竜人がご飯2

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 食欲だか性欲だかをそそる強い香りが部屋の空気を揺らしたのは、瞼も上がらないほどに死が近づいた時だった。
 きっと死んだことの確認にでも来たのだろうが、残念ながら少し早かったようだ。
 確実に死んでから戻ればいいのにバカだなと思う気持ちとは裏腹に、なんだかんだ嬉しい気持ちが湧くのは、彼に逃げられた後、孤独に死んでいく寂しさを少なからず感じていたからだろうか。
 こうして戻ってくれたのに、戻ってくれた嬉しさも、今までの感謝も、伝える事が出来ないのが悔やまれる。
 なんとかありがとうを絞り出せないかと、動かすことを試みる唇に柔らかなものが触れた。そしてすぐさま、こじ開けられた口の中に少しザラリとした舌触りの弾力ある塊と、トロリと甘い何かが流れ込んだ。
 先日一瞬だけ触れた彼の腔内の味に近いが、それよりももっとずっと濃厚な旨味がある。嚥下するのも一苦労ではあったが、ゴクリと飲み込んだ瞬間、飢え切った体にその液体が染み渡る気がした。
 次々と流し込まれるそれを無心で啜る。空腹は最大の調味料とは言うが、こんなに美味いものを食べるのは初めてだった。そしてそれは飲み込んだ瞬間からエネルギーに変わって行くようで、じわじわと力が湧いてくる。
 気付けばその旨味の出処である弾力のある塊に舌を絡めて、もっともっとと催促するように舐めまわしていた。
 ザラリとした感触を舌で撫でるとゾクリとした快感が走る。んっんっと鼻を鳴らせば、クスリと笑う気配がして、ようやく自分の身に今何が起きているのかを考えた。
 目の前の気配の主が、世話係の小さな竜人でない事はさすがにもうわかっている。彼が戻ってくれたわけではないのだ。そして甘い液体が相手の唾液だという事も、深いキスによってそれを飲まされていたのだという事にも、すぐに思い至った。
 恐る恐る目を開ければ、それに気付いた相手がゆっくりと顔を離していく。
 信じがたい事だが、そこに居たのは人だった。
 褐色の肌をした、がっちりとした体躯の大柄な若い男で、美青年と呼んで差し支えない整った顔をしている。もちろん初対面の相手だ。
「お前…、なに…?」
 上手く喋れずつっかえながらも問いかける。
「お前の食事だ」
 何者だと聞きたかったのを失敗したからか、シンプルで簡潔な答えが返された。
 彼の唾液を貪り食った挙句に体力を回復しているので、それは間違いではないんだろう。だから引っかかったのは、その答えの中身ではなく彼の発する声だった。初めて会う相手のはずなのに、どこか懐かしさと安堵を感じる。
「どっか…で、…会った?」
 それには肯定も否定も返らなかった。代わりに、再度顔が近づいて唇を塞がれる。
 差し込まれる舌はやはり甘くて、すぐに自ら舌を絡めに行った。今度は相手もただ唾液を与えてくれるだけでなく、絡めた舌を擦るように動かし、更には腔内のアチコチを舐めあげる。
 スライムによって口の中の性感帯も開発済みだが、甘い唾液のせいか気持ち悪さは欠片もなく、ひたすら美味しくて気持ちが良かった。
 身体中の肌が粟立ち、腰が甘く痺れてたまらない。尻穴と腸内はきゅんきゅんと疼いて、早く弄られ、そこにも彼の唾液や精液を注がれたがっていた。
 お前の食事だと豪語するからには、このまま抱いて貰えるのだろうか?
 そんな期待と共にたまらず腰を揺すって誘えば、口を触れ合わせたまま、彼もベッドに乗り上げてくる。そうすると、彼の体躯の大きさが良く分かる。
 自分も決して小柄ではないどころか、どちらかと言えば体は大きい方だ。その自分にでかいと言わしめる彼は、本当に人なのか怪しむレベルの体格だった。
 そう思ったら、気付いてしまった。彼の声は保護されたあの日、最初に声をかけて来た大柄な竜人のものと良く似ている。体の大きさも、多分これくらいだった気がする。
「なぜ?」
 唇が僅かに離れる隙を狙って問いかけた。
「なぜ、とは?」
 こちらの疑問に応える気があるのか、無視はされずに問い返される。
「なんで、人の姿、を?」
「この方が食べて貰いやすいだろうという判断からだ」
 確信があったわけではなかったが、どうやら相手は本当に人ではないのだ。普通の人間とはサイズが違いすぎるので、成功しているとは言い切れないかもしれないが、竜人が人に擬態できるとは知らなかった。
「やっぱり、竜人、なんだな。あの日、俺と会ってる? 俺を、助けに来たヒト?」
「良く気付いたな」
「声が。あと、目も似てるかも。それと体格」
 こんなでっかい人間を見たことがないと言ったら、少し困った様子で、体格まで変えるのはなかなか難しいと返された。魔法はあまり得意じゃないと続いたから、どうやら彼自身の魔法による変化らしい。
「魔法、使える竜人も居るのか」
「お前が知らないだけで、当たり前に大勢いる」
「そうなのか」
「まぁ、高位の魔族ほど、滅多なことでは人に関わらないからな」
「ならなぜ俺を助ける」
「知らなくていい」
「それは、助けたわけではないからか?」
「どういう意味だ」
「助けるというなら一思いに殺して欲しい。死なせて欲しい。それが俺の希望だと言っても、叶えてはくれないんだろう?」
「そうだな。わかっているなら、食事の続きに戻ろうか」
「待って」
 近づく顔を避けつつ告げれば、気分を害したようで眉間にシワが寄り口角が下がる。人の姿だから表情は格段に読みやすい。
「話せる元気が戻って何よりだが、少しお喋りが過ぎるぞ」
「いやだって、食事、どこまでしていいのかなって思って」
「好きなだけ食べていい」
「後ろ、からも?」
「なんだ。我慢ができないから早くしろ、という話か」
 おかしそうに笑われて、流石に恥ずかしくなってきた。羞恥の感情が残っていたことに驚きだ。
「お前を世話していた者に、抱かれたいと言ったのだろう。だからもちろん、そのつもりで来ている」
 体を引き寄せられ、ここへ連れられてきてから与えられた、簡易な作りの寝間着を捲られる。シンプルな貫頭衣で下着はないので、裾を捲られればすぐに尻がむき出しだった。

続きました→

 
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