大きな快感の波が引いて最初に思ったのは、一緒にイッたりはしなかったんだな、ということだった。お腹の中はまだ時折、こちらの意志と無関係に蠢いては甘い疼きを生んでいるけれど、勝手にキュッキュと締め付けてしまう相手のペニスは全く萎えていない。
相手を気遣う余裕なんてなかったけれど、それでも、ぎゅうと抱き返してくれる腕は感じていたし、相手が息を詰めたのも聞いていた気がする。つまり、耐えたのだろう。
いやでも、棒扱いで勝手に締め上げただけだから、一緒に射精できるほど気持ちよくなれなかった、という可能性のほうが大きいだろうか。ああ、こっちの方がありえそう。
「ゴメン、また、俺だけイッた」
「全然いいよ。つか、持ってかれないようにすんの、大変だった」
前立腺でイクのより奥でイクほうがやっぱり凄いなと言いながら、やっと相手も、こちらを抱きしめる腕を解いて顔を上げた。照れ笑う顔から、隠しきれない興奮がだだ漏れている。
「もしかして、一緒にイけるほど気持ちよくなかった、って訳、じゃない……?」
確かめるように聞けば、なんだそれと笑ったあと、めちゃくちゃ気持ち良かったから、めちゃくちゃ耐えたと返された。
「お前も、イッてよかったのに」
「んー、まぁ、でもほら、お前をメロメロにして、俺に惚れて貰う計画なわけだから。俺が気持ちよくなるのは後回しでいいって言うか、お前が気持ちぃって言ってくれる硬さ維持して置きたいって言うか」
「なんだそれ」
胸の奥がキュンとして、うまく笑えたか自信がない。だってもう気づいている。愛しい愛しいと隠すことなく注がれる甘やかな気配を、喜んでいる。隠すことなく晒す痴態を見ても変わらない彼の想いに、安堵している。
彼の想いはもう自分の中にしっかりと受け止められていて、今更それを手放せそうにはない。だからこの先、好きかと聞かれたら好きだと返すし、惚れてるかと問われたら惚れていると返すだろう。他の誰にも渡す気がない、という意思を込めて。
「ここ出てく前に、お前が俺に惚れてくれないかなっつう、悪あがき?」
やっぱり照れくさそうに笑う顔を見ながら、好きだよと出かかった言葉を飲み込んだ。だってその悪あがきに付き合って、もっともっとメロメロにされてみたいと思ってしまった。好きか惚れてるかと聞かれたら正直に返すけれど、聞かれてないのに自分からさっさと告げてしまうのは少し惜しい。彼はまだ、こちらの変化に気づいていない。
だから、それはきっと既に成功してる。と教えてやる変わりに、彼の腰を挟むように立てている膝をグッと左右に開くよう倒してみた。
「ぅっ……」
急に締め付け方が変わって、結構驚いたらしい相手が小さく呻く。それを無視して、もぞもぞと開いたり閉じたりを数回繰り返せば、相手が少々の焦りと多大な困惑を混ぜて、何をしているのかと聞いてくる。
「えっ、ちょ、なにしてんの?」
「股関節、って、どうやったら開くんだろ?」
「股関節? って、え、それって……」
何を言い出しているんだという顔が、何かに思い当たったようで、ますます困惑と焦りが大きくなったらしい。アナニー道具を見つけられてから先、彼もそれなりに色々と情報は漁ったらしいから、話が早くていい。
「ん、S字の先、抜けないかなって、思って」
「いや、だってお前、そこまだ、何か入れたことってないだろ」
それとも一人で試したのかと言われて、試してないよと返す。何をしようとしているかはわかったようだが、なんで今それを、という所にまでは思考が巡っていないようだ。
「S字抜かれたら、頭バカんなるくらい良いとか聞くから、そんな状態の時に好きかって聞かれたら、好きって答えちゃうんじゃないかなぁと」
やってよとねだりはしなかったし、やっていいんだなと聞かれもしなかったが、言葉はなくとも通じたのはわかった。
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