ぁっ、と小さな声を上げて、それから恥ずかしそうに赤くなった目元を伏せる姿が、なんだか可愛いなと思う。けれど目の前で自分に組み敷かれている男を、可愛いと思ってしまった事実に、動揺してもいた。
さっきは焦っている姿を見て珍しいと思ったけれど、照れて恥ずかしそうにする姿だってやっぱりそれなりに珍しい。常に自分の上を行く彼の、自信に満ち溢れた姿や穏やかな笑顔ばかり見てきたから、余裕のない彼の姿というのが珍しいのだ。
しかもそこには、相手の余裕を奪っているのは自分だ、という優越感が間違いなくあるはずだった。
かつては何一つ敵わないと思わされるような強者で、ライバルで、散々自分を打ちのめしてきた男が、こんな自分を好きだと言って、健気にいじらしく体を拓き、余裕のない姿を晒している。そんな彼への優越感や憐憫が、可愛いなんて単語を頭の中に浮かばせている可能性を、考えずにいられない。
だって、かわいそうだとか、ふびんだとか、小さく弱いものへ心惹かれる気持ちを、可愛いとあらわす。という事を、知識として持ってしまっている。
申し訳ない気持ちを隠すみたいに、再度胸の先に頭を寄せれば、今度はもう、制止の声は上がらなかった。代わりに、若干戸惑いの滲む甘い声が、次々と鼓膜を震わせる。
「ぁ、ぁっ、ぁあ」
やがてその声がとろけだし、じっとしていられないとでも言うように、もぞもぞと下半身が揺れ出した。まるで、早くと急かされているようだ。
身を起こして探るように腰を前後させても、痛がる様子はほとんどない。そのまま、先程散々いじって確かめた中のイイ所に、なるべく触れるようにと考えながら腰を降る。
「あっ、そこっ、あぁっ」
「ん、ここ、な」
「ゃっ、あっ、そこ、はっ」
「きもちぃとこ、当たってる?」
「あ、ぅん、ぁ、でもっ、ぁっ、やっ、やぁっ」
どうやらペニスでもイイ所を刺激することは可能なようだが、加減がどうにも難しい。
「ん、ごめっ、これくらい? どぅ? いい?」
「ん、っぅん、いいっ、それ、きもちぃっ」
どうにか一緒に気持ちよくなろうとしている、こちらの気持ちにより沿ってくれているのだ、というのはわかっている。それでも、どうすれば気持ちがいいのかを教えるように自ら晒して、はしたなく気持ちがいいと喘いで、まるで余裕のない様子で必死に快感を拾い集めている相手が、どうしようもなく可愛らしい。憐れで、健気で、愛おしいと思う。
そのくせ、そんな風に思ってしまう自分に、彼にそんな真似をさせてしまう自分に、腹を立ててもいた。うっかり可愛いとこぼしそうになるのを、必死でこらえても居た。
申し訳なさや憤りが募るほど、せめて相手も気持ちの良い思いをして欲しい、という気持ちがますます強くなって、酷い悪循環だと思った。けれどもう、止まることも戻ることも出来そうにない。
結果、気持ちがいいならとヤダとかヤメての言葉を一部無視してしまったし、少々しつこく前立腺を責めすぎてしまったかもしれないし、強すぎる刺激に耐えきれず、快感に泣き濡れる顔まで見てしまった。
間違いなく二人ともが気持ちよくはなれたが、やりすぎたのは明白だ。果てて冷静になった今、余韻を堪能する余裕などはなく、ざっと血の気が失せていく感覚に襲われていた。
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