「忘れてると言うよりは、当時全く自覚してなかっただろうから、もっと早く好きになってればとか言えるんであって、高校時代のお前に、誰かを好きになるような気持ちの余裕なんて全然なかっただろう」
どういう意味かと問うて返された答えに、言われてみればそうだったと思い出す。
「あー……確かに」
「もしあの頃に俺のお前への気持ちが恋愛感情だと知ったって、同じ想いを返そうより先に、それをどう利用すれば高校生相手に抱く気になるかを考えただろうよ」
「まぁ、同じ想いを返されたいって誘導されなきゃ、そうなるよね」
「誘導したらしたで、想いを育てさえすれば抱いて貰える、みたいに考えそうだったけどな」
「ああ、うん、確かにそうかも」
指摘されるたび、その通りだと思ってしまうくらい、本当によく覚えている。というよりも、よくそこまで見ていたな、という気持ちが近いかも知れない。
「そう思うと、なんで今、そんな気持ちになれてんだろ? って逆にちょっと不思議になるな」
高校を卒業したってだけで、余裕が生まれるものなのだろうか。と考えると、そんな簡単な話には到底思えなかった。
「それを成長って呼ぶんだろ」
「そ、っか……」
「まぁ、卒業したら抱くって約束が果たされたから、というか、今までの礼を体で払わないとって気持ちが落ち着いたから、ってのが大きそうだとは思うが」
高校時代はどうやって抱かせようか、卒業したら本当に抱いて貰えるのか、って気持ちが強すぎたし、卒業後は分割払いで今までの礼を体で払うのだと思い込んでも居たわけだから、誰かと恋愛をするなんて気持ちを持ちようがなかったんじゃないかと言われてしまえば、そうなのかも知れない。
「なんか、ほんと、俺のこと、俺以上によく知ってるよね」
「どんだけお前を見てきたと思ってんの」
少し呆れた声音に、やっぱりまた、その通りだなと思う。初めて出会ったあの夏からずっと、彼には成長を見守られてきた。きっととてつもなく大きな愛で。
「うん。ありがとう」
嬉しいと笑ったら、一瞬面食らった様子で驚いていたけれど、すぐに柔らかに笑った顔がゆっくりと近づいてくる。
「なら、良かった」
そんな囁きとともに唇が塞がれて、ちゅっと唇を吸い上げていく。ちゅっちゅと柔らかなキスが繰り返される中、彼に体を預けるつもりで体の力を抜いていけば、支えるように背を抱かれてキスもだんだんと深まっていった。
さっきみたいな一方的な乱雑さのないキスが気持ちいい。ゆっくりと探られる口内から、触れ合う舌先から、ぞわぞわと快感が広がっていく。
再度服の下に差し込まれた手には、やっぱりビクリと体が跳ねてしまったけれど、それは肌に触れた手に引き出された快感からであって、驚きも焦りも混乱もない。そのまま彼に体を預けきって、気持ちいいに集中していいのだと、わかっている。
ただ、気持ちよくなれば当然下半身が反応してしまう。もぞっと腰を動かしてしまえば、こちらの状態は相手にもすぐに伝わった。
「ここまでにするか? それとも、抜いてやろうか?」
そんな二択、選ぶまでもないのに。
「して。抜いて」
「んー、でも、お前、俺を焦らしたいんじゃなかった?」
ニヤッと笑われて、うっ、と言葉に詰まってしまう。意地が悪い。そんな企みは浅はかだったと、とっくに認めている。
「そんなの無理って、も、わかった、ってば」
実際今だって、焦らしたいんだろ? なんて言っている彼よりも、間違いなく自分の方が焦らされている。
「ね、焦らさないで、よ」
甘えるみたいに自分から顔を寄せて唇を触れ合わす。キスの続きをせがむように差し出す舌は、願い通り相手の唇に食まれて吸われ、上半身を撫で回していた手がようやく下半身の膨らみに触れた。
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