別れた男の弟が気になって仕方がない6

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 彼と彼の兄と幼馴染の男との関係がどういうものかなんてわからない。それでも多分きっと、彼もまた兄と同じように、幼馴染の男に恋慕の情を抱いていたのだろう。もしくは、その想いの対象は兄かもしれないけれど。
 どちらにせよ、兄と幼馴染の二人が恋人となったことで彼の想いの向かう先が断たれ、自棄になっているのではと思っている。
 彼の兄がそうだったからだ。と言っても、兄の方は想い人に恋人が出来て絶望したとかではなく、自分の想いを持て余して自棄になっていたのだけれど。
 あまり似ていない兄弟だと思っていたが、無駄な行動力と自分を大事にしない所はよく似ていると思う。兄のほうが少しだけ臆病で慎重なのか、いきなり抱いてくれる相手を探してうろついたりはしなかったようだけれど、それでも自分と出会う前にはかなり無茶な遊びをしていたし、付き合いを続ける中でそれらを後悔するようにもなっていた。
 その後悔を知っているからこそ、深い部分で似ている兄弟だと思うからこそ、尚更この子には、出来れば不特定の男たちと軽々しく関係を持ってほしくはないと思うのだ、というのはわかっている。だから男を紹介もするし、余計なお世話と言われる覚悟でリスクや知識について語ってしまう。
 それらを保護者気取りと言うなら、否定は出来そうになかった。
「それは俺が、あの人の弟だから、ですか? 別れてもまだ、そんなにも兄が大事ですか? なのにあなた達を別れさせた俺のこと、恨んでないんですか?」
 口調は淡々としていたが、覗いてしまった瞳が困惑と不安を混ぜた様子で揺れていた。
「あいつの弟だから余計な口出しをしてる、という部分がないとは言わない。兄弟だけあって似てるように思えるから、あいつの後悔をお前にはさせたくない気持ちはある。別れてもまだ情はあるかって点に関しても、嫌い合って別れたわけじゃなし、やっぱりないわけじゃないかな。でもあいつに未練があるわけじゃない。若干の誤解はあったものの、今、あいつがあの時のお前の言葉通り幸せにしてるってなら、お前を恨む理由がない」
「似てます、か?」
「見た目だけだとあまり似てない兄弟だって思うけど、行動とか見てるとやっぱ似てるかなと思うよ。自分ではそう思わない?」
「好みは嫌になるくらい似てると思いますけど、性格はあんまり。俺には兄みたいな奔放さもそれが許される可愛げもないですし」
 好みが似ているということは、想う対象は幼馴染の方で当たりな気がする。
「誰でも良いから抱いてくれる人を探してるってだけでも、お前だって十分奔放な部類に入ると思うけどね」
 あと充分に可愛い。なんて言ったら、やはり嫌がられてしまうだろうか。
「それは兄の生き方を、少し見習ってみようかと思っただけです」
 兄の口から弟の話を聞いたことは少ない。でも本命の、親友だという幼馴染の存在はそれ以上に隠していたような相手だから、実際の所、この兄弟がお互いをどこまでわかりあっているかなんて見当もつかない。けれどこの口ぶりからすると、それなりに兄の遍歴を知っているようだ。
 兄の幸せのためにと体を投げ出してしまうくらいだし、兄弟仲は良いのかもしれない。まぁあの日のあれも、失恋確定で自棄になった上での抱かれますだった可能性も、高そうだと思っているのだけれど。
「だとしたら、見習うとこを間違えてると思うぞ。あいつは色んな男と関係持ったこと、後悔してたよ?」
「でも色んな出会いをしたからあなたと出会って、あなたと出会ったから、今、本当に好きだった相手と恋人になれたわけですよね?」
 そう疑問形で聞かれても困る。こちらは詳細などなにも知らないまま、この子の言葉を信じて手を放してしまったのだから。
「あいつが本命と恋人になれたことに、俺が関係してるの?」
「してますよ。多分あなたと付き合うようになってから、あの人随分変わったので。変わったというか、何か色々落ち着いた感じで余裕が出来たというか」
「そうなんだ。あいつに良い影響を与えられてたって、家族である弟の口から言って貰えるのは嬉しいかな」
「でも結果から言えば、それがあなたの恋敵に兄を意識させることになったわけですが」
「まぁそれは仕方ない。というかそれも含めて、俺にとってもそう悪くない結果だよ」
「兄に、自分を好きになって欲しいとは、思わなかったんですか?」
「思ってなかったら恋人になんてなってないよ。でも、一途に抱える想いごと大事にしてやりたかったのも本心だから、さっきも言ったけど、想いが叶って今幸せならそれでいい」
「兄の何が、あなたにそこまで思わせたんですか?」
「気になるの?」
 聞けばあっさり気になりますと肯定が返った。答えを待たれているのもわかる。
 デンタルダムだのを用意して、性感染症予防の知識などというムードのない話をしてしまったのはこちらだが、そこから彼の兄との話になるとも、まさかそれをここまで引っ張ってしまう事になるとも思ってなかった。

続きました→

 
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