してもらったら絶対にキモチイイのは知ってる。その言葉通り、そんな場所を弄られるのが初めてだって、ちゃんと気持ちよくしてくれるんだろう。でもだからこそ、されたくなかった。
彼のそんな技術を、自分の身に刻まれる方法で会得したくなんかない。まぁ、さんざんその方法で男の体を気持ちよくする手技を得てきて、今更という気もしなくもないけど。でもやっぱり、アナルや前立腺はちょっと一線を画した場所だと思う。
される側には全く興味が無いときっぱり言い切って、相手の反応だけを頼りに、相手のアナルとそのナカとを探る。いつからか当たり前のようにアロマオイルやパウダーに混ざって用意されるようになったローションをたっぷり使っているし、指の挿入にその場所はそこまで抵抗がなさそうだった。なのに、指が埋まって以降、相手は酷く微妙そうな顔を晒している。
これもとっくに気づいていたことだけれど、彼はされる側の経験はたぶん殆どしていない。つまり、アナルに指を入れられてその中を探られるのは、もしかしなくても初めてなんだろう。
「下手くそだなって、思ってます?」
「痛くはないよ」
「でも気持ちよくない、と。ね、ちょっとアドバイスくださいよ。どう弄ったらいい?」
「される側興味ないって言ったの、そっちだろ。そういうの知りたかったなら、自分の体も差し出せよ」
「授業料払いますから、ぜひ実技ではなく口頭で」
幾ら出すのと聞かれて、新しい切り口だなと思う。金額を言えば、値段分のアドバイスをくれるって事なんだろうか。値段の相場が検討もつかないけれど。
「え、じゃあ、取り敢えず……五千円?」
言えば、ふっ、と息を漏らすように笑われた気配がする。やはり安すぎただろうか。
「ならダメ出しから。まず一番ダメなとこが、こっちの経験なにも確かめなかったとこな」
「あー……でも、初めて、ですよね」
「ふーん。なるほど。初めてって思ってんの。なら、初めての相手にこの性急さは、かなりマイナス。さっさと突っ込んで欲しいみたいに見えてたなら、観察力ぜんぜん足りてない」
「あ、いえ、すみません……」
言われれば確かに、早くナカに触れてみたいと気が急いていなかったとは言えない。自分の欲求を優先した。というか初めてって思ってるの、という言い方が気になる。初めてなのかそうじゃないのか、わかりにくい。でも彼のアドバイスが続いていて、それを問える余裕はなかった。
「むちゃされたわけじゃないし、痛かったりはしないけど、基本的に焦りすぎ。潤滑剤使ってあまり抵抗なく入るからって、そうあっさり突っ込むもんじゃないよ。後、しょっぱなから深くまで入れすぎ。前立腺ってそんな奥じゃないから」
相手の声に指示されながら、ゆっくりゆるゆると指の腹で前後左右に腸壁をなぞらされる。
「もーちょい手前……んっっ」
「あ、……これ、かな」
指の腹に触れた感触を確かめるように数度なぞれば、んっ、んっ、と少しだけ鼻にかかった息が漏れ出てくる。気持ちよさそう、という感じではないけれど、多分これが前立腺だ。
「五千円、ここまでな」
疲れた様子で大きく息を吐いた後、相手は瞼を下ろしてしまう。お腹の中に意識を集中して、快感を拾おうとしているのかもしれない。強い刺激になってしまわないように、本当にそっと優しくその場所を撫でながら、相手の反応を見逃さないようにと注意深く見守った。
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