雷が怖いので15

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 ルームサービスなんて軽食類のイメージしかなかったのに、前菜からデザートまでのしっかりコースで、デザート時にはコースのデザートと一緒に、一旦下げられたバースデーケーキもカットされて再度運ばれてきた。
 思ったより酒に強いなと驚きを混ぜつつ言われながらも、注がれるまま飲み干していたシャンパンだのワインだののおかげで、デザートの頃にはさすがにかなり頭がぼんやりしていた。それでも、コース外のケーキもほぼ一人でぺろりと平らげるくらいには、料理は全て美味しかった。
 食事は美味しいし、お尻に栓をされてるとはいえ、食事中はプレイ的な要求は一切されないまま、目の前の男は普段の何倍も優しい顔を見せていたし、最高に幸せな時間を過ごしたと思う。なんだか凄く幸せだと、何度も口に出してしまったくらいに。
 ただ、食事を終えた後から記憶は随分と曖昧だ。というか、いつの間にベッドへ移動して眠っていたのかわからない。
「う゛ー……」
 取り敢えずで身を起こしたら、頭がズキズキと痛んで呻いてしまった。痛みはあるのに、ふわふわとした浮遊感と多幸感が残っているのも、なんとも不思議な感覚だった。
「なんだこれ……二日酔い……ってやつ?」
 口に出したら、それっぽいなと思う。
 しばらくぼんやりとベッドに身を起こしたまま座り込んでいたが、やがて、トイレに行って何か水分補給をしようと思い至る。体の欲求に、思考が追いつくのが随分と遅い。
「あれ……?」
 ベッドを降りるまで、自分が裸だということにも気づかなかった。ふとお尻に手を当ててみれば、そこにあったはずのものも抜き取られている。
 おぼろげに、ベッドのうえで何やらイロイロされたっぽい記憶の欠片が蘇りかけたが、それを深く考えるよりさきに、尿意に促されてトイレへ急いだ。
 ベッドの置かれた空間とテーブルセットなどが置かれた空間は、それぞれ別の部屋と認識できる造りにはなっているが扉はなく、トイレはベッドルームを出た先にある。
「おはよう。いい格好だな」
 隣の部屋に踏み入ったら、すぐにそんな声が飛んできた。慌てて声のする方向へ顔を向ければ、ソファに腰掛け新聞を読んでいたらしい男がニヤニヤ顔でこちらを見つめている。
「ああ、まだ酔ってんなお前。大丈夫か?」
 ぎくりとして立ち止まり、その顔をまじまじと見返してしまえば、すぐにそんな言葉と共に男が立ち上がった。ニヤニヤ顔は少し困った様子の苦笑顔になっている。
「と、トイレに行くだけだからっ」
 近づくように歩き出す姿にハッとして、叫ぶように告げると慌ててトイレに駆け込んだ。
 急に動いたせいか、頭がぐわんぐわんと回る気がして、トイレの壁に寄りかかって息を整える。しんどい。
 それでもなんとか無事に用を足し、さて、どうしようかと思う。とは言っても、どうしようもない。トイレの個室に着替えが湧いて出てくるはずもないので、このまま裸でもう一度ベッドルームまで戻るしか無いのだ。
「よしっ」
 気合を入れてトイレのドアを開け、今度は最初から駆ける勢いでベッドルームへ急ぐ。チラリと見たソファでは、やはり男が新聞を読んでいる様子で、けれど今度はこちらを振り向くことはない。
 しかしやっぱり急な運動に頭がぐらぐらと揺すられて、戻ったベッドルームで盛大に呻くはめになった。横になる気にはならず、ベッドの脇に座り込んで、ベッドに頭だけ乗せて粗い呼吸を繰り返す。
「未だに裸を晒すのが恥ずかしいってのは、それはそれで評価するけど、あんま無茶すんなよ。というかそこで吐くなよ?」
 背後から声がかかって、気配が近づいてくる。
「吐きません、よ」
「気持ち悪くないか? 頭は?」
 すぐ隣に同じように腰を落とした相手の手が、よしよしと慰めるように優しく頭を撫でてくれる。
「頭は、痛い、です」
「ん、二日酔いだな。薬、飲めるか?」
「薬?」
「もしくは食事。朝飯食えそう? 水分とエネルギーの補給出来る元気あるなら、そっちおすすめ」
「あ、水……飲みたいんだった」
「わかった。ちょっと待ってろ」
 一旦立ち上がって気配が遠ざかったかと思うと、すぐに戻ってきてペットボトルのミネラルウォーターが手渡される。
「ほら、薬も。薬ってーかサプリみたいなもんだし一応飲んどけ」
 口元に押し付けられてしまったので、黙って口を開いて錠剤を二粒ほど口の中に受け取った後、ペットボトルに口をつける。蓋は既に開いていた。
 そのまま一息に半分ほど飲み干して、ほっと息をつく。
「なんか、すごく、甲斐甲斐しい」
 思ったままつい口からこぼせば、嬉しいだろう? と少しからかうような口調で返された。
「うん、……凄く、嬉しい、かも」
「そりゃ良かった」
 またゆっくりと頭を撫でられて、うっとりと目を閉じる。
「もいちど寝るか?」
 優しい声に、そうしてしまおうかという気持ちが湧かないわけではなかったけれど。
「ううん。お腹、減った」
 水を飲んだら、空腹なことにも気づいてしまった。
 それを口にしたら、吹き出されるというなかなかに珍しい経験をした後、着替えてビュッフェかルームサービスなら和食か洋食が選べるぞという提案がなされた。

続きました→

 
 
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