合宿の夜

 夏合宿最終日前日の夜、連日のハードな練習で疲れきった体は重く、初日は慣れずになかなか寝付けなかった布団でも、横になって早々眠りに落ちていた。このまま朝までぐっすりコースのはずだった。なのに無理矢理意識を浮上させられた。
 自業自得の尿意なんかじゃない。背後から誰かに抱き込まれている。その上、尻の穴で何かが蠢いてもいた。口元を大きな手の平で覆われていて、どこか息苦しいのも原因の一つかもしれない。
 だんだんと覚醒してきた頭が状況を飲み込んで、慌てて瞼を押し上げ、同時に体を起こそうとする。
「暴れないで」
 起き上がるのを阻止するように口元に当てられていた手にグッと力がこもって、耳元では優しい声が囁いてくる。こうなるのを見越していたようで、焦った様子は特になかった。
 声はよく知った友人のものだったし、友人と言いつつも時折一緒にエロいことをしあう仲になっているので、とりあえず部の誰かに襲われているわけではないらしい。ホッと体の力を抜いて身を委ねれば、押さえつける力もあっさり抜けていく。
 でも、だからといってこんな場所で寝込みを襲ってきたことを許したわけじゃない。
「そのまま大人しくしててね」
 尻穴に埋まる指が再度動き出して、しかも明らかにその場所を拡げる動きをしている。
 まさかここで突っ込む気か?
 今は合宿中で、周りには自分たちの他にもたくさんの部員が一緒に寝ているのにか?
 冗談じゃないぞと焦って、嫌がるように身をひねろうとしたが、やはりそれもあっさり押さえ込まれてしまう。
 今まで、体格差や力の差をこんな風に示されたことなんてなかった。一緒に抜きあうのがエスカレートした時、相手が抱く側になるのを許したのは、こちらを気遣い尽くし決して無茶なことはしないと信じられたからだし、事実、酷い目にあったと思ったことはないし、気持ちよくして貰っているから続いている。
 こんなのは嫌だ。場所とかももちろん問題だけれど、それよりも、いくら抱かれることにそこそこ慣れているからって、こちらの意思を無視して強引に進められるのが気に入らない。
 周りにバレる覚悟で騒ぎ立ててやろうか。でももしこんなことがバレたらどうなるんだろう?
 二人一緒に部を追い出される可能性やら、友人知人どころか親や先生にまで事情が伝わる可能性やらを考えてしまったら、やはり今だけは耐えて、朝になってから気が済むまでボコるのが正解なのかもしれない。
 嫌だ。嫌だ。悔しい。そう思いながらも奥歯をグッと噛みしめる。
「ゴメンね。本当に、ゴメン」
 泣きそうな囁きに、さすがにおかしすぎると少しばかり冷静になった。合宿中で抜けなくて溜まったから突っ込ませて、的な理由で襲われているわけではないのかもしれない。
 何があったと理由を聞いてやりたいのに、口元は依然覆われていて声は出せない。そして、うーうー唸って喋らせろと訴えるにはリスクが高すぎる。
 取り敢えず一発やれば気が済むんだろうか。
 どっちにしろ耐える気にはなっていたのだから、ボコる前にちゃんと理由を聞いてやろうと思いながら、抵抗したがる気持ちをどうにか抑えて相手に身を委ねることにした。
 こちらのそんな意思は相手にも伝わったんだろう。ありがとうと囁かれた後は黙々と尻穴を拡げられ、繋がり、ひたすら声を殺しながら互いに一度ずつ果てて終わった。
 どこに用意していたのか相手だけではなく自分も途中でゴムを装着されていたので、布団を汚すようなことはなかったはずだが、終えた後も余韻どころじゃなくテキパキと後始末を済ませていた友人が、二人分の使用済みゴムや汚れを拭ったティッシュやらを纏めてそっと部屋を出ていく。
 始めぼんやり見送ってしまったが、慌てて起き上がりその後を追った。こちらが追いかける気配にはすぐに気付いたようで、大部屋を出た廊下の少し先を歩いていた友人が苦笑顔で振り返る。
「ちゃんと見つかりそうにないとこ捨ててくるから、あのまま寝ちゃって良かったのに」
「寝れるわけ無いだろ。というか、何が、あった?」
「それは、ほんと、ゴメン」
 困ったように視線を逸らされて、ムッとしながら両腕を上げた。相手の両頬を思いっきり挟んでやって、無理矢理こちらを向かせて視線を合わせる。
「俺が聞いてるのは理由。理由によっては許してもいいって言ってんだよ。わかるだろ?」
「もし許せないような理由、だったら?」
「取り敢えずボコる。気が済むまで」
 許してやる場合はボコらない、とまでは言わないけど。
「え、それだけ?」
「どういう意味だ」
「絶交だとか、友達辞めるとか、部活ヤメロとか」
 言われてなんだか血の気が引く気がした。つまり絶交するとか友人辞めるとか部活やめろとか言わせたくて、あんな無茶をしたって言うんだろうか。
「それを俺に、言わせたいのか?」
 吐き出す声が緊張で少しかすれた。
「ち、違うっ」
 すぐさま慌てたように否定されて、ホッと安堵の息を吐く。
「じゃ、なんだよ」
「気が済むまでボコっていいけど、聞いても嫌いにならないでくれる?」
 あんな無茶しておいて、嫌いにならないでくれなんてよく言えるな。とは思ったが、嫌いになれるような相手なら理由なんてわざわざ聞かないし、速攻縁切って終わりにするだろうし、つまりはこんなバカな事を聞いてくることに湧き出す怒りのほうが大きい。
「ごちゃごちゃうるせぇ。早く言えよ」
「嫉妬、した」
「は? 嫉妬? 誰に?」
 渋々と言った様子で告げられたのは、一つ上の先輩の名だった。確かに最近アレコレ構ってくれることが多くなった気はしたし、こちらもそれなりに慕ってはいるけれど。
「最近お前可愛がってるのあからさまになってたし、この合宿で一段と距離縮めてきたし、お前も満更じゃなさそうで、なんかもう不安になりすぎて、いっそ先輩にお前は俺のだって、俺のチンコ突っ込まれて気持ちよくなってるとこ見せつけてやりたくなって、無茶、した」
「ツッコミどころ多すぎんだけど」
「わかってるよ。満更じゃなさそうでもお前に先輩と付き合う気がないこととか、お前は俺のものなんかじゃないってこととか、先輩が寝てた位置的に、先輩が気づくほど派手にやったら周り中知れ渡るとか」
「先輩が俺を狙ってるみたいなのだって、お前の勘違いだろ」
「いやそこは譲れない。というか先輩に直接お前貰うって宣言されて焦ったのもある。というか多分それが、あんな無茶した一番の、理由」
「っは、マジかよ」
 マジだよと返ってくる声は確かに、嘘や冗談を言っている感じではない。
「でも俺にそんな気ないのはわかってたんだろ」
「そんなの、先輩が本気で告白してきたら、お前がどうなるかなんてわからないよ。俺とノリで抜き合って、流されるみたいに抱かれるのまでオッケーしたお前なら、先輩とだってノリと勢いで恋人になるかもしれないだろ」
 男同士で恋人とか正直イマイチわからないのだけれど、もし先輩と恋人になったら、こいつと抜きあったりセックスしたりを続けるのは浮気って事になってしまうんだろう。それが嫌なのは、今後も都合よくエロいことをし合える友人で居たいから。なんて思えるほど、鈍いつもりはなかった。
「まぁ先輩ともノリで抜き合えるかっつったら多分平気ではあるな」
「ほらぁ」
「それより、告白されたらその気なくてもノリと勢いで恋人になるかもって思ってんのに、お前が俺の友人続けてる理由ってなに?」
「えっ?」
「嫉妬して無茶してあんな風に俺を無理矢理抱いて所有権を主張するくせに、俺とは友人として気持ちよくエロいことし続けたいってのは、あまりにお前に都合良すぎじゃねぇか?」
「え、えっ、つまり……?」
「下らない嫉妬でアホな無茶するくらいなら、お前が俺の恋人になれよって言ってんだけど」
 男同士で恋人なんてと思う気持ちがないわけじゃないけれど、でもまぁこいつとならそれも有りか、という程度には友情以上の感情も既に湧いているらしい。
 心底安堵した顔で、嬉しそうに、そのくせ泣きそうに、俺の恋人になってと告げる友人を見上げながら、きっとこれで良いんだと思った。

お題箱から <合宿の寝静まった大部屋で布団の中、友人にやられちゃう話>
大遅刻すみません。長くなりすぎました。分けて出そうかと思ったんですが、サクサクお題消化していきたいので全部出しです。

 
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