カラオケを出て親友と別れた後、本来会う予定だった相手に連絡を入れる。
先程、どういう意味かと問いかけたメッセージは既読のまま無視されているけれど、今から会えないかと追加で送ったメッセージには、すぐさまどこでという返事が来た。
最初の待ち合わせ場所を指定して、自分ももう一度その場所へと戻る。
少し時間がかかると言っていた相手を待ちながら、ぼんやりと頭の中を巡っているのは、先ほどの親友との会話だった。
好きで好きでどうしようもなく、その想いは朽ちることなくずっと抱え続けていたはずなのに、自分が親友の恋愛対象になりうるのだと聞かされても、不思議なほど喜びが薄い。後輩の男を好きになったかもと聞いて、吐きたくなるほど胸が痛む癖に、自分の手が相手に届くと知っても尻込みしてしまう。
多分、自分のキャラじゃないからと気持ちをぶちまけてしまったあの時から、叶えるつもりが一切ない想いだったせいだろう。今は喜びよりもむしろ戸惑いのが大きい。
それでも、答えを出さないわけに行かない。
「あいつがしようって言ったら、お前、あいつとエロいこと出来そう?」
また、あの日トイレで言われた言葉の一部を思い出す。取り敢えずで恋人となった友人は、恋人という関係が欲しかっただけのようだから、エロいことなしでと提案してくれたし、それがあったから受け入れたとも言える。けれどもし親友と恋人になることを受け入れたら、エロいこと無しでなんてわけにも行かないだろう。
だから結局、考えるのは親友とならエロいことをしたいと思うか、行為が出来るかどうかだ。
それとも、親友という名前が恋人という名前に変わるだけというのもありだろうか?
エロ無しでもいいからと言われて友人と恋人関係を持ったりしなければ、考え付きもしなかったけれど、どうなんだろう?
いやでもやっぱりそれはないよなと思う。恋人として相手を束縛するのに、恋人らしい何もないままだなんて、なんのために名前を変えるのかわからな過ぎる。
友人の場合はやはり特殊だ。とにかく恋人という関係に持ち込みたかったのはあの日の態度からも感じていたし、さっきの話から理由もわかってしまった。ちゃんと好きとは言ってたけれど、親友に怒っているからという理由のほうが明らかに強そうだし、だからこそエロ無しでという話が成り立っている。
「ひっどい顔してんなぁ」
お待たせと言って声をかけてきた男は、どこか呆れた様子でそう続けた。
「誰のせいだと思ってやがる」
「え、俺のせいなの?」
「お前のせいだとは言わないけど、まったく無関係じゃないだろ」
「まぁそうかもねぇ」
ごめんね? と吐き出す言葉の軽さに、なんだか腹が立つ。ムッとして睨んだら、再度悪かったってと謝った相手は、ゆっくり話できそうな所に行こうと誘う。
これで再度カラオケだったら嫌だなと思ったけれど、連れて行かれたのは個室のある小奇麗な居酒屋だった。
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