続けても、お前にさっき以上に怖い思いさせるだろうし」
「え、待って。なんでなんで」
 慌てたように起き上がってこようとする体を制して、逆に自分が甥っ子の隣に寝転んだ。よいせと声をかけながら、仰向けの甥っ子の体を自分側へと向けさせ、軽く引き寄せるようにしながらゆるりと抱きしめる。
 抱きしめた瞬間、本当に大きくなったと、しみじみ思った。なぜか、泣いて口をとがらせ拗ねる姿に、カチリと昔の甥っ子の姿がハマったようで、酷く愛しい気持ちが湧き続けている。
「自分では指2本までしかしたことなくて、しかも2本入れたらあんまり気持ちよくなれないって言ってたもんな。それが指3本入って、前触られないままイッちゃうとか、たとえ、いずれはそうなれるって知ってても、初めての体験にビックリしたろ。途中、怖いとも言ってたよな。ようするに、まだ早いんだよ、繋がるセックスするにはさ」
「嘘っ、やだよ。約束した。抱いてくれるって言った」
「うん。だから抱いたろ。繋がるとこまでは出来なかったけど、充分にセックスだったよ」
「まだ出来るよ。してよ。ちゃんと繋がりたい」
「そう焦らなくたって、いつかまた、もっといい機会がくるって」
「適当なこと言うなよ。いつかっていつ? 俺と恋人になってくれる気でもあるの? 父さんが好きなくせにっ。今しかない。今日しかないのにっ」
 既に緩んでいた涙腺から、ぶわわっと溢れた涙はあとを絶たない。
 次を明確に提示する事は出来ないし、恋人になろうとも言ってやれない。だからと言って、いつかもっと好きな人が出来るよなどと言う事も出来ない。そんな言葉は追い討ちを掛けるようなものだし、そもそもそうなって欲しいなんて欠片も思っていないからだ。
 気持ちに応えられないくせに、出来れば他の誰かを好きになって欲しくはないだなんて、そんな身勝手過ぎる自分の中の気持ちに気づいてしまって遣る瀬無い。
「ゴメン。ごめんなさい。もうやだとかやめてとか絶対言わないからっ。ねぇ、だから最後までしてよ。お願いだから」
 掛ける言葉を持たず、抱きしめ宥めるように背をさするだけの自分に焦れたのか、苦しげに泣きながらも謝罪と懇願を繰り返す相手に、どうしてそこまでと思う。そう思うと同時に、そういえば義兄の変わりでいいと言い切られて始めたのだ、ということも思い出す。目の前の相手の可愛さに夢中になって、途中から甥だとか義兄だとかはすっかりどこかへ飛んでいた。
「指3本いけたんだから、もう入るでしょ? ねぇ、入れてよ。父さんの代わりでいいし、もう優しくしたくないってなら、ひどくしても、突っ込んでくれるだけでも、もぅ、いいから」
 泣きながらなので途切れ途切れではあるが、どこまでも必死に求めてくる。きっと若さゆえ視野が狭くなっているのだとわかっているのに、それを指摘したところで納得はしないだろう、ということまでもわかってしまうから本当に困る。
「お前にこれ以上辛い思いさせたくないんだってわかれよ」
「俺のこと、そんなに大事?」
「大事だよ」
 即答したが、なぜかますます悲しげな顔をさせてしまった。
「でも俺は、このまま抱かれて辛いより、抱いてもらえない方が辛いよ」
「どっちにしろ辛いのわかってるなら、自分の体は大事にしろって言ってんの。こんな形で初めてをムリヤリ散らす必要なんかないだろ」
「だってにーちゃんがいいんだもん。ずっと好きだったんだから初めての人になってよ。そしたら諦めるから。てかもういっそ酷くしてよ。父さんの名前とか呼んだらいいよ。俺が絶望して、二度とにーちゃんに抱かれたいなんて思わなくなったら、にーちゃんだってホッとするだろ」
 やけくそ気味な発言に、こちらもカッと頭に血が上る。
「バカか。そんなん言われて抱けるかバカ」
「なんでだよっ。俺に好かれたままのが困るくせに。このまま抱いて、にーちゃんのこと嫌いにさせてよっ」
「そんな程度で嫌いになれるってなら、そこまでしても抱いてやらない俺を嫌いになれよ」
「そんなの……」
 ぐっと言葉に詰まった後、耐えることを一切やめてわーわー泣きじゃくり始めた相手にぎょっとする。
「わ、悪い。言い過ぎた」
 煽られて売り言葉に買い言葉で言い返すなんて、まったく大人げないことをした。
「にーちゃんのバカっ嫌いだ。嫌いだっ」
 泣きじゃくる勢いはおさまらないまま、まるで甥っ子自身に言い聞かすように嫌いだと繰り返す。実際に嫌いだと言われればこんなにも胸が痛い。
「うん、いいよ。嫌いでいい。本当に、ごめん」
 抱きしめる力を強めても抵抗はなかった。それどころか相手の方からさらに擦り寄り、肩口に泣きはらした目元を押し当ててくる。それでもその口からこぼれるのは、しゃくりあげる声に混じった嫌いの言葉だった。

続きました→

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