竜人がご飯3

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 外見に変化があるのかは知らないが、少なくとも中身はもう、確実に人と呼べない域に達しているのだという自覚はある。食事が摂れない代わりとばかりに、尻穴と腹の中とを切なく動かし、相手の精液を搾り取れと訴える体の欲求はあからさまだ。
 事実、相手の唾液を飲み込むだけで体の活力は目に見えて回復したし、腸内に精と思しき液体を吐き出されても同様かそれ以上の効果があった。だからこの行為は間違いなく自分にとっての食事なのだろう。
 迷うことなく自らをお前の食事だと言い切った男は、腰を振って喘ぎ乱れながらもっともっとと吐精をねだる自分に、淡々と雄を穿ちほぼ一定の間隔で精を分け与える行為を繰り返している。
 飢え切った体に染み渡るエネルギー源に夢中になっていた最初はともかく、ある程度満たされた後は色々と雑多なことに思考が向かう。だんだんと自分の痴態が恥ずかしくてたまらなくなるし、これから先もこうして生かされていくのかと思うと惨めだとも思う。
 人ではなくなったのに、人としての心が残っているのは厄介で面倒だった。
「ふっ……はっ、はぁっ…んんっ、んっ、ぅっ」
 尻穴を拡げて湿った水音を立てながら出入りする熱に、どうしたって感じずには居られず、けれど体を走る快感に任せてアンアンと響かせる嬌声が恥ずかしくなってなるべく声を噛む。腸壁がその熱に絡み締め付けてしまうのは自身でどうにも出来なかったが、尻を振り腰を揺すってより深い快楽を追ってしまうことも恥ずかしくなって、なるべく動かしてしまわないようグッと下腹部に力を込めた。
「泣かないでくれ」
 そう声を掛けられ、泣き出していたことに気づく。
 スライムたちに陵辱され続ける深い絶望の中、とっくに枯れたと思っていた。久しく流れることのなかった涙に驚きながら、ぱしぱしと目を瞬かせる。
「余計なことは考えるな。と言っても多分無駄なのだろうな」
 穿つ行為を中断し、優しい指先が涙を払っていくから、涙は更にあふれてしまった。
 淡々とした行為ではあるが、彼の気遣いや優しさはずっと感じていたから、申し訳ない気持ちもあるし、だからこそ恥ずかしいのだと身を捩りたくなるような焦燥もある。
「思考がめぐり感情が働くのは悪くない傾向だが、まだもう少し、本能に任せて食事を続けて貰えないか」
「こんな形で生き続けるのは、惨めだ」
「そうだな。しかし殺すことはしてやれない」
 わかっていると思いながら頷いてみせた。彼は申し訳無さそうに眉尻を下げる。
「すまない。けれどもう暫く、私を拒まないで欲しい」
「拒んで、ない」
「声を殺して、体を緊張させているのに?」
「それは……恥ずかしい、だけ」
「どんなに乱れても気にはしないし、食事だと割り切ることは出来ないだろうか」
「自分一人盛り上がってるセックスが恥ずかしいのは、これが食事だってわかってるからだ。拒んでるわけじゃないから、気にせずお前の精をこの体に吐き出してくれよ」
「なるほどセックスか。人の性交文化にはあまり詳しくなくて、勉強不足ですまないが、教えて貰えないか」
「な、何を?」
「もちろん、人間がどのようにセックスするかをだが」
 ぎょっとして聞き返したら、さも当然のようにそう返された。
 まさか竜人はセックスをせずに子孫を増やしているのだろうか。モンスター類の繁殖になど興味はないが、今現在こうして相手のペニスが体内に突き刺さっていることを思えば、人と同じような生殖行為が行われていると考えるのが妥当じゃないのか。
「竜人だって、するだろう?」
「しかし私のやり方では不満なのだろう?」
「え、あんた、だれに対してもこんなセックスするのか。これが俺の食事だからじゃなくて?」
「相手の体内に精を送り出すのが性交だろう」
「気持よくないの?」
「ある程度の快楽を受容しなければ、さすがに吐精も難しい」
「ならもっと、一緒に気持ちよくなってくれ。あんたも気持ち良いんだって、俺にもわかるように見せて。そしたら少しは、マシな気がする」
「わかった。努力はしてみよう」
 至極真面目な顔で頷かれて、なんだか面白い男だと思ってしまった。クスリと笑ってしまったら、相手もどこかホッとした様子で笑い返してくるから、いっそ可愛いような気さえする。
「動くぞ」
「うん。あ、ちょっと待って」
「どうした」
「キス、しないか」
「口からも同時に食事がしたい、という話……ではなさそうだな」
 否定より先に気づいてくれて何よりだ。
「人のセックスは腰振りながらキスもするし、相手の体を愛撫して、互いの気持ちを盛り上げるもんだよ」
「気持ち、か」
「その場限りってわかってたって、好きって気持ちはないよりあったほうがいい。少なくとも俺は、そういうセックスが好きだった」
「なるほど。どちらかというと、食事のためだけの性交では味気ない、という話な気がするな」
 確かにそうかもと返したら、わかったとの言葉とともに柔らかに唇が触れ合った。

続きました→

 
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