あっさり恋人関係が解消した友人か、長いこと想い続けていた初恋の親友か、それとも全然別の第三者か。
流されるのではなく、ちゃんと自分で自分が幸せになれる相手を選べと言われたのは、過去に二度ほど出来た彼女たちとも、始まりが相手のやや強引なアプローチからだと知られているからなんだろう。
自室のベッドに寝転がり天井を見上げながら、幸せかぁと小さく呟いてみる。
もう随分と古い記憶だけれど、親友に好きになったと告げて、でも親友で居たいから好きって言うけどスルーして、なんて頼みごとを受け入れてもらった時、自分は本当に幸せ者だと思ったはずだった。
さすが親友。こいつだから好きになった。こいつを好きになって良かった。
好きな人に好きだと隠すことなく言える環境も、そんな感情を持っているのに変わらず自分を親友と呼んでくれる友人も、宝物みたいに大切で、この関係を守り通したいと強く望んでいた結果が、今の自分達なんだろうと思う。
高校時代のとてつもなく楽しかった日々が思い出されて、自分の親友への想いは、結局そこから一歩も進んでいないのだと気付かされる。大学で別れて、就職して会う頻度もどんどんと減って、けれど顔を合わせればあの頃の日々を懐かしむように好きだと口に出してしまう。
あえて終わらせることも、かと言って育てることもなく、恋心を停滞させて抱え続けたのは、幸せでたまらなかったあの頃の日々への執着だったりするんだろうか?
関係が変わって、あの頃一緒に笑いあっていた仲間もそれぞれ成長して、なのに自分の気持ちだけはずっとあの頃に置き去りにしている。
それなりに大変で、それなりに楽しく、それなりにやることがあって、それなりに日々が過ぎていく。そうやってそれなりを重ねる毎日が当たり前になって、それなりに満足した気がしつつも、会うたびに好きというのを止められなかった理由なんて一つしかない。
そこには色あせながらも確かに幸せが残っていたからだ。
親友へ電話を掛ければ、すぐに相手とつながった。
「あのさ、俺はやっぱりお前が好きで、お前に好きって言って、お前がそれを嫌な顔せずに笑って、知ってるって言ってくれるのが幸せだった。それさえあれば満足だってずっと思ってた。でももし、俺がお前に好きって言った時、お前が俺も好きって返してくれたら、俺はもっと幸せになるのかもしれない」
一気にまくし立ててしまえば、少しの沈黙の後、携帯の先で相手が吹き出したのがわかる。
『俺も、お前が好きだよ』
優しい響きが耳の中に届いて、電話で伝えてしまったことを後悔した。携帯越しの声じゃなく、相手の声を直接聞きたい。どんな顔で言っているのか見てみたい。
そんな気持ちはあっさり口からこぼれ落ちる。
「会いたい」
『いいよ。俺も、会いたい』
お前の家まで行こうかと言う提案に否を返し、逆に相手の家へ行くと告げた。なんだか随分と気持ちが急いていて、相手が来るのを待つということが出来そうになかったからだ。
「すぐ行くから」
あんま慌てて事故るなよの言葉にわかってると返して通話を切った後、急いで支度して家を飛び出した。
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