なるほど。複数のお風呂はこういう使い方もあるのか、と思う。
どっちのお風呂に入ってきたんですかと聞きながら、相手が座って待つベッドに近づいていく。
「デッキにある方だね。海が見えるのはそっちだから、明るい時間に楽しもうと思って」
先に楽しんじゃってゴメンねと言われて、時間はたっぷりあるから大丈夫ですと返しておく。
「まぁ、俺だって檜の内風呂はそれなりに堪能して来ましたし、この後はもう、お風呂楽しむ余裕なくずっとベッドで過ごす事になっても、それはそれで本望ですけど」
「言うと思った」
差し出された手を取り、促されるままベッドの上に寝転がれば、無茶する気はないよと苦笑されながら顔が寄せられる。ゆるく唇を解いて待てば、軽く何度か触れたあとで、相手の舌がぬるりと差し込まれてきた。
応じるように舌を差し出せば、絡み取られて舌同士をぬるぬると擦るように扱かれて、たまらなく気持ちがいい。
すぐ振られるからだんだん面倒になって、なんていう理由で恋人がいなかったこの人は、すぐ振られると言いつつも過去の恋人たちとちゃんと体の関係があって、しかも多分かなり上手い。
どうすれば男同士で気持ちよくセックスできるかを必死に検索したと言っていたけれど、それだけで結構簡単に、お尻を弄られながら彼の手で気持ちよく射精してしまっている。それも結局の所、男相手は初めてだとしたって、女性相手にはそれなりに経験を積んでいた結果なんだろうと思う。
好きな相手から貰うキスだから、という精神的なものももちろんあると思うけれど、それを差し引いたって、やっぱりキスという行為そのものが気持ちがいい。だって、こちらもそれなりに女性との経験はあるし、男は一人しか知らないけれどちゃんと気持ちよくして貰ったのだから、そいつだってそれなりに上手かったと思うのだけど、でもキスだけでここまで気持ちよくなれた相手は居なかった気がする。
先日のラブホでも、練習と言われてお尻を弄られながら何度かキスを貰っているから、全くの初めてというわけではないのだけれど、気持ち良すぎてたかがキスに全然慣れない。
「気持ち良さそう」
ふふっと笑って見下ろす顔は満足げだった。
「きもちぃです、よ。というか、この前も思ったんですけど、キス、上手いですよね」
「そう? ああでも確かに、キス嫌がられたり下手って言われたことはないかも。ただ、」
「ただ?」
いや、何でもない。なんてごまかそうとするのを、気になると食い下がってみたら、ベッドの中で過去の恋人の話なんてしない方がいいでしょ、と返されて、更には下手って言われたことがないって言ったことも忘れてよと続く。
「過去の恋人と比較して、というか女性と比較して、俺のことをどう思うとか、男の体がどうだとか、そういうのは聞きたくないですけど。でも、過去の恋人にどう言われたとかは聞きたいですよ。というか、知っておきたい? 参考にしたい? みたいな」
「あー……そうか。いやでもやっぱ、出来れば今日で終わりにしたくないと思ってるのに、こんなの言うのどうかと思って……」
「いやそれ、尚更聞いておきたいやつですけど」
「だよね」
そう言いながらもしばし迷って、けれど結局は教えてくれる気になったらしい。
「というかほら、最初の一回ってやっぱそれなりに頑張るもんだから、下手と言われたことはないんだけど、関係が続いて慣れてくと手抜きって言われることはあったよね、っていう……」
「あー……」
なるほど、それはありそう。なんて素直に納得してしまって、微妙な声を出してしまえば、相手も微妙な顔になって苦笑している。
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