結局、親友とギクシャクしのは数日だけだった。
ちょっとツラかせよなどと凄みながら呼び出され、しかも向かった先が体育館裏だなんてあまりにもベタな場所だったせいで、ぼんやりと数発くらいなら殴られても仕方ないかと思っていたが、いざ向かい合って告げられたのは「お前の恋を応援することにした」という驚きの言葉だった。
むりやり納得したと言わんばかりの顔だったけれど、それでもひどく嬉しかった。嬉しくて、あの夜にはこぼれなかった涙が、ボロリとこぼれ落ちていく。
「えっ、ちょっ」
慌てた親友に引き寄せられて抱きしめられる。そこそこ身長差があるので、相手の胸に顔を埋めるなんて体勢にはもちろんならず、ぼやけた視界に映るのは肩越しに見える相手の背中と地面だった。
抱きしめるというよりは抱きつかれているような状態で、それでも必死でこちらをなだめるように背中をポンポンと叩く仕草にどこかホッとして、安心したらなんだかおかしくなる。
「もう泣いてねぇ?」
「ううん。まだ泣いてる」
「なんだよ。泣きながら笑ってんのかよ」
「うん」
「ゴメン。その、泣かすつもりはなかった」
「わかってる。嬉しいだけ。親友がお前でよかった」
「おう」
「照れた」
「ばっ、っか。俺だって同じこと思ってるっつーの」
「うん。嬉しい。大好き」
「言うのが遅ぇんだよばーかばーか」
躊躇いなく抱きついてきて、大好きと笑ってくれても、俺も大好きと笑い返したことはなかった。言葉は同じでも、そこに含む想いが違うことは明白だったからだ。
そもそも彼がそんな態度を見せるのは、周りに友人やらクラスメイトやらがいるような場所が多く、パフォーマンス的要素が強かったし、だからこちらも、はいはいわかったわかった。といなすスタンスが多かったように思う。
「だって今まではお前と同じ好きじゃなかったもん」
「あー……ゴメン」
「謝んなよ」
「てか自己嫌悪だから。お前の辛いこと、ぜんぜんわかってなかったなって」
「まぁ必死で隠してたから」
「俺がふざけた調子で好き好き言ってなかったら、お前、最初から俺に告白した?」
「しないよ。関係壊れるの怖かったし」
「だよなー……あっ、」
「えっ、何?」
「ちょっ、待て誤解っ!」
背を抱き込んでいた腕が離れたかと思うと、ゴメンと言い捨て親友が横をすり抜け駆けていく。親友の反応から、追いかけなくても状況はなんとなくわかっていた。というよりも、振り向くのが怖い。彼が追いかけていったのが彼女だとして、彼女だけに見られていたとは考えにくいからだ。
自分たちの仲の良さは周知の事実で、それが数日ギクシャクした後、ツラかせよなどと言いつつ体育館裏だ。好奇心旺盛に覗きに来ていたヤジウマはいったいどれくらいいるんだろう。そして、先程までの自分たちの真実が、どこまで正確に周りに伝わっているのか。
多分、思いっきり誤解されている。どう考えたって、自分たちがとうとう出来上がってしまったように思われただろう。という気がした。
随分と面倒なことになったらしい。そう思いながら、大きなため息を一つ吐き出した。
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