慎重に全てを埋め込んで一つ息を吐き出す。
最初だけ、やはり指とは違うだろう感触に戸惑う様子を見せていた甥っ子は、途中から自身の体を拓くこちらを真剣な表情でジッと見つめていた。呻くでも耐えるでも喘ぐでもなく、初めての行為に随分と余裕がある。
それはきっと、彼が想像していたよりずっと痛みや苦しさや辛さが軽かったからなのだろう。それはこちらの望んでいた事でもあるから、良かったと安堵する気持ちはもちろんあった。しかし、かと言って挿入されるだけで感じてしまうような、強烈な快楽を叩きこむ解し方もしていないから、せっかく念願かなって繋がったというのに、思いの外何も感じなかったなどという感想を持たせたのなら切ないなと苦笑する。
「全部入ったぞ」
「うん」
「随分余裕の顔してるが、まさか、あんま良くないな~とか思ってないだろうな?」
こっからだからなと告げれば、余裕なんかないよと眉尻を下げてみせる。
「にーちゃん」
意を決した様子で呼ばれて、何を言われるのだと若干身構えてしまうのはどうしようもない。どうしたと問いかける声は少し緊張が滲んでしまった。けれど甥っ子はそれには気づかない様子で、一転ふにゃんと泣きそうに笑う。しかもその口から吐き出されて来た言葉は、まったく想定外のものだった。
「好きだよ」
「おまっ……」
「すごく、すごく、好き。にーちゃんが、大好き」
言葉だけなら盛大な告白というだけだが、その声は切なげに震えていて、マイッタなと思う。どうしてそうなったのか、理解が追いついていない。
「俺だって、好きだよ」
「うん。わかるよ」
理解できないなりに告げた言葉は、思いの外あっさりと受け入れられていく。
「凄く、伝わってくる。だからなんかちょっと、ビックリして」
抱かれるのって凄いね、なんてことを、思わずといった様子で零すから、愛しさと安堵と驚愕でやはり苦笑するしかなかった。
「まさかそれで泣きそうになってんのか?」
「泣きたいわけじゃ、ないんだけど。でも、にーちゃんが今、俺の中に居るんだって、凄い、嬉しくて」
嬉しいと言いつつも、甥っ子の顔はますます泣きそうだ。手を伸ばしてその頬を撫でて、うっすらと目元に滲んだ涙を指先で拭いながら、極力甘く響くようにと意識しつつ名前を呼んだ。
「感極まるには早すぎだろ」
さっきも言った、こっからだぞというセリフをもう一度告げた。
「だってぇ……」
にーちゃんが好きなんだもんなどと、鼻を啜りながら言われてしまえば、こちらもいい加減限界だ。
「だからあんま煽るなって」
繰り返してしまう苦笑と共に、動くぞと宣言して律動を開始する。
当初の気持ち的にはもっとゆっくり中を味わうように、じっくりと快楽を引き出すつもりで責めてやるはずだったのに、そんな予定は吹っ飛んだ。
「あっ、あっ、ああっ、ちょ、なあぁ、まっ、んぁっ…んまっ、ああっ」
ずっと強くは触れずにいた弱い場所をグリグリと擦ってしまったせいで、鋭い嬌声が次々とこぼれ出す。突然に与えられた強い刺激で、驚き戸惑い慌てる様子に、申し訳ない気持ちは確かにある。気持ちはあるが、待ってやれる余裕などなかった。
「も、無理。待てないって。スマン」
待って待ってと音にならない言葉は届いていたけれど、こちらも情けなく謝るしかない。そして謝りながらも、更に弱い場所を狙って突き上げた。
それを気持ち良いと感じられるだけの素養は多分まだないだろう。だとしたら、現状彼が感じているのは、違和感と恐怖と、もしかしたら痛みすらも与えているのかもしれない。
あっ、あッ、と突き上げるたびに吐き出される声は苦しげで、潤みきった瞳からは大粒の涙がボロリボロリとこぼれ落ちている。
奥を擦られて突かれても、それを気持ち良いと感じられるように、ゆっくりと慣らしてやるつもりだった。じわじわと感じていく、きっと可愛らしいに違いない様を見てやろうと思っていたのに、いったい自分は何をしているのか。
グッと奥歯を噛みしめて、暴走する欲望を抑えこむ。早い律動を、ゆるやかなリズムに変えていく。
「あ、あッ、んんっ、にーちゃぁぁ」
ボロリボロリと流れる涙は変わらないものの、甘い声が呼びかける。縋るように伸びてきた手に誘われて前屈みに身を寄せてやれば、首筋に絡んだ腕がぎゅうと抱きしめてきた。
あなたは『「今更嫌いになれないこと知ってるくせに」って泣き崩れる』誰かを幸せにしてあげてください。
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