相手は中のクリームを少しばかりすくい取ると、クリームの乗った指先を強制的に開かれている足の合間へと伸ばしてくる。
「ううっっ」
指先がアナルに触れた瞬間、ぞわわと鳥肌が立って呻いてしまった。しかしそんなこちらの反応に構うことなく、アナルの中へとクリームを運んでいく指の動きに躊躇いはない。
「おっ、前……どーゆー、つもり、だ」
「どーゆーつもりもなにも、ここまでしといて、お前を抱く以外の何かがあると思ってんの?」
「なんでっ、俺がっ、抱かれる側なんだよっっ」
もし今後そういう事までするような深い仲になったとして、抱くのと抱かれるのどっち側が希望かという話を振られた時に、絶対に抱く側と主張しておいたのに、あの確認の問いかけはいったい何だったのか。しかもあの時、わかったって返してきただろう。
そもそも告白したかった相手とでさえ、自分が抱かれる側での妄想なんてしたことがないのに。自分でケツ穴を弄ったこともなく、正真正銘まっさらな処女穴だっつーのに。なんの覚悟もなく、他人の指を突っ込まれて媚薬クリームなんてものを塗りたくられている現実を、そう簡単に受け入れられるはずがない。このままこいつに抱かれるとか冗談じゃない。
「だって抱く側がいいって言いながらも、ずっと手ぇだしてくれなかったから。俺には抱かれたくないってだけで、本当は抱かれる側が良いのかなっていうか、まぁ、考えてみたらそっちのが自然って気もしたし」
「まてっ。待て待て待て」
必死で待てと繰り返したら、話を聞いてくれる気になったのか、中に埋まった指の動きも止めてくれた。正直ホッとして、小さく安堵の息を吐く。
「反論ある?」
「あるに決まってんだろ。何がそっちのが自然な気がする、だ」
「じゃあもしお前と付き合ってるのがさ、」
続いた名前に息を呑む。まさか本命の友人の名前が、その口からこぼれ出るとは思わなかった。
「お前が本当に好きなの、あいつでしょ」
「な、んで……」
「本当は誰を好きかなんて、ずっと好きで見てた相手なんだから、わかるに決まってるだろ。というかお前、あんま隠せてなかったから、あいつ含めて皆知ってたよ」
「は? マジか」
「マジで。でもあいつはお前の気持ちには応えられないってはっきり言ってたし、だったら俺が落としてやれって思って、皆に協力頼んだの。お前はまんまと俺たちに乗せられて、あいつに告白したはずが、なぜか俺に告白したことになってた上に俺の恋人にさせられたわけ」
「ひでぇ」
「でも結構前からお前を好きって思ってたのは本当だから。お前が俺を抱けないなら、俺がお前を抱くわ」
「いやいやいや。今ちゃんと勃ってんじゃん。お前が抱かれる側でいいなら抱くから抱かせろ。つか抱かれるとか無理だから」
「そんなに俺に抱かれるのは嫌なの?」
「相手が誰でも抱かれるのは嫌なの」
そこでもう一度本命友人の名前を出されたが、今度ははっきりと、抱きたい方向で好きだったと言い切ってやった。
「本気で言ってんの?」
「本気ですけど。つかもう今さらだから言うけど、俺が抱きたいのはああいうタイプ」
「マジか」
本気で相当驚かれたみたいだけれど、気持ちはわからない事もない。だってあいつは俺よりガタイも良くて男臭くて、どう考えても押し倒して喘がせたいってより、お願い抱いてーって方がしっくりくる。反面、目の前の相手は決して男臭いタイプではなく、雰囲気だって男にしては随分と柔らかで優しい。体の線だって随分と細く、女のようだとまでは言わないが、こうやってこちらにのしかかっているような現状には思いっきり違和感があるし、むしろ組み敷かれてアンアン喘いでいる姿のほうがイメージしやすいだろう。
ただ、一般的にそうだろうという判断はできるけれど、自分の好みが一般的じゃないので、組み敷き喘がせたいのはこいつではなくあいつってだけだ。
「マジで」
はぁああと大きくため息を吐かれたので、ようやく諦める気にでもなったかと思ったら、埋められていた指がグニグニと中を擦りだすから焦る。
「ちょ、おま、やめろって」
「いやもうどうでもいいわ」
「どうでもよくねーって。ヤダヤダやめろ。俺を抱こうとすんなよ」
ちゃんと抱いてやるからと言ったら、フンッと鼻で笑われてしまった。
「お前が今勃ってんの、結局はクリームと前立腺刺激のおかげだろ。全く好みじゃない俺を、お情けで抱いてくれる必要なんてないね。それよりこのまま、抱かれたくないって言いながらもきゅんきゅんケツ穴締めまくって喜んでるここ可愛がって、俺に抱かれる気持ちよさを叩き込んでやる方が建設的っぽい」
優しく愛してあげるから任せてなどという、全く嬉しくない言葉とともにその後も散々嬲られて体はあっさり陥落した。媚薬クリームとか卑怯すぎだろ。くっそ気持ちよかった。
「あいつを抱きたい方向で好きだったってなら、俺がお前を抱きたいと思っても、なんの不思議もないと思うんだよね」
「ソウデスネ」
「怒ってる?」
「イイエ」
「またしていい……よね?」
する気満々なくせに、こっちの反応を窺うような聞き方はヤメロ。
ぎろりと睨みながらも黙って頷いてやれば、相手は幸せそうに笑ってみせた。
お題箱から<友人に恋してたタチ側のはずの男が違う男によってネコにされるギャグ話>
ギャグとかどう書いていいかさっぱりわかりません。てわけでこれが限界です。
*ポチッと応援よろしくお願いします*
にほんブログ村 BL短編小説/人気ブログランキング/B L ♂ U N I O N/■BL♂GARDEN■
HOME/1話完結作品/コネタ・短編 続き物/CHATNOVEL/ビガぱら短編/シリーズ物一覧/非18禁