従兄弟との関係も、なんら問題なく、そこそこ親しい友人のような関係が続いている。親の目が届かないから、気軽に互いの部屋を行き来するようにもなっていた。
「あ、これ美味い」
「だっろ。超お手軽な割にけっこーイケる」
「賄い目当てのバイトの副産物、凄いな」
「あー確かにな。食事目当てで始めたはずのバイトなのに、まさか自分で料理するようになると思ってなかった」
更に言うなら、それを従兄弟に食べさせて、美味いと言ってもらうのがこんなに楽しいなんて思わなかった。
「そう? お前はいずれ自炊しだすと思ってたけど」
「まぁ、安くたらふく食うなら自炊のが良さそう、ってイメージはあるからな」
「それもあるけど、お前、かなり好奇心強いもん。今までやってみようとすら思わなかったことでも、自分でもやれそうって思ったら、今ならもう躊躇わずに手ぇ出せるだろ」
良かったなと自分のことのように嬉しそうに笑われて、なぜかドキリと心臓が跳ねる。
親に抑圧されて色々と制限されて自分の好奇心も可能性も潰されていた、という意識は確かにある。多分きっと相手もそれをわかっていて、けれど親の話は一切ださずに、ただただ変わっていく自分をこうして肯定してくれるのが、最近はなんだかむず痒くてたまらない。
「変な顔してどうした?」
「んー……あー……なんでも、ない」
この気持ちをどう説明していいのかわからなくて濁してしまえば、えーと不満げに口を尖らせはしたものの、特にそれ以上追求されることはなかった。
そういうところも含めて、彼と過ごす時間はとても心地が良い。だからだろうか。従兄弟とはバイト先もサークルも違うし、それぞれ新たに友人も出来たから、そこまでベッタリというわけでもないはずなのに、なんだかんだで一緒に過ごす時間は多かった。
そんな自分たちの関係が少しばかり変わったのは、二年目の夏休みが明けた辺りだった。
頭が良くて人当たりもいい従兄弟は昔から良くモテていて、だからか女の子の扱いにだって慣れていたはずなのに、珍しく何かをしくじったらしく、従兄弟にふられたという女子を中心に少々陰湿な陰口を叩かれだして、それに巻き込まれる形で関わったせいだ。
簡単に言えば、従兄弟のゲイ疑惑と、その相手として自分の名前が上がっていた。
ずっと学校が一緒だった従兄弟の、過去の交際相手を多分ほぼ全て知っている自分からすれば、何を言っているんだと鼻で笑ってしまいそうな噂と疑惑ではあったけれど、従兄弟が自分に付き合ってこの大学のこの学部学科へ入学したのは事実で、大学入学後に従兄弟が彼女を作ったことはなくて、更に言うなら今現在、従兄弟の部屋に一番頻繁に出入りしているのはどうやら間違いなく自分だった。
二人は既に出来ている、という方向に話が膨らまなかったのは、自分の方に彼女がいたせいだ。つまり、従兄弟の片思いで、自分は彼に狙われている立場らしい。
なんて、バカらしい。とは思ったものの、従兄弟本人に、巻き込んですまないと謝られた上、ほとぼりが冷めるまでは暫く離れていようかと提案されてしまえば、それに逆らって相手の家に押しかけられるはずがない。
噂を気にして距離を取るほうが事実だと認めるみたいじゃないのかとは思ったし、実際従兄弟にもそう言ったけれど、彼氏が男に狙われてるって噂になってる彼女の気持ちを考えてやれよと言われたのと、従兄弟が彼女を作ればゲイ疑惑なんて一瞬で吹っ飛ぶから大丈夫とも言われて、それ以上は何も言えなかった。
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