追いかけて追いかけて17

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 一緒にシャワーを浴びず一人でシャワーを済ませるということが、イコールで、相手は事前にシャワーを使わない。だなんて事がわかるはずがない。当然入れ替わりで相手もシャワーを浴びに行くのだろうと思っていたから、行かないよと言われたら戸惑うし、戸惑っている間にベッドの上に転がされていたし、こちらの戸惑いに相手はなんだか楽しそうに笑っているし、これは確かに狡くて悪い大人の顔って感じがすると思った。
 もっと狡く悪く立ち回っていいと言ったのは自分だ。深めの呼吸を繰り返しながら恐る恐る驚きと戸惑いで硬直している体の力を抜けば、こちらを押し倒す形で見下ろしている相手はますます楽しそうに笑っている。
「納得できないのにそんな態度見せてると、本当に好きなようにされちゃうよ?」
「していいって言ったの、自分なんで」
「ああ、そういう方向で納得しちゃうのか」
 信頼されてるなぁとしみじみこぼす顔は優しいから、信頼を裏切られる恐怖なんてない。
「してますよ、信頼。でも聞いていいなら、教えてください。なんで俺だけシャワー使わせたのかって」
「そうだね。中洗おうとするのなしで、一緒にシャワー浴びても良かったんだけどね。あんな強烈な誘い文句貰った直後に一緒にシャワーはこっちの理性がちょっと危なかった。から、一人で使ってもらったのは俺のためのインターバル。で、俺がシャワーを使いに行かないのは、そういった時間はもう必要がないから。逆に、君を一人でこの部屋に残すほうが問題」
 余計な思考を回しそうな手持ち無沙汰な時間はあげられないと言われて思わず納得した。
「ああ……」
 なるほど、とまでは口にしなかったけれど、こちらの納得は相手も感じたらしい。ふふっと優しく笑う顔は満足気だ。
「一応、どうしてもシャワー浴びてきてくれって言われたら、従うつもりはあるんだけど。というかあったんだけど、でも、大丈夫そうだよね?」
「はい」
「コンドームは絶対に使うし、触れとか舐めろとかは言わないけど、でももし、シャワー浴びてくれたら嫌悪感が減るかも、みたいな気分になった時は正直に教えて」
 じゃあ、触るよ。という宣言とともに近づく顔に待ったを掛ける。
「あの、多分、汚いとか思わないから、触るくらいは俺もしたい、んですけど……」
 シャワー浴びてくれたら、舐めるのだってチャレンジくらいはしてみたいんだけど。とは思ったけれど、さすがにそこまで言っていいのかは迷ってしまって止めた。シャワー浴びて貰っても、いざ目の前にしたら口を付けるのは無理かもしれないし、そうしたら相手の期待を無駄に上げるだけで終わってしまう。
 なんか、相手が男に抱かれたこともあるって知ってしまったせいか、相手任せで触れてもらうことばかり考えていた欲求に、自分からも触れてみたい欲が混ざり始めているのかもしれない。
 さっき、もし童貞貰ってって言っていたら、抱かれてくれる気が少しでもあったんだろうか。なんてことをチラリと思いながら、照れくささで伏せていた視線を相手へ向けた。思考時間はそう長くなかったと思うけれど、相手の反応のなさに、あっさり不安になったというのもある。
「あ、あの……」
 目が合った相手は、なんとも言えない微妙な顔をしていたから焦る。多分きっと、相当変なことを言ってしまったらしい。
「うん、ごめん。ちょっと待って」
 苦しげにそう言ってから、相手は大きく息を吐く。そのあとは笑顔を作ってくれたけれど、思いっきり苦笑交じりだから、なんだか本当に申し訳ない気分になる。
「あの、あの、変なこと言って、」
「あー違う違う」
 オロオロと謝罪を口にしかけたら、遮るように否定された。
「俺の体に興味があるわけじゃないんだろうって思ってたから、意外だっただけ」
 そんなことないですと、はっきり否定は出来そうにない。だってつい今しがた、似たような事を自分で考えていた。相手に触れてみたいなんて気持ちは、触れとも舐めろとも言わないって言われて初めて自覚した。そんなこと言わずに触らせてって思ってしまった。
「あと、触りたいって言われて、ちょっと理性が揺れただけ」
 煽る気ないのはわかってんだけどねと、やっぱり苦笑交じりに笑う顔が近づいてきて、軽いキスが一つ。
「もちろん、触ってくれたら嬉しいよ」
 こちらから手を伸ばしていいし、どこに触れたっていい。そうやってこちらから触れたがるのは、とても嬉しいことだと相手は言った。

続きました→

 
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