別れた男の弟が気になって仕方がない7

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 簡単に言ってしまえば性癖で、もう少しオブラートに包んだ言い方をするなら、そんな愛し方しか出来ないとも言えるけれど、きっとそういう話が聞きたいわけではないだろう。
「強いて言うなら、俺の恋人で居続けてくれたこと、かな」
「は?」
 わかっていながらはぐらかすように告げれば、意味がわからないと言いたげな声が上がった。
「あいつの何が良くて恋人になったとか、なんで他に好きな男が居るのわかって大事に愛してたかなんてこと、お前は知らないままのがいいよ」
「それは知っても、俺では兄のようにはなれっこないから、ですか?」
「逆だよ逆。さっき、俺にはお前たち兄弟が似てるように感じるって言ったろ。しかもお前自身、あいつの生き方を見習ってみようって、抱いてくれる相手探してこんなことしてるんだろ。あいつみたいになって欲しくないから、教えられない」
「でも俺は……」
 なれるならあの人になりたいと、絞り出すような苦しげな声が続いて、こちらの胸まで苦しくなる。
 好きだった相手が選んだのが兄だからなんだろう。けれどだからこそ、そこを目指したらダメだと思う。似れば似るほど、なのに選ばれないということが、余計に彼を苦しめるはずだ。
「あいつになろうとしなくても、お前は今のお前のままで、十分に魅力的だよ」
「嘘だっ」
「嘘じゃない。お前は自分の魅力にまだ自覚がないだけだ」
「自分で自覚できないような魅力なんて、どうせたいしたことないし、あっても何の足しにもならない。振り向いて欲しい人に振り向いてもらえないなら、そんな魅力、ないのと一緒でしょう?」
「本当にそう思うか?」
「思います」
「もしお前がこれから先、好きになった相手に同じように好きを返して貰えるようになりたいとか、たとえ誰を好きだったとしても何もかも受け入れて愛してくれる人と出会いたいと思うなら、誰かになろうとしたりせず、自分の魅力を見失わないことだよ。お前はお前のままでいい。お前がどんなに魅力的かは、今から俺が教えてやるから」
 どうやってと聞いてくるから小さく笑った。自分の魅力について、多少でも知りたいと思ってくれたなら良かった。ついでに言えば自分たちが今、なんのためにベッドに並んで座っているかが頭からすっぽ抜けているらしい所も、なんとも可愛らしい反応だ。
「ここは寝室で、俺もお前もシャワー浴びて出てきたとこだろうが」
「それは俺を抱きながら教えてくれるって事ですか?」
「そうだ。口であれこれ説明されるより、実際見て感じるほうが早いだろ?」
「魅力って、見たり感じたり出来るようなもの、なんですか?」
 魅力を見せるというよりは、彼を魅力的だと感じている自分を見てもらう、が近いだろうか。
「ちょっと違うが、それも含めて、説明するより直接感じてもらうのがいいと思う。でもお前は初めてだから、始める前にストップワード、決めておこうか」
「ストップワード?」
「本当に止めて欲しい時に言う言葉。その言葉以外の、ヤダ、とか、ヤメテ、とかは無視するよって意味でもあるけど、お前だって思わずイヤって零すたびに、いちいちやっぱり抱くの止めようかなんて聞かれたくないだろ?」
「別に、俺が何を言っても止めずに抱いてくれていいですけど。というか最後まで抱ききってくれる人を紹介してくれって、言ったつもりなんですけど」
「好きでもない相手に抱かれるってことを、お前は舐めすぎ。最後まで抱いて欲しかったらストップワードを口に出さなきゃいいだけなんだから、一応決めておくくらいいいだろ?」
 そう言って取り敢えずのストップワードを設定し、他にもこれだけはしてほしくないNG行為もあれば先に言ってと聞いてみたものの、やはりピンとこないようで、いかにも面倒くさそうな顔をされてしまった。

続きました→

 
 
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