雷が怖いので28

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 性感を煽ってこない、ただただ荒々しく貪られるようなキスは初めてで、けれどキュウと締め付けられる胸の痛みはいつもよりずっと甘い。
 間違いなく、嬉しかった。喜んでいた。
 知られたくなかっただろう傷を半ばむりやり暴いて、その結果、彼から随分と余裕を奪ったらしい事を、申し訳なく思う気持ちはある。嫌な過去を思い出させただろうかと心配する気持ちもある。けれど胸の中を圧倒的に占める感情は、多分、愛しさだった。
「すき……」
 キスの合間にほろりと気持ちを零せば、ハッとしたように唇が離れていく。少し残念だったけれど、もっととねだって良さそうな雰囲気ではない。むしろ一瞬、どことなく気まずい沈黙が流れた。
「取り敢えず、風呂に浸かって体を温めるか。このままだと本気でお互い風邪をひく」
 沈黙を振り払うように告げられた言葉に頷いて、促されるまま移動し、たっぷりの温かな湯に身を沈めた。
 浴槽はそこそこ大きく、二人同時に入ってもまったく窮屈さはない。広さがあるから、長辺に沿って向かい合う形で座ると、その距離が突き放されているような気もして少しだけ寂しい。
「そんな顔をするなよ」
 寂しさが顔に出てしまったのか、苦笑された。
「俺も流石に、この状況には戸惑ってる。プレイでもなく肌を晒すのも、誰かと風呂に入るのも、始めてなんだよ」
「風呂場でのプレイとかも、することあるの? もし俺が、風呂場エッチに興奮する性癖持ちだったら、してくれてた?」
「昔、俺がある人の所有物だった時は、しろって言われた事はなんだってやったよ。でもお前との関係は全く別だから。お前にこの体を見せるつもりは一切なかったし、だから風呂場プレイなんてのは最初から欠片も候補に入ってない」
「なら、体を見ちゃった後の、今は?」
「なんだ、されたいのか?」
 にやりと笑ったよく知った顔に、酷くホッとしながら肯定を返す。風呂場でのプレイに興味があると言うよりも、裸の彼に触れてもらえるならなんだっていい、みたいな気分だった。
「じゃあこっちおいで」
 呼ばれていそいそと近づけば、嬉しそうな顔しちゃってと、からかい混じりに指摘されてさすがに恥ずかしい。けれど既に開き直っている部分は、嬉しいのなんて当然だろと憤ってもいた。でも、好きなんだから嬉しいのは当たり前、とは口に出来なかった。言ったらきっとまた、戸惑わせるか困らせるかして、一瞬拭いようもなく気まずくなってしまう。
「さっきあんなにいっぱい気持ちよくイッたのに、自分からもっとしたがるなんて随分といやらしい子に、どんなことをしてあげようか?」
 伸ばされた彼の腿の上に足を開いて乗り上げる形で向かい合い、何をされたいかを問われた。問われたところで、どんなことが出来るのかわからない。
 今まで見てきたアダルトな動画の中、風呂場のシーンってどんなことをしてたっけ? なんて思考を巡らせていたら、ススッと顔が寄せられて、耳元にとろりとしたイヤラシイ声が吹き込まれた。
「ご褒美と、おしおき、お前が今欲しいのは、どっち?」
「んぁあっっ」
 声だけでもたまらないのに、オマケとばかりに耳朶を食まれて、ゾクゾクとした快感に身を震わせる。
「ああ、お前の可愛い声が響くのは、悪くないな」
 そう言って、こちらの返事など待つことなく、そのまま耳を舐られ肌の上を手が這った。
「ぁ、ぁっ、ぁあっ」
「ほら、早く決めないと、俺が勝手に決めちまうぞ?」
 意地悪なのに、でもホッとするし嬉しい。逃げ出しても、傷を暴いても、以前と変わらぬプレイをしてくれるなら、もうそれで良いのかも知れない。
 そう思ったら、逃げて傷を暴いた罰を、受け取らなければという気になった。
「おしおき、が、いい」
「何をした罰か、自分で言えるか?」
「あなたから逃げて、あなたの傷を暴いた」
「そうだな。それにさっき、何でもするから、服を脱いでとお願いした」
「はい」
 こうして一緒に風呂に入ってくれているのだから、もちろんその言葉通り、なんだってするつもりでいた。でもそれを言ったときも眉を寄せていたし、自分の首を絞めると注意もされた。そう言えばこのバイトに誘われた最初、バカ丸出しで何されてもいいと言えるなら、月一回抱かれるだけで八万入手も可能だけれど、それはそんなことを軽々しく言うなと言う警告だとも言っていた。
 軽々しく言ったつもりはないけれど、それでもやはり、これは口にしてはいけない言葉だったのかもしれない。
「何でもする、なんて言葉を自分から差し出す危険を、少しだけその体に刻んでも?」
 それは痕が残るような何かをするという事だろうか。彼が残してくれるものなら、むしろ嬉しい気がするのだけれど、はたしてそれは罰になるのだろうか。
 そう思いながらもハイと言って頷けば、肩に強い痛みが走った。

続きました→

 
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